プロローグ3
それから俺はこのゲームにのめり込んだ。
最初はMOBと戦うのも怖かった。
でも、ゲーム的な処理なのか、衝撃はあるが過度の痛みはなく、HPが減るだけだ。
何度もやられて、体で覚えていった。
武器も剣だけでなく、槍、大剣、刀、弓そして無手。ありとあらゆる武器を使っていた。
魔法も全部覚えたし、調薬などの生産系にも手を出した。
土地を買って農業にも手を出したっけ。
最高LvであるLv10になったスキルは多くなかったが、習得したスキルはすべてLv5以上にすることができた。
スキルコレクターなんて称号もあったっけ。
アルファテスト、クローズドベータテスト、オープンベータテストと3年以上テストプレイヤーとしてプレイしてきた。
明日は公式サービスの開始日で、あと10分ほとでメンテナンスが実施される。
だが、俺は明日からログインすることはないだろう。
寿命なのだ。自分の身体だからよくわかる。メンテ明けまで持たないだろう。
だからギリギリまでログインしていることにしたんだ。
俺は小高い丘から最初の町とその周辺の草原を見ていた。
何をする訳でもなく、ただ座って見ていた。
俺に、まともな身体があったら、もっとこの世界を堪能できていたのだろうか?
だが、病に侵されていたからこそ、テストプレイヤーとしていち早くこのゲームに参加できたことは確かだ。
まともな体だったら・・・テストプレイヤーとしてではなく、一プレイヤーとして、明日から公式サービスを受けられたのにな。
そしたら、俺は何年このゲームをプレイ出来ただろう。サービス終了まで楽しめただろうか。
だが、まともな体が合ったとして。
就職して仕事しながらゲームをする?
病院内で1日12h以上プレイしていた俺が、そんな短い時間で満足できるのか?
いや、無理だわw
病気だから、テストプレイヤーに選ばれた。
病院のサポートがあったから、廃人レベルのログインができた。
病気だから、身体を動かせることが、嬉しかったんだ。
だから、俺は、難病であったことに、感謝をしよう。
このマギアスフィアオンラインというゲームに、テストプレイヤーとして参加できたことに感謝をしよう。
だが、それでも。
ちくしょう。
俺にはできない事が多すぎた。
ちくしょう。
リアルでやってみたいことが沢山あった。
ちくしょう。
「俺に身体を寄越せ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
思わず叫んでいた。
「そしたら何だってやってやるのに………」
『本当ですか?』
知らない女性の声がした。