プロローグ4
『本当になんでもしていただけますか』
再度、女性の声が聞こえる。
誰何もせずに答える。
「まぁね。俺の肉体、そろそろやばいし」
お、ゲームのテクスチャが崩れて真っ白な空間になった。
メンテナンスのための強制ログアウトかな?
でも目が覚めるわけでもなく、白い空間にいるということは。テンプレ的にもあれだ。
「ああ、死んだか」
『はい。貴方は先ほど亡くなりました』
そっかー。やっぱりなぁ。ま、こちとら天涯孤独の身の上。財産は土地を含めて全て処分済み。
俺の骨は両親と同じ墓へ埋葬し、残りの金で墓の管理をするように遺言書も作成済みだ。
ちなみに大学にはいってから始めたバイトで貯めた金で、そっちのお店にも行ったことがあるので、DTではない。
ヤラハタとは違うのだよ、ヤラハタとは。彼女はいなかったけどさ。
『で、いかがでしょう?貴方の欲しいものを差し上げたら、私の願いを聞いていただけますか?』
「……なんか悪魔契約みたいだな。ファウスト博士になった気分だ」
『トンデモネェ。アタシャカミサマダヨ』
と、しわがれた声で言った。どこの志○だっ。ネタが古いわっ。
さて、新しい肉体が手に入るなら、自称神様の願いを聞くのは別にかまなわいんだが、無理難題を言われても困る。
「貴女の名前と願いってのを聞いてもいいでしょうか?」
自称とはいえ神様だ。丁寧な口調で聞いてみる
『私の事は時空神と呼んでください。固有名はまだありません。それと口調はそのままで結構ですよ。むしろそのままがいいです』
いいのか?楽でいいけど。
『さて、私の願いの話でしたね。私の願いは【私たちの世界で生きて欲しい】です。所謂異世界転生ですね』
………はい?
「そっちのメリットは?」
『活力です』
活力?なにそれ。魔力とかじゃないの?
『地球世界では氣やプラーナとか呼ばれていますね。元気の源のようなものと考えて頂ければ…』
ということは、これから行く世界は人々の元気がないのだろうか。世紀末覇者的な村を考えてしまった。
『人々の生活は荒廃したりしていませんよ。ちょっと人の命が地球よりは安いとは思いますけど……』
人々に活力が必要ないのなら、活力が必要なのはもしかして…?
『ご想像通り、活力が必要なのは【世界】です』
世界の活力が枯渇して滅びそうとか?
『いえ……この世界を創った創世神様ですが、世界を創造したあと、私達に管理を任せると、力を回復させるためにお眠りになりまして。
そろそろお目覚めになられてもよいのですが、お眠りになっていた期間が長かったせいか、世界の気脈に氣の巡りが一部淀んでいるところがあるようでして』
そこに活力を注入して、淀みを無くす。文字通り世界に【活】を入れると。でもそれって…
「マッサージだよね」
もしくはツボ押しとか、針治療かお灸でもいい。
『そうとも言えます』
もうそうとしか言えなかった。
「ところで活力はどこから持ってくるので?」
俺自身の活力なんてたかが知れてるだろうし、向こうの活力を使えるなら、俺に話が来ることもないだろう。
『この件に関しては地球の神にも協力をお願いしております』
そうなの?
『その通りです』
わぁ、増えた。