第1章 第12話 今後の行き先
一方エリック達は男を拘束し、洞窟を出た。
エリック:「カイトに言われて通り、生存者を探すか」
アリア:「まぁ、この有様だ、期待はできないだろうが・・・」
アリア:「エリック、あんたはその男を見張っててくれ」
アリア:「アタイとキキでこの辺りを回って見るから」
エリック:「ああ、わかった」
アリア:「キキ、行くよ!」
キキ:「ええ」
辺りはゴブリンの死体だらけで生きている人間などいそうもなかった。
エリックが拘束された男に近づく。
エリック:「ん?お前は、さっきまで暗くてわからなかったが、ガズ!」
ガズ:「ああ、エリック」
エリック:「盗賊団にまで落ちぶれるとは・・・」
エリック:「この様子だた、お前らの頭は生きているかどうかも」
ガズ:「・・・」
アリアとキキが戻って来た。
エリックがアリアの方に視線を向けると、アリアは無言で首を横に振った。
#どうやら盗賊団の生き残りはいなかった模様だ。
エリック:「ガズ、生き残ったのはお前だけのようだな!」
ガズはうなだれている。
エリックたちは、洞窟の入り口でカイト達が戻って来るのを待った。
しばらくして、洞窟から数人の足音が聞こえてきて。
洞窟からカイトたちが出てきた。
その中にひときわ大きな魔獣がいることに気づいたエリック、アリア、キキは身構える。
カイト:「ちょっとまって、こいつもウチのメンバなんだよ」
エリック、アリア、キキそして拘束されているガズまでもが驚く。
エリック:「あの凶暴な魔獣ダイアウルフの中でも更に凶暴な、1匹狼ローンダイアをか?」
アリア:「凶暴すぎで群れを作れないという?」
キキ:「驚きです」
カイト:「他に生存者は?」
エリック:「こいつ独りだ!」
カイト:「そうですか」
ベリアスはガズに向かって。
ベリアス:「あなたには、聞きたい事がたくさんあります」
ガズはうなだれたまま何も言わない。
カイト:「それなら、場所を変えよう」
カイト:「さっきの泉、あそこなら、ここより安全だろぅ」
カイト:「皆、集まって」
カイト:「キーニス」
カイト達は泉のほとりに移動した。月明かりに照らされた泉は美しく輝いていた。
初めてのガズは驚き、辺りをキョロキョロと見回す。
ベリアスがキョロキョロしているガズに、
ベリアス:「これは時空間魔法の瞬間移動です」
ガズ:「瞬間移動?」
ベリアス:「それよりも聞かせてもらいますよ」
ベリアス:「盗賊団のこと、逃げた3人のこと」
ガズはエリックを見て、
ガズ:「エリック、俺は」
カイト:「知り合いなのか?」
エリック:「あぁ、顔見知り程度だが。こいつ、元冒険者だ!」
ベリアス:「で、なぜ盗賊団に?」
ガズ:「そんなつもりは・・・」
ガズ:「最初は、仲間たち自警団を作り、いくつかの村の守りを担っていた」
エリック:「どうせまた、守ってやるから金と食料をよこせって、村々を脅迫していたんだろ」
ガズ:「脅迫?そんなことはしてない」
ガズ:「食い物と酒、寝床さえあればよかったんだよ」
ガズ:「もともと、ギルドに対してよく思っていなかった、あぶれ者の集まりだったからな」
ガズ:「だが、あのジジィ、ブルーノが来てからおかしくなったんだ」
ガズ:「変なヤツラが集まりだして・・・」
ガズ:「この辺一帯の町や村、盗賊団崩れのテロリストが多く潜伏している」
ガズ:「テロリストに乗っ取られた町もあると聞く」
ガズ:「テロリストの多くはキュゴーウから来ている」
ベリアス:「洞窟の奥、魔法陣の真ん中にいた盲目の老人、それがブルーノでしょう」
ベリアス:「それで、ブルーノの目的は?」
ガズ:「詳しくは知らん、ただ・・・」
ガズ:「『この辺りまでテロリストが潜伏できれば・・・』とか」
ガズ:「『なにかの実戦が・・・』とか」
ガズ:「そんな話をしているのを聞いたことがある」
ガズ:「後・・・嬉しそうに何かを言っていた」
ガズ:「あっ、そう『闇に愛されし若者』」
#スーッとガズの首筋に何かが刺さり、ガズの首がガクッとなった。
エリック:「おい、どぉした?突然」
ガズは泡を吹いて絶命していた。
ベリアス:「毒針です」
エリックが槍を構えたが、ベリアスがそれを制した。
ベリアス:「無駄です、もうこの近くにはいないでしょう」
ベリアス:「我々に気取られず、毒針を放ったわけですから」
カイト:「チャッピーも気づかなかった」
ベリアス:「相当な手練ですね」
エリック:「口封じか・・・」
だが逃げていく刺客を追う者がいたが、そのことは今のカイト達は知らない。
オースティンが話題を変える。
オースティン:「今後のことなんですが・・・」
オースティン:「テロリストの件、シティーに戻って報告する必要があります」
ゴメス:「そうだな、ライアンの件もあるし」
アリア:「アタイらは構わないよ、なっキキ」
キキ:「はい」
エリック:「カイト、お前らはどうする」
オースティン:「あなた方にも同行をお願いしたいと考えてます」
カイト:「我々は構わないが・・・」
エリック:「ここまできたんだしなぁ、乗りかかった船と言うことで」
オースティン:「ありがとうございます」
オースティンが今後のことについて話し出す。
オースティン:「それでこれからのルートですが」
ベリアス:「ガズによれば、ここより北東キュゴーウ共和国には多数のテロリストが潜伏しているようですね」
オースティン:「今は、テロリストの相手をしている場合ではありません」
オースティン:「ここより南東に行けばツサロ共和国との国境に出ます」
オースティン:「ツサロ共和国はシッセナ共和国と強いつながりがります」
オースティン:「キラナ教会の支援も受けられるはずです」
オースティン:「国境の町、ザサビでチャッピーのギルド登録をしましょう」
カイト:「うん」
カイトはにこやかに笑い、チャッピーを撫でる、チャッピーも嬉しそうにしっぽを振る。
オースティン:「ただ、1つ問題があります」
ベリアス:「何でしょうか?」
オースティン:「今の我々には、馬車がありません」
オースティン:「馬車があれば1日の距離、明日の朝に出発すれば日暮れまでには到着可能です」
オースティン:「徒歩だと・・・3日はかかるかと」
エリック:「この辺りで馬車は手配できそうにないし」
オースティン:「更に、馬車に積んでいた荷物・・・食料もありません」
カイト:「食料に関しては、チャッピーもいるから狩りも楽にできるし・・・」
ベリアス:「どうしましたか」
カイト:「できた、この策なら行ける」
オースティン:「策?」
カイト:「俺とチャッピー、それにオースティンでその国境の町ザサビの入り口まで行く」
オースティン:「カイトとチャッピーと僕が?」
カイト:「そっ!、オースティンがチャッピーの背に乗り、俺は重力魔法で空を飛ぶ」
カイト:「これなら半日で行けるはず」
ラミル:「ダイアウルフの足なら、馬車の倍以上のスピードは出るわね」
ベリアス:「ザサビから瞬間移動でここに戻り、残った人を連れたザサビまで瞬間移動」
マイラ:「名案ですの!」
エリック:「昼過ぎまでには全員、ツサロ共和国との国境までつけるってか!?」
ゴメス:「凄いことを考える」
アリア:「考えるだけでなく、やってのける」
キキ:「ほんと、凄いです」
オースティン:「僕はもう、付いてけなくなっているんですけど」
ベリアス:「そうと決まれば、明日に備えて夕食といたしましょう」
キキ:「残った食材はこれだけです・・・」
ベリアス:「明日の昼は町の食堂で食事ができます」
ベリアス:「今晩と明日の朝の分としては十分ですね」
アリア:「今日は色々あったし、パーッとやろうぜ」
ベリアス:「パーッとやるだけの材料はありませんが、」
ベリアス:「確かに色々ありましたね」
エリック:「ありすぎてよ〜、もう何がなんだか・・・」
ゴメス:「ホントだな、疲れたよ」
その後、一行は夕食を取り、思い思いの場所で疲れを癒やした
そして翌朝、
カイトが目を覚ますと既にベリアスは起きていた。
カイト:「ベリアス、もう起きていたのか、おはよう」
ベリアス:「おはようございます」
チャッピーも目を覚ます。
ベリアス:「カイト、朝食です」
ベリアス:「チャッピー、これはあなたの分です」
ベリアスはカイトとチャッピーに朝食を渡した。
他の者も続々起きてきた。
ベリアス:「あっ、皆さん、朝食はそこにあるので、適当にやってください」
ゴメス:「すまない」
各自朝食を済ませる。
カイトとオースティンは出発の準備をしている。
カイト:「オースティンさん、準備は?」
オースティン:「はい、整っています」
カイト:「じゃぁ、行くか!」
カイト:「チャッピー」
チャッピーがオースティンに近づき、伏せの姿勢をとる。
カイト:「乗ってください」
オースティン:「はい」
オースティンはチャッピーに乗り、首の辺りに手を回してしがみつく。
カイト:「エオリシ」
カイトは宙に浮き、
カイト:「チャッピー走れ!」
チャッピー:「ウォーン」
チャッピーは遠吠えをし、全力で走り出した。
カイト:「ペタグマ」
カイトは飛行し、チャッピーの上空を同じ速度で飛び続ける。
オースティン:「ちょっと、速すぎませんか!?」
カイト:「もっとスピード上げるよ」
オースティン:「え〜〜〜〜っ」
カイト:「チャッピー!」
チャッピーは更に加速した。
オースティン:「あ゛〜〜、だーずーげーで〜〜〜」
オースティン:「もう、%$□△§※¶」
もう言葉にすらならない。
2人と1匹は途中数回休憩を入れたが、お昼前にはザサビ近くの小高い丘の上にいた。
カイト:「ここから国境の町がよく見えますね」
オースティン:「はぁ〜はぁ〜はぁ〜」
オースティンは座り込んで、ヘタれている。
カイト:「国境の町だから、もっと賑やかかと思ってたよ」
オースティン:「えっ?」
オースティンもカイトの横に来て、町を見下ろす。
オースティン:「おかしいですね、いつもはそんなはずないのに・・・」
カイト:「町の入り口まで行ってみよう」
オースティン:「そうですね」
カイト:「チャッピーはここで待ってて」
カイトはチャッピーを撫でる。
2人はツサロ共和国、国境の町ザサビ入国審査所前までやって来る
カイト:「ん?門が閉まっているぞ」
オースティン:「おかしいですね、通常この時間に閉まっていることはないはずですが・・・」
オースティン:「すいません、すいませーーーん」
オースティンは門の横にある関係者以外立ち入り禁止のドアを叩きながら言った。
係官らしき人物が、ドアも開けずに、それに答えた。
係官:「どうした、何かあったのか?」
オースティン:「なぜ、閉まっているんですか?何かあったんですか?」
係官:「あんた、旅の人?」
オースティン:「キラナ教会のものです」
係官:「これは失礼しました、布教活動か何かでしょうか?」
オースティン:「まぁ〜そんなところですが、これは?」
係官:「ご存じないんですか?我が国の現状を!」
係官:「流行病のせいで、入出国が禁止されています」
カイト:「ロックダウンですか!」
オースティン:「えっ?」
カイト:「我々は、ツサロ共和国に入国できない、そういうことですね!」
係官:「そうなんです、すいません」
オースティン:「そこをなんとか・・・」
係官:「キラナ教会の方でも・・・」
カイト:「無理と言うことか!」
オースティンはうなだれる。
カイト:「一旦、皆のところに戻り、策を練り直す必要があるな」
オースティン:「ええ」
オースティンは力なく答えた、それとは裏腹にカイトは平然としている。
オースティンが呆然と歩いて丘の上まで戻る間、
カイトはオースティンに聞こえない声で、
カイト:「ベルゼ、聞こえるか?」
耳たぶにとまっている蝿を介して通信を始めた
ベルゼブブ:「はい、大魔王様!」
カイト:「ツサロ共和国で流行病と言うが」
ベルゼブブ:「はい、そのようです」
ベルゼブブ:「全ての国境を閉鎖するだけではなく、住民の外出も禁止しているようです」
カイト:「そこまで感染力や致死率が高い病なのか?」
ベルゼブブ:「それが、どうも怪しいようで・・・」
ベルゼブブ:「死者を埋葬した形跡が全くありません」
カイト:「わかった、引き続き調査をたのむ」
ベルゼブブ:「承知いたしました」
カイト達が丘の上に戻ってきたことを見つけたチャッピーはしっぽを振りながらゆっくり近づいてくる。
カイトはチャッピーの頭を右手でやさしく撫で、左手をオースティンの肩の上にのせた。
カイト:「キーニス」
カイト達は皆が待っている泉に戻った。