第1章 第7話 ランクフリー
そんなこんなで、
カイトとベリアスが『下水道清掃』
マイラが『迷子ペット捜索』
ラミルが『集客の手伝い』
という日々が数日続いた。
そして数日後の朝、
ラミル:「そこそこ、お金はたまったんじゃない」
ベリアス:「そんなに大金ではありませんが…」
カイト:「この町での生活もなれてきたし、ここは景気づけに…」
ラミルもマイラも目を輝かせた。
カイト:「ひと角兎の店、行こうよ!」
ベリアス:「ああ、カクトですか、ひと角兎料理、美味しかったですね」
ベリアス:「そうですね、まっそのくらいのお金なら」
カイト:「よーし、今夜は宴会だー」
ラミルもマイラも喜びを隠せなかった。
各自、足取りも軽く各現場へ向かった。
当日の夕方。
依頼が完了し、ギルドにやって来たカイトとベリアス。
見覚えのある3人組とすれ違った。
エリック:「今日もお掃除、ご苦労さん」
3人は笑いながら去っていった。
マイラが依頼完了の報告中であった。
マイラ:「何ですの、あの3人組!」
マイラもあの3人組と何かあったようだ。
ベリアスはあえてそのことは聞かず、
ベリアス:「マイラ、今日は早いですね」
マイラ:「そうなの」
マイラ:「この後のパーティに向けて、準備が必要なの」
マイラ:「身だしなみは重要ですのよ」
カイト:「パーティというより単なる飲み会だけど…」
マイラ:「今日の報酬は預かってほしいの」
マイラ:「明日の朝、取りに来るの」
カイト:「ケーラさん、ギルドではお金を預かったりするんですね?」
カーラ:「まぁ〜、一晩くらいは、長期間でのお預かりはしてませんけど」
カイト:「むふふ、できた!」
ベリアス:「何ができたんですか?」
カイト:「ないしょ、ないしょ」
カイト:「こっちも、完了報告して、お金預かってもらおうよ」
ベリアス:「そうですね」
ベリアスも依頼完了の報告を済ませ、お金をケーラに預ける。
3人はひと角兎料理店「カクト」に向かった。
店の前まで来て、
カイト:「う〜ん、いい匂い!」
カイト:「ビエールあるかな?」
ベリアス:「無いと思いますよ」
ベリアス:「エールならありますよ」
マイラ:「焼いてジューシーなお肉、それとエール♪♪」
マイラ:「たまりませんの」
カイト:「ほんと!早く店に入ろう!」
3人はカクトに入店した
店員:「いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ」
まだ、時間が早いためお店はすいていた。
3人は窓際の4人席を選んで座った。
カイトはテーブルの上にあるメニューを見て、
カイト:(そういえば…)
カイト:(この世界の文字は日本語に見えるし、話している言葉も日本語だよなぁ〜)
カイト:「ここは日本と何か関係があるのかなぁ?」
ベリアス:「日本?それはなんですか?」
カイト:(関係ないのか、異世界あるあるか(笑))
カイト:「それより、飲み物から選ぼうよ!」
その時、ラミルが店に入って来てカイトたちを見つける。
ラミル:「あら!皆さん早いのね」
ベリアス:「いえ、我々も来たばかりですよ」
ベリアス:「注文もこれからです」
カイト:「ラミルは何飲む?」
ラミル:「皆さんと同じもので!」
カイト:「すいません、エール4つ!」
店員:「はーい」
カイト:「それと…」
カイト達は食べ物を注文した。
ベリアス:「ラミル、今日は早いですね!?」
ラミル:「そうなの!も〜う、あの顔役連中と来たら…」
カイト:「何かあった?」
ラミル:「聞いて!」
ラミル:「スキがあれば、自分の店の呼び込みさせようと近づいてくるの」
ラミル:「どの店の呼び込みするかは、日毎に交代制なのに」
ラミル:「それで、今朝からモメちゃって…」
ラミル:「だから、今日はビラ配りだけで帰って来ちゃった」
ラミル:「ギルドにも伝えたの、ケーラさんは依頼主達にクレームするって言ってたわ」
エールが4杯運ばれてきて、各自の前におかれた。
カイト:「まぁ、気を取り直して」
各自、目の前にあるエールを持ち、
4人とも:「カンパーイ!」
料理も運ばれてきて、各自思い思いに語り合う。
カイト:(やっぱ、たのしいなぁ〜)
カイト:(元の世界の飲み会といえば…)
[回想シーン(始)]
商社の上司:「だから、お前はなってない!」
商社の上司:「ダイタイお前はなぁ…」
カイト:(とか)
商社の上司:「俺はなぁ、こんだけのことをやったから、今こうなんだ」
商社の上司:「お前にももうちょっと根性があれば…」
カイト:(とか)
カイト:(説教が自慢)
カイト:(もうウンザリしていたんだ)
[回想シーン(終)]
窓の方から変な気配を感じるカイト。
カイト:「わぁ〜!」
カイト:「ゴメスさん!?」
ゴメスが窓のガラスに顔をひっつけてこっちを見ている。
カイト:「何やってるんですか?」
オースティンが慌てて店に入ってくる。
オースティン:「皆さん、すいません」
オースティン:「ゴメス、何をやっているんですか」
ゴメスが大笑いしながら店に入ってくる。
その後ろからアリアとキキも笑いながら店に入ってくる。
ゴメス:「いやー、スマン、スマン」
ゴメス:「カイトが全然気が付かないので、つい!」
カイト:「・・・」
ゴメス:「隣のテーブル、いいか?」
ベリアス:「ええ、もちろんです」
ゴメス:「こっちにも、エール4つ!」
店員:「はーい」
オースティン:「皆さんとご一緒するのは、あの時以来ですね」
オースティン:「あの時は楽しかった♪」
アリア:「へ〜、オースティンがそんな事言うの、珍しいね〜」
キキ:「オースティンだって人間ですもの」
オースティン:「僕はどんな扱いなんですか?」
皆が笑う。
ゴメスたちのエールも来た。
8人とも:「カンパーイ!」
そして、8人での宴会となり、様々な話で盛り上がった。
オースティンが何かに気がついた。
オースティン:「忘れるところでした!」
オースティン:「お伝えする事があって、皆さんを探していたんですよ」
ベリアス:「我々を探す?」
オースティン:「バルナックに初めて来た皆さんはご存じないのではと思って」
カイトたち4人:「???」
オースティン:「この時期、この周辺では」
カイトたち4人:「うんうん」
オースティン:「ひと角兎が大量に発生します。」
オースティン:「ひと角兎はおとなしいのですが、農作物を食い荒らします」
オースティン:「ですから、ひと角兎の駆除が町とギルド共同の依頼として発行されます」
オースティン:「そしてなんとこの依頼、ランクフリーです」
カイト達4人:「なに〜!」
オースティン:「生死不問で捕まえたひと角兎の数で報酬が決まります」
カイト:「よし、明日は今までの依頼は休んで、ひと角兎の駆除を4人でうけよ〜!」
ベリアス:「ええ、そうしましょう」
マイラ:「そうするのね」
ラミル:「はぁ〜い」
オースティン:「ただ1つ、お気をつけください」
オースティン:「たまにふた角兎が混ざっている場合があります」
オースティン:「こいつは凶暴な魔獣です。」
オースティン:「角が2つある兎を見たら、すぐ逃げてください。」
カイト:「凶暴な魔獣…」
ベリアス:「カイト、変なことを考えないでください」
ベリアス:「ふた角兎がいたら、すぐ逃げますよ」
カイト:「明日はゴメスさんたちも?」
ゴメス:「いや、今の依頼がまだ片付いていないので」
カイト:「そうですか…」
ゴメス:「お前達、頑張れよ!」
この後も宴会は続き、夜更けにそれぞれの宿に戻った。
翌朝、カイトたちはギルドに向かった。
ギルドの受付は混雑していた。
カイト:「遅かった?」
ラミル:「獲物は誰にも渡さないわ」
マイラ:「わたくしたちのものですのよ」
二人は目を輝かせた、アイコンタクトした。
ベリアス:「大丈夫みたいですね」
ベリアス:「我々は第1陣に入れたみたいです」
ベリアス:「各陣、時間をずらして一斉に町の外に出るみたいです」
そこへあの3人組が現れた。
エリック:「清掃員のお二人も参加ですか?」
エリック:「あれ、そのお嬢ちゃん、あなたのパーティですか?」
マイラはエリックを睨む。
エリック:「そちらの素敵なお姉さん、あなたもですか?」
エリックはラミルに近づき、
エリック:「あなたにはそんなパーティ似合わない、あなたならいつでも歓迎ですよ」
言い返そうとするラミルをベリアスが制する。
ベリアス:「今は、ひと角兎退治に集中しましょう」
他の3人は納得がいかない様子だが、ベリアスに従った。
カイトたちは受付を済ませて、町の東門の前に来た。
係員:「はい、ここに並んでください」
カイト:「あれ、結構後ろだ」
ラミル:「ん〜!悔しい」
マイラ:「ベリアス、何か作戦ないのかしら」
ベリアス:「仕方がありませんね、門が開いて、状況を見てから考えます」
門が開き、冒険者達は一斉に駆け出した。
冒険者達:「おぉーーーーー!」
人混みにな慣れていないカイト達は、出遅れた。
カイト:「俺たちも行くぞ!」
3人:「はい!」
カイト達はかけ出し、門をでた。
そのまま町の外を他の冒険者達と同じ方向へかけて行った。
冒険者A:「なんだ、こいつら?」
冒険者B:「ぎゃー、助けて!」
冒険者C:「つっ角が!」
冒険者達が逃げてくる。
カイト:「どうした?」
冒険者D:「ふた角ーーー」
カイト:「行ってみるぞ!」
3人:「はい」
カイト達は更に先に進んだ。
とその時、目に入ってきた光景は、
カイト:「何だこれ」
ラミル:「人間が兎に襲われている?」
マイラ:「見るですの、頭」
カイト:「角が2本!」
ベリアス:「オースティンさんが言っていた凶暴な魔獣!」
カイト:「彼らを助けるぞ!」
3人:「はい」
ベリアスは弓を構え、矢を連射する。
マイラ:「んーーーはっ!」
マイラは水魔法、水を刃にして飛ばす。
ラミル:「はーい!」
ラミルは風魔法、かまいたちを使った。
カイト:「ノリス」
カイトは時空間魔法でスピードをあげ、負傷者のところへ行く。
カイト:「大丈夫ですか?」
冒険者E:「いやもう…」
カイト:「ノリス」
カイトは負傷者を連れて後退した。
冒険者E:「すまない」
カイト:「ここからは自力で町に戻ってください」
冒険者E:「かたじけない」
カイトはこれを負傷者の分だけ繰り返す。
その間他の3人はカイトを援護する。
あらかた負傷者を助けると、
カイト:「これではキリがないなぁ」
カイト:「一旦引くぞ!」
カイト:「まだ、戦える者は、自力で町まで行ってくれ!」
冒険者F:「直ぐに追いつかれる」
カイト:「時間はこちらで稼ぐ」
冒険者F:「わかった、皆引くぞ!」
マイラ:「でも、どうやって時間を稼ぐですの」
カイト:「マイラの水魔法で、ヤツラのいる場所、水浸しだよな!」
カイト:「電気魔法だ!」
マイラ:「わかったですの」
マイラ:「ん〜、はいっ!」
空から雷が落ちる。ふた角兎達は感電し、その場に倒れる。
カイト:「よし今だ、このスキに町に戻るぞ」
町まで退却してきたカイトは、
カイト:「門を閉めろ!」
カイト:「防衛体制をとれ、ヤツらを1匹たりとも町に入れるな!」
門の守護兵A:「はい、わかりました」
カイト:「我々はギルドに向かおう」
カイトたちがギルドに向かっている途中、1匹の蝿がカイトの耳たぶにとまった。
???:「大魔王様、大魔王様」
???:「聞こえますか?」
耳たぶにとまった蝿から声が聞こえる。
カイト:「おっ、ベルゼか?」
ベルゼブブ:「はい、ご無事ですか?」
カイト:「今のところはな!」
ベルゼブブ:「連絡がついて安心いたしました」
ベルゼブブ:「バルナック周辺でふた角兎が大量に繁殖しております」
カイト:「あぁ、すでに1戦して町に逃げ帰ったところだ」
カイト:「多勢に無勢、何か策をこうじる必要があるな」
ベルゼブブ:「ふた角兎の大繁殖を止めるには、ヤツらの巣にいる女王兎を倒すしか方法がありません」
カイト:「わかった、巣の場所を特定できるか?」
ベルゼブブ:「今やっております、まもなく特定できるかと」
カイト:「わかった、巣の場所までどうやって行くかはこちらで考える」
ベルゼブブ:「はっ、分かり次第ご連絡いたします」
カイト:「うむ!」
ベルゼブブとの通信は切れた。
蝿は他の3人の耳たぶにもとまっており、今の会話を聞いていた。
ベリアス:「しかし、厄介な事になりましたなぁ」
カイト:「今はギルドへ急ごう!」
カイトたちはギルに着いた。
ケーラが心配そうな表情で現れた。
ケーラ:「皆さん、ご無事で、良かった」
ケーラはホッとした表示になった。
カイト:「他の冒険者は?」
ケーラ:「負傷者多数です。」
ケーラ:「ただ、奇跡的に死者が出なかった事が幸いです」
ケーラ:「皆さんのご活躍だと聞いています」
カイト:「そんなことより」
カイト:「今は、ヤツらを町に入れず、どうやってヤツらの巣に近づくかだ」
ケーラ:「私、とんでもないことを忘れておりました!」
ケーラ:「ゴメスさん達のパーティが…」
ケーラ:「別の依頼で町の外に…」
カイト:「何だって?」
カイト:「よし、皆!助けに行くぞ!」
3人:「はいっ!」