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【完結】隻狼の魔法侯爵の俺と悪役令嬢なはずの彼女  作者: 夕凪 瓊紗.com
第1章 隻狼の魔法侯爵と悪役令嬢
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リンゴ論


「ほぅ・・・?案外似合うじゃないか」


「あ、ありがとうございます」


アールシュに連れられて、執事服に着替えたアンシュは割と様になっていた。ゲームのスチルでは公爵から与えられた貴族っぽい服を着ていた。まぁ、じゃないと見た目的に売れないからな。あちらのゲームは商売なので仕方がない。


「兄さま、とても似合っています」


「あ・・・ありがとう、ニシャ」

シロナ作のかわいらしい薄いベージュのふんわりワンピに着替えたニシャはとても華やかな微笑みをアンシュに向ける。あぁ・・・あぁいう安堵感のある笑みを浮かべられるようになったニシャに俺もほっとしたいところだが・・・何だか不満・・・


「大人げないわよ、あなた」

ボソッと通りすがりのシロナに的を射られてがくっとHPMPが消費された気がする。うん、精神的に。そしてちびたちの世話のために颯爽と歩いていく。あぁ・・・俺の癒しはふんわり揺れるシロナのわふわふしっぽだけだ。


「それでは、本題だ」

俺は一行の前にあるものを出す。一見ただの水晶玉。勘のいい者は気が付いたと思うが・・・これは割と異世界ファンタジーではテンプレ的なあれだ。


「これで今から・・・アンシュの魔力をはかる!」


「あ・・・は、はい!」

アンシュは緊張しているようだ。ゲームでも魔力は有り余るほどあったし、俺が普段接するだけでもアンシュにはかなりの魔力があることがわかる。長年虐げられてきたものの、アールシュのヒーリング魔法ですっかり元気になったアンシュからは有り余るほどの魔力を感じるのである。


「これは魔力を込めれば各々の魔力の量が測定できる代物だ」

しかしながら、前世でテンプレ的なこの魔力測定器を開発した俺が、ただの魔力測定器などを作るはずがないのであるっ!あぁ、一応発案者と開発者はこの俺ね。これが発明される前は適当に魔法を発現させてどのくらいまで強い魔法を放てるか・・・で目分量で判別していた。


「そして、これは一定の魔力量以上の魔力を注ぐと・・・爆発して砕け散るように設定してある」


「え・・・?」

アンシュの表情がピタッと固まる。


「な・・・何故・・・でしょうか・・・?」

ニシャが恐る恐る聞いてくる。そんなニシャの様子もかわいい。しかも今回は完全に俺に向けられているので120%かわいいな。うん。


「魔力測定器とは・・・そう言うものだからだ」

チート主人公やチート転生者、チート召喚者など・・・チートな魔力を持つ者が現れた時、魔力測定器はそんなチートな魔力に耐えられずに木っ端みじんに粉砕される・・・。それが・・・異世界ファンタジーというものだ!!(※明らかにルドラの偏見が入っています)


「そんな・・・」

「魔力測定も・・・命がけなのですね」

ニシャとアンシュはその事実に驚愕しつつも納得したかのように頷いている。


「・・・ニシャさま、アンシュさま。おふたりは騙されやすいのですね」


『えっ!?』

ふたりは驚いたようにアールシュを見やる。


「アールシュ、人聞きの悪いことを言うな。これぞ、夢。人類の夢と言ってもよかろう」


「いいえ、あなたは大魔王ですから、それはもう大魔王の野望かなんかですよ。きっと」

因みに原作ゲームの魔王はアールシュであり、原作ゲームにかすりもしなかったこのモブ以下の俺は魔王アールシュによって大魔王として崇められている。(※完全に呆れられています)


「魔法侯爵大魔王を筆頭として魔法伯たちがノリノリでその案に乗っかり、魔法師団からラーヒズヤさまを筆頭として爆発しない安全なものを開発してくれと懇願されたのをお忘れですか?」


「ふむ・・・確かにアールシュの言わんとすることもわかる」


「ラーヒズヤさまの言わんとすることも理解して差し上げてください」


「では、仕方がない。これを」

俺は銅鏡のような円盤を取り出した。もちろん、見た目は諸君らも歴史の教科書などで見たことがあるだろう、中央に何か青とか緑の丸いものが埋まっており、その周りに文様が描かれたものである。しかしながら諸君らはご存じだろうか。これは銅鏡なのである。そう、本来の使用目的は・・・“鏡”!俺は前世で歴史の先生から“見た目はこんなんだけど、裏側はちゃんと鏡になってるんだぞ”と言われて衝撃を受けた。俺はてっきり中央のちっちゃな青とか緑色の丸いものが鏡部分だと思っていたからな。

まぁ、そこは割とどうでもいい。この見た目銅鏡のものを裏返せば、しっかりと鏡になっている。しかしそこには何も映らない。この鏡が映すのはあくまでも魔力量だ。


「さて、アンシュ。これに手をかざしてくれ」


「わかりました」


アンシュは鏡に手をかざす。しかしながらよくあるテンプレ的なもののように魔力を込める必要はない。だって、魔力込めるタイプにしたら、許容量越えたら爆発するじゃん?なら俺はそのテンプレ的なものに沿ってついつい爆発させたくなってしまう。うん・・・一種の魔法使いのロマンと言っていい。(※ほんとにごく一部の魔法使いのみの意味不明なロマンであり、大半は魔力測定器爆発反対派である)


だからこそ、これは単に映すだけなのだ。その者のもつ、魔力量を映すだけ・・・そして・・・


ぺかーっと光れば測定終了。因みに測定しない時は鏡面を裏返しておけば光らない。


アンシュが手を引くと鏡面に測定結果が出てきた。赤いリンゴが1、2、3、4、5・・・いや・・・このリンゴが全て・・・金色に輝いた!!


「おめでとう、アンシュ。君の魔力は俺と同じく測定不能だ」


「これは測定不能と言う意味なのですか?」


「いや、魔力無限大と言うことを示しているのだ」


「あの、ルドラさま」

そこでニシャが手を挙げる。


「どうした?ニシャもやってみるか?」


「わ・・・私、魔力がほとんどなくって・・・やってみても意味がないかと・・・」


「いいや、誰しも微量に魔力は持っているはずだ。平民はほぼ魔力がなく、貴族王族に魔力が多い。一般的にはそう知られているが、平民でもごくまれに膨大な魔力を持って産まれる者がいる。つまりはどこかで微量に受け継いできた魔力が何らかの影響で膨れ上がった・・・と考えられる。だからこそ、それが存在するからにはどこかに必ず根源があるものだ。さぁ、手をかざしてみるといい」


「は・・・はい」

ニシャが緊張しつつも鏡面に手をかざす。ニシャの頬が緊張で桃色に染まっている・・・かわいいな。もしもこの鏡面がニシャの姿を映すものであったなら、俺はこの銅鏡を爆破させていたかもしれない。うん、魔力だけ映すものにしといてよかった。いや・・・しかし・・・ニシャの微量な魔力もニシャの一部・・・と言うことはこの鏡は一部とはいえニシャを映している・・・っっ!!


ぺかーっ!


銅鏡が輝き、そこに赤いリンゴが半分表示される。


「わぁ・・・!リンゴが半分でました!ルドラさま!」

花のような笑顔を俺に向けてくるニシャ・・・。ふん・・・銅鏡よ・・・。命拾いしたな。このニシャの笑顔に免じて爆破機能を付けることはやめて置いてやろう。


「でも、きっと微量なのですよね」

少し悲し気なニシャの笑み。


「まぁ、そうだな・・・リンゴ1個分あれば、少々地味な魔法が仕える程度。リンゴ2分の1は平民が持つ微量な魔力となる」


「やはり・・・ですか・・・」


「だが、問題はない」

さりげなくニシャの頬に手を当てる。うん、徹底したスキンケアをシロナにお願いしているおかげか、頬はすべすべでもちもち。触り心地が最高だ。しかし何故だろう・・・アンシュの視線をすごく感じる。いいじゃんっ!俺、婚約者なんだから!!


「これを」

さりげなくニシャの左手をすくい上げ、その薬指に金色の土台に深い青の魔石が取り付けられた指輪をはめる。因みにこの世界・・・少なくとも国には左手の薬指の指輪に特に意味などない。つまりは俺だけが知っている・・・ニシャは既に俺のものであるということを・・・!しかし勘のよさそうなアンシュにはちょっとばかり怪訝な目を向けられてしまった。くぅ・・・っ!ラーヒズヤの養子になったからと言って、そこまで似なくていいじゃんっ!


「これはお守りだ」


「お守り・・・ですか?」


「中に俺の魔力が籠っている。これがあれば大抵の魔法からは守ってくれるはずだ」


「こんな・・・すごいものをもらってもいいのですか?」


「ニシャは俺の婚約者だ。ならば守るのは当然のこと。それにこれはペアリングでな」


「ペアリング・・・?」


「あぁ・・・ニシャに何かあればその微量な魔力を探知して俺のリングに届くようになっている」


「わ・・・私の微量な魔力でも・・・大丈夫なのですね」


「あぁ。込めたのは俺の魔力だが、本当に必要なのは魔力の・・・何だろうな?紋・・・のようなものだ」

つまりは指紋とかDNAなどそう言った類のものなのだが、異世界にそんな便利な鑑定方法があるわけがなく。だから代わりに個々の持つ魔力の判別方法を作ったわけだ。今ではいろんなところでいろんな応用がされているらしいが、そこら辺は魔法師団や興味のある魔法伯にぶん投げたので俺は知らん。とりま今必要なのは、いかにしてニシャとのペアものを増やして俺の独占欲を満たすか・・・じゃなかった。ニシャの身を守るかと言うことだ。


「すごいのですね。さすがはルドラさまです」


「ふふ、これくらいは問題ない」


「でも・・・」


「どうした・・・?」


「どうして・・・リンゴなのですか?」


「・・・古今東西、魔力のような抽象的なものを測るのに一番適しているのは・・・リンゴだからだ」


「いえ、んなわけないでしょう」

と、アールシュ。


えぇ・・・?でも魔力だよ・・・?魔力を数値とか数字にするのってすごい難しいじゃん。属性とか魔力の質とかいろいろあるし・・・。それをいっぺんに解決するのが・・・リンゴなのに!!


「全く・・・ではこれからアップルパイを焼くから。リンゴのすごさを身に染みて味わうのだぞ」


「アップルパイ・・・楽しみです!」

あぁ・・・そのニシャの笑顔がリンゴのすごさのすべてを如実に表していると言えよう!


リンゴ「いや、リンゴにそんな過剰な期待をされても困ります」

※本話のリンゴ論には、ルドラの個人的妄想が入っておりますのでご了承くださいまし。

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