第1章 第11話 盗賊団のアジト
洞窟の中に2人の男がいた。
1人は盲目の老人、黒いフード付きのマントを羽織、地べたに座っている。
老人の前には、魔法陣が描かれ地面に水晶玉がおかれており、盲目の目で水晶玉に映る光景をを見ている。
盲目の老人:「ライアン、お前さんが言っていた男とはこの者じゃな」
盲目の老人は、洞窟にいたもう1人の男に言った。
ライアン:「あぁ、そうだ!」
水晶玉にはゴメスが写っている。
ライアン:「だが、ブルーノのジィさん、あんたの興味は別にありそうだな」
ブルーノ:「この若者、面白そうじゃ」
水晶玉にはカイトが映し出された。
盲目の老人ブルーノはニヤニヤしている。
ブルーノ:「さて、次も突破できるか、楽しみじゃわい」
ブルーノ:「ハーゴブ、出番じゃ!」
水晶玉を通して、洞窟の外にいる男に命令した。
一方カイトたちは、
泉より歩を進め、小高い丘に向かっていた、日はだいぶ傾いていた。
丘に近づくに連れ、丘の前が緑に覆われている事に気づく。
カイト:「この先は草原なのか?」
オースティン:「いえ、ゴツゴツした岩場だったと思います」
オースティン:「確かにおかしいですね」
エリック:「行ってみるしかないだろう」
ゴメス:「おお、今はそれしかないようだ」
日が落ちる頃、カイトたちは丘の前に到着した。
カイト:「これは・・・」
緑色に見えていたのは、丘の前を埋め尽くすゴブリンの群れだった。
その数の多さにカイトたちは驚愕した。
アリア:「何だこりゃ!」
キキ:「・・・」
キキは恐怖のあまり声にならない。
ゴメスもエリックも唖然としたまま、動かない。
ゴブリン達は不敵に笑いながら、ゆっくりと近づいてくる。
エリック、ゴメスのパーティは我を忘れ、立ちすくんでいる。
ベリアスがカイトに近づき、冷静に話しかける。
ベリアス:「さて、どうしたもんですかね」
カイト:「う〜〜ん」
カイトはゴメスたちを見る、彼らは戦えそうにない。
カイト:「仕方ないか、まだ隠しておきたかったが」
カイトは両手を上げる。
カイト:「メテオリティス」
空から大小無数の隕石がゴブリンの群れの上に落下する。
多数のゴブリンが悲鳴を上げ絶命する。
カイト:「マイラ、土魔法で丘の上、あの洞窟の入り口まで橋を作れ!」
マイラ:「ハイですの」
マイラ:「そーれ!」
カイトが落として隕石を利用し、マイラが丘の上の洞窟まで橋をかけた。
カイト:「行くぞ!」
カイト:「ベリアス、ラミル、橋に登ってくるゴブリンを蹴散らせ」
ベリアル・ラミル:「はい!」
ベリアルは弓で、ラミルは魔法でゴブリンたちを消しらしている。
橋を壊すゴブリンの多数おり、その都度マイラが補修する。
4人は橋を駆け上っていく。
我に返ったエリックは、
エリック:「おい、お前ら!」
エリック:「俺らも続くぞ!」
エリックも橋を駆け上がり始めた。
その声に、我に返ったゴメス達4人はエリックの後に続いた。
カイトたちが橋の中腹あたりに差し掛かったころ、ゴブリンの群れが引いた。
不思議に思い、歩を緩めるカイト達、後ろからゴメス達が追いつく。
橋の向こうから、ゆっくりとこちらに向かってくる戦士風の男がいた。
戦士風の男:「やっと来たか、待ちくたびれたぞ、ゴメス!」
ゴメスは驚きを隠さずに戦士風の男に言った。
ゴメス:「ライアン!?」
ゴメス:「なぜ、お前がここに?」
ライアン:「そんなことは、どうでもいい」
ライアン:「さぁ〜!決着をつけるぞ!」
ゴメス:「なんのことだ?」
ライアン:「シティーにいた頃から、お前が疎ましかった」
ライアン:「帝国との和解交渉もお前に反対され、将軍のルフバルに疎まれるように」
ライアン:「それからは、主要な地位には」
ゴメス:「あれはただ・・・」
ライアン:「やかましい!その上」
ライアン:「ディラン大統領暗殺未遂事件に関する内通者として俺の名前を上げていただろ」
ゴメス:「誤解だ」
ライアン:「これ以上は問答無用、参る」
ゴメス:「仕方がない、相手になる」
ゴメス:「皆さん、手は出さないでください」
二人の一騎打ちが始まった。
ゴメスは両手にトマホーク、ライアンは片手剣と盾であるがなぜか背中に両手剣を背負っている。。
パワーのゴメス、スピードのライアン、一進一退で五分五分の戦いを続けている。
ゴメス:「お前、その左目、どうした?」
ゴメスはライアンが左目に眼帯を付けていることを気にしていた。
ライアン:「知りたいか?」
ライアン:「使うつもりはなかったが、ゴメス、お前、以前より腕を上げたな」
ライアンは一旦ゴメスから離れると盾を捨て剣を鞘に納める。
背中の大型剣を抜き両手で構える。そして、
ライアン:「ファイアーソード」
ライアンの剣は炎に包まれ、驚き呆然と立ちすくむゴメスに向かって剣を振るう。
オースティン:「危ない!」
カイトがライアンの剣は炎に包まれを太刀、同太貫で受け止める。
炎が次第に弱まり、やがて消えた。
更にライアンの力も衰えていく、まるでカイトに吸い取られていくようだ。
カイト:「闇の力・・・」
その言葉に、ライアンは一歩退いた。
ライアン:「邪魔が入ったな」
ライアン:「この勝負、いずれまた」
ライアンは洞窟の方へ歩いて言った。
追おうとしたカイトたちを再びゴブリンの群れが襲いかかる。
ゴメス:「ライアン、お主、騎士が決して手を出しては行けない力を・・・」
ライアンは振り返りもせず小声で、
ライアン:「騎士か・・・」
ライアンは洞窟の中に消えていった。
洞窟の中に戻ったライアンに対し、ブルーノは
ブルーノ:「倒さなくて良いのか?」
ブルーノ:「くだらん情は禁物じゃぞ!」
ライアン:「あの若者・・・」
ブルーノ:「お主も興味をもったか?」
ライアン:「闇の力・・・俺の力を吸収した!」
ブルーノ:「なんと!素晴らしい!」
ブルーノ:「闇に愛された若者」
ブルーノ:「教主様に少しでも早くご報告申し上げねば」
そこへハーゴブと盗賊団の頭がガズが入ってきた
ガズ:「ヤツら物凄い勢いで迫って来てます」
ブルーノ:「ハーゴブ、もうここには用はない」
ブルーノ:「行くぞ!」
ガズ:「ちょっと待ってください、あっしらは」
ブルーノ:「ゴブリンたちはおいていく」
ブルーノ:「せいぜい、時間稼ぎをしてくれ」
ブルーノ、ライアンそしてハーゴブは洞窟の奥の闇へと消えていった。
3人が闇に消えた後、ゴブリンは暴走を始めた。
いつの間にか、味方であったはずの盗賊団にもゴブリンは襲いかかるようになった。
ベリアス:「何かあったようですね」
カイト:「チャンス、一気に洞窟まで行くぞ!」
先頭を走るカイトに後の8人が続いた。
カイトが洞窟の中に入ると、1人の男が数匹のゴブリンに襲われているところだった。
カイトが太刀で1匹のゴブリンの首を跳ねる。
続いて入ってきたエリックがゴブリンを槍で心臓一突き。
更に続いたゴメスがゴブリンをトマホークで脳天をかち割る。
それを見ていた他のゴブリンは洞窟の外に逃げるが。
洞窟の外ではマイラとラミルの魔法でゴブリンたちは一掃されていた。
それを見て呆然としたゴブリン達にベリアスに放った矢が突き刺さる。
オースティン、キキ、マイラ、ラミル、ベリアスそして最後にアリアが洞窟に入ってくる。
カイト、ベリアス、マイラそしてラミルは闇の結界に気づいた。
ベリアス:「かなり巧妙に仕込んだ結界ですね」
マイラ・ラミル:「うんうん」
オースティン:「えっ、ここに結界が?」
オースティンには結界そのものの存在すらわからなかった。
ベリアス:「カイト、壊せますか?」
カイト:「ああ、いけると思う」
カイト:「スビアービ」
ビリビリ、バーンという音と共に結界が崩壊し、洞窟の奥へと続く道が現れた。
結界が崩壊する少し前、洞窟の奥では、
ブルーノ:「ヤツラに追いつかれる前に、戻らねば」
ライアン:「ヤツラにあの結界が壊れるとは思えんが」
ブルーノ:「ヤツラを侮ってはならん」
洞窟の奥を進みながら、ブルーノは左側にある岩でできた牢獄をみる。
ブルーノは牢獄の前で立ち止まり、
ブルーノ:「足止めくらいにはなるであろう」
ブルーノは牢獄の鍵を開け、中にいた魔獣を解き放った。
ブルーノ:「後から来るものを殺せ!」
ブルーノは魔獣に命令し、3つに別れた道の右側を選んで進んだ。
ライアンとハーゴブも後に続いた。
洞窟の奥へと続く道が現れて、驚いているオースティン達。
ベリアス:「この先はかなり危険そうですね」
カイト:「俺ら4人だけで行こう」
ゴメス:「俺も行かせてもらう」
オースティン:「何かあったときのために、僕も行きます」
オースティン:「回復役は必要でしょ」
カイト:「わかりました」
カイト:「他の皆さんは、生き残った盗賊団がいたら捕まえて」
カイト:「そこの男と一緒に、逃げないよう見張っていてください」
エリック:「わかった」
キキ:「気をつけてね」
カイト達6人は洞窟の奥へと進むと、さっそく魔物の気配を感じた。
と、その刹那、先頭を行くゴメスに襲いかかって来た。
ゴメスがトマホークに手をかけた時、
カイト:「おすわり!」
魔獣が『おすわり』をした。
『おすわり』をしている魔獣はローンダイアである。
群れをなさない大型の狼で、魔獣の中でも凶暴と恐れられていた。
カイトはローンダイアに近づいた。
カイト:「でっけ〜なぁ、この犬」
ベリアス:「いえ狼です」
オースティン:「いやいやいや」
オースティンは腰を抜かし後ずさりしている。
ゴメスはトマホークに手をかけたまま動かない。
カイト:「しっかし、何か反抗的」
カイト:「伏せ!」
ローンダイアは『伏せ』の姿勢を取るが、先程から威嚇するように唸っている。
構わずベリアスが近づいてくる。
ベリアス:「やはりこれ、冥約の首輪ですね」
ベリアス:「こんな物がまだあったとは」
ベリアス:「これを外さないと、いつ襲われるかわかりません」
カイト:「どぉやったら外せる?」
ベリアス:「外し方はありません!」
ベリアス:「まぁ〜、付けた術者が外すか、付けた術者が死ねば外れます」
カイト:「ふ〜ん・・・」
カイト:「あっ、そうだ」
カイト:「フロッホーラ」
カイトは首輪に両手をかざしている。
カイト:「この術者、結構長生きだな」
カイト:「あっ、外れた」
ベリアス:「何をしたんですか?」
カイト:「この首輪の時間だけを進めた」
カイト:「今この首輪は何十年も先に存在するものとなったので、消えるよ」
カイトの言葉通り、首輪は消えた、というより、何十年先に時間に移動した。
ベリアス:「なるほど、そんな手が!」
カイト:「チャッピー、おすわり」
ローンダイアは『おすわり』の姿勢を取る。
今度は尻尾を大きくフリ、嬉しそうである。
カイト:「お手」
ローンダイアは『お手』をする。
カイト:「おかわり」。
ローンダイアは反対の前足で『お手』をする。
カイト:「よーし!チャッピー、いい子だ」
ローンダイアは一層喜んで、カイトの顔を舐め始める。
カイト:「よせよ、チャッピー」
カイトはローンダイアの頭を撫でる。
この一部始終を見ていたゴメスとオースティンはポカ〜ンとしている。
カイトのパーティのメンバーはローンダイアに向かって、
ベリアス:「チャッピー、私はベリアスです、よろしく!」
ラミル:「ラミルよ」
マイラ:「マイラですの」
チャッピー:「ワウォ〜ン」
チャッピーがパティーのメンバーに加わった。
一行は更に奥へと進んでいく。
カイト:「チャッピーもギルドに登録する必要があるのかな?」
オースティン:「使役獣も登録の必要があります」
カイト:「じゃ、この後ギルドに寄ろうよ」
オースティン:「構いませんが、今はこの先のことを」
ベリアス:「道が別れていますね」
カイト:「チャッピー、ヤツらどの道を行った?」
チャッピーは3つに別れた道、それぞれの匂いを嗅いだ。
チャッピー:「クゥ〜ン」
右の道の前で鳴いた。
チャッピー:「よし、チャッピー、いい子だ」
カイトはチャッピーの頭を撫でる。
チャッピーは嬉しそうだ。
その頃、洞窟の奥の部屋ではブルーノが魔法陣のの前で何やら呪文を唱えていた。
唱え終わった、ブルーノに対しライアンが、
ライアン:「この拠点は捨てても良いのか?」
ブルーノ:「特に問題はない!」
ブルーノ:「ハーゴブの実戦結果も上々」
ブルーノ:「それにあの盗賊団、使い物にならんかったし」
ブルーノ:「ここより北東、キュゴーウの村や町の多くが、テロリスト集団の拠点となっている」
ブルーノ:「それに南東のツサロでは・・・」
ブルーノ:「この辺境の地ブルジンは、もはや重要ではない」
ブルーノ:「それより、闇に愛された若者のことを!」
ブルーノ:「では、戻るとするかの」
ブルーノ:「ライアン、ハーゴブ、魔法陣の中へ入るのじゃ」
とその時カイト達が部屋に入って来た。
ブルーノ:「なんと、ここまでやって来るとは」
紫色の光に包まれた3人の男をカイトは確認した。
カイト:「お前ら、一体何者なんだ?」
ブルーノはカイトの言葉を聞かず勝手に喋りだす。
ブルーノ:「ほぉ〜、これは驚いた、ローンダイアを手懐けるとは!」
ブルーノ:「でも、少々遅かったですね」
ブルーノ:「またいずれお会いしましょうぞ」
ブルーノ:「闇に愛され・・・」
ブルーノ達は紫色の光の中に消えた魔法陣もなくなった。
ゴメス:「ライアン・・・」
カイト:「あいつら・・・」
ベリアス:「闇に愛され・・・」
ベリアス:「いったい、何のことでしょうか?」