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【完結】隻狼の魔法侯爵の俺と悪役令嬢なはずの彼女  作者: 夕凪 瓊紗.com
第1章 隻狼の魔法侯爵と悪役令嬢
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ルドラ・シュヴァルツ魔法侯爵


・・・何故だ・・・


おかしい・・・


俺は今までこの世界はよくある転生物だと思っていた。


物心つく頃にはたまたま前世の記憶があり、前世で日本と言う国で暮らした記憶があった。しかし赤ん坊の頃からその記憶があったかどうかまでは定かではない。だって物心ついてなかったし。さすがにそこまでのチートではなかった。因みにチートかと言えばチートだがそれは俺が生まれた家系ゆえの遺伝であり、転生したからチートを持ったというのとはちょっと違う気がする。


俺の家系は代々魔法使いを務めるシュヴァルツ侯爵家。苗字はなんちゃってドイツ語系だが、名前はルドラ。何となく・・・地球の言語の括りは関係ない気がしてきた。もしかしたら、異世界でもサトウさんやタカハシさんに会えるかもしれない。まぁ、冗談はさておき・・・両親は既に他界し、兄弟もいないため俺は現在侯爵の地位にある。その時点でチートと言われるかもしれないが、幼い頃に両親を亡くして媚びへつらう親戚どもに言い寄られる生活がチートと言われたらさすがにイラっとくる。前世の記憶があっても子どもは子ども。俺は子どもながらにそれが悲しくて寂しかった。


ただ、そんな媚びへつらう親戚どもも俺にひと目お目にかかると恐怖した。それは当然である。俺の顔の左側はたいそう彼らにとっては恐ろしいものだったから。こういうのは前世の記憶がなければ一生トラウマとなっていたに違いない。しかしながら、前世の記憶があったことで俺はこれを利用しようと思った。この醜悪な顔の左側を使って奇妙だと脅える親戚どもを追っ払い、これ見よがしに縁談を薦めてくる貴族や言い寄ってくる令嬢たちを蹴散らしてきた。


更に両親から受け継いだ魔力はすさまじいもので、思ったことをすぐさま魔法にできた俺は難攻不落の侯爵邸マイホームに仕立て上げた。


そんな俺の侯爵邸マイホームには、現在使い魔たちやたまたま拾った執事のみがいる。長年我が家に仕えた執事や使用人たちには領地の屋敷を任せている。領地と言ってもそれほど広くはなく・・・と言うか屋敷と森のワンセットしかない。いや、本当に意味不明。税も何もない。俺が気晴らしに帰宅した時に昔ながらの使用人たちが迎えてくれる。ただそれだけ。別荘のような感覚でしかない。


さて、そんな俺の元にまた飽きもせず縁談が持ち込まれたのだが・・・


その名前と釣書を見て、俺は絶句した。


―ニシャ・カシス―


カシスって・・・なんちゃってフランス語っぽい!?英語でもカシスだった気がするけど。フランスワインにそんなのがなかったっけ。・・・いや、そこじゃない。

この名前・・・そしてこの釣書・・・間違いない。前世でやってた乙女ゲーム略してオトゲーに出てきたぁ―――。ひとことで言えば彼女は悪役令嬢。安定の公爵令嬢。特徴的なのはそのヒロインである。ヒロインはこの悪役令嬢の実の妹なのである。つまりヒロインが男爵令嬢でも子爵令嬢でもなく平民でもなく、最初から公爵令嬢!メイン攻略対象のひとり・第1王子とめっちゃ身分の釣り合いがとれているのである。


しかしながら、重要な点もここではない。


彼女は・・・彼女は本来・・・第1王子の婚約者になるはずである。その彼女が・・・何故・・・?そして同時に執事のアールシュが持ってきた調書を見て絶句する。何と、彼女は本来第1王子の婚約者となるはずが、偶然両親と共に来ていたニシャの妹・ダーシャに一目惚れし、土壇場で婚約者がダーシャになったのだと言う。しかしながら、姉の前に妹の婚約が決まるのは体裁が悪いと言うことで、急遽姉の婚約相手を探すことになったのだそうだ。

しかしながら、その相手はなかなか見つからない。彼女が公爵令嬢だったのもあるが、彼女は妹に比べて明らかに見劣りしていた。そのため、むしろ彼女が王子の婚約者となり見目麗しい妹の方と婚約したい・・・と目論む家の方が多かったからである。目論見が外れた他家はさすがに王子相手では横恋慕もできないし、王子に振られた彼女を欲しいとは言わなかった。


それで他の公爵家、辺境伯家、家格は下だが侯爵家、伯爵家洗いざらい。巡りに巡って魔法侯爵の俺の元にまで来た・・・と言うわけだ。


一瞬オトゲーに似通った世界に転生したかと思えば、この時点でシナリオとずれている。あくまでも似ているだけなのだ。更にそのオトゲーには俺はモブとしてすら登場していない。第1シリーズと第2シリーズ、ファンディスクまでコンプリした俺が言うのだから間違いない。因みに続編はこれ以上は出なかった。第2シリーズで完結となったのだ。


だが、今俺の手元に彼女の縁談が来ている時点でシナリオなんてものは所詮はシナリオだ。俺はモブですらないので俺がとる行動を予測できるわけもなく・・・。

いつものように顔の左側を覆う仮面を外し、彼女に対面した。きっと彼女も泣いて嫌がるだろう・・・そう思って。


それが俺、ルドラ・シュヴァルツ、12歳のことであった。


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