知らない世界の召喚者
「おい坊や本当に行くのか?」
「金なら払った筈です
レフィリオまでお願いします」
馬車を操る御者は不思議そうな顔をしていた。
何故これ程の大金を使ってまであの辺境の国レフィリオを目指すのだろうか?
「坊や……召喚者だろ?
だったら俺は召喚帝国アルガムに行くことをオススメするぜ?
なんたってあそこが一番安全だからよ」
「知っていますよ」
何故なら自分の故郷だから。
召喚帝国アルガムが誇る十二聖家ルーファス家に生まれた四男で異世界から来た母親譲りの黒髪と黒い眼をした末子。
つい最近ある事件を起こして家を追い出され、それだけでなく国からも追放されたアルガム出身の召喚者。
それが僕、アルク・ルーファスだ。
しかし追放された原因は自分にある。
だから今もこうして馬車に揺られながらアルガムからとんでもなく離れた辺境の国レフィリオへ向かっている訳なのだが……。
「何を言っても意思は変わらないってか?
ほら見えてきたぜ?……あれが辺境の最弱国レフィリオだ」
遠くに見える彼の国は緑に覆われた大辺境レフィリオ。
そんなレフィリオについて書かれた本の記録にはこんなことが書かれてあった。
他所の国で召喚士として使えない子供が集められた辺境の国。
それが最弱国レフィリオ。
ずっと兄弟と比較され貶められ続けた僕に相応しい国だ。
恐らくここならば自分のことを知っている人間は居ないだろう。
何故なら強い召喚士が何人もいる安全なアルガムから常に危険な最弱国レフィリオに来る人間など絶対に居ないのだ。
馬車に揺られながらニヶ月。
長かった旅は終わり、ようやくレフィリオに着いた。
ここから新しい人生が始まるのだ。
この辺境の国で今度は好きに生きてみたい。
そんな思いを馳せながらアルクはレフィリオの街へ降り立った。
見ていただきありがたき幸せ!!