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28 さらなるコード

 スネイル少年は、クレイ・ゴーレムのようになってしまったクラスメイトたちから吊し上げにあっていた。



「おいっ、スネイル! お前、ふざけんなよっ!?」



「お前のおかげで俺たち全員、怪我しちまったじゃねーか!」



「それに泥まみれよっ! これ、どうしてくれるのっ!?」



「しかもゴーレムまでダメにしちまいやがって! こんなところで置き去りじゃねぇか!?」



「こんなんじゃ遺跡に行けないし、街に戻るにも遠いし……! もう、さいってー!」



「おいっ、責任取れよっ、このゴーレムオタクが!」



 ゴーレムを失ったショックと、みなから責められたショックで、スネイルはわぁわぁと泣き叫んでいた。



「ニョロォォォォォォォォォーーーーーーンッ! みんなひどいよ! ボックンの『センチピード・ゴーレム』に喜んで乗ってたくせに、いざダメになるとボックンを責めるだなんて、あんまりだぁーーーっ! ニョロロロロロロロロローーーーーーーーンッ!!」



「うるせぇよ、ダメにしたのもお前だろうが!」



「そうだよ! お前のつまらねぇ見栄で、クラス全員に迷惑かけやがって……! もううんざりだ!」



「そうよそうよ! リーダー面してるけど、あんたなんてお金がなければ、誰も相手にしないんだから!」



「もうほっとこうぜ! こんなゴーレムにしか相手にされねーやつ!」



「テメーはひとりでシコシコ、メイドゴーレムでも作ってろよ!」



(わら)で女の子のゴーレムを作るだなんて、頭おかしいよね、コイツ!」



「そうそう! しかもコエさんみたいに綺麗じゃなくて、カカシみたいにきったないの!」



「それを見せびらかしていい気になってるんだから、キモいよねー!」



 賢者科の少年少女たちの集団イジメの様子を、丘のてっぺんから眺めていたボウイ。


 あの程度のイジメはボウイにとっては日常茶飯事なので、その点については彼は心配していない。

 むしろ気になっていたのは、怪我した人がいないかということだった。



「でもまあ、あれだけ言い争う元気があるんだったら、みんな平気だよね。行こうか、コエ」



「はい、旦那様」



 ボウイはアクセルターンで方向転換すると、遺跡に向かって走り出そうとする。

 しかし顔をあげた拍子に、



「あっ、あれは……?」



 少し離れたところで、デンと鎮座している大岩。

 そのてっぺんあたりに、見慣れた記号が彫り込まれているのが目に入った。


 青い光の正方形が、その記号に向かって収束している。

 ボウイはアクセル離し、つぶやいた。



「あれは、『コード』だな」



 一定の記号の組み合わせで構成されているそれは、昨日遺跡でも見つけたのと、ほぼ同じものであった。


 『コード』は遺跡の中だけでなく、いたるところにあり、街中にも、そしてこんな山奥にもひっそりと存在する。

 おそらく古代の人々が、遺跡と同じく残してくれたものであろうと、学校の歴史の授業では教えられていた。



「コエ、ちょっと待ってて。あのコードをスキャンしてくる」



「はい、旦那様。それでは、わたくしもご一緒に……」



 シートからひらりと降りたボウイは、スタンドを立てながら首を振った。



「いいよ、あのくらいの岩山なら登り慣れてるからすぐだし。すぐ戻るから、ここで待ってて」



「かしこまりました、それでは旦那様のお申し付けどおり、ここでお待ちしております。どうかお気をつけくださいませ」



 バイク形態のままのコエに見送られながら、ボウイは岩山に走っていき、へばりついてよじ登る。


 彼の視界では、岩の窪みや出っ張りなどが光っていた。

 デヴァイスにより手がかりが案内されていたおかげで、すんなりと頂上にたどり着く。


 岩の上から、コードを見下ろしながらつぶやく。



「昨日遺跡で見つけたコードより、だいぶ大きいな……」



 それはコエからだいぶ離れていたので、ほぼ独り言だったのだが……。

 少年の頭の中には、『はい』と鈴音が響いていた。



『そちらは、ミドルサイズのキャンペーンコードでございます』



「ミドルサイズ? 大きさによって、何か違うの?」



『はい、旦那様。コードというのは物理的に大きくなればなるほど、その中におさめられる情報も多くなります。キャンペーンコードの場合はそれ以外の意味もございまして、コードの大きさに比例して、サーチしたときのプレゼントがより良いものが貰える可能性が増えます』



「ということは、何種類かあるってことだね」



『はい、左様でございます。小さい順から、ウルトラスモール、スーパースモール、スモール、ミドル、ビッグ、スーパービッグ、ウルトラビッグの7種類がございます。先ほど、大きいほどプレゼントが良くなると申し上げましたが、それとは別に『サイレント』という隠しコードがございまして、そのサイレント属性のかかったキャンペーンコードは、デヴァイスで表示されません。そして通常のコードとは逆に、サイレントの場合は小さいサイズほど良いプレゼントが貰えるようになります』



「なるほど、普通のキャンペーンコードはスーパービッグがいちばん良くて、サイレントのキャンペーンコードの場合はウルトラスモールがいちばんいいものが貰えるってわけだね」



『はい、左様でございます。通常のウルトラビッグは特定の遺跡の最深部にしか存在しないため、とても高価値となっております。逆にサイレントのウルトラスモールは、切手サイズのコードを肉眼で探し出さないといけないため、こちらも高価値となっております』



「ふぅん……。たとえばウルトラビッグくらいになると、どんなプレゼントが貰えるの?」



『はい、それはラスト・マギアの真の力が解放されると言われるほどに、とても素晴らしい特典となっております。そしてウルトラビッグコードは世界に7つしか存在せず、その全てを集めると、ラスト・マギアのすべての力が手に入ると言われております』



 その説明に、少年は雷鳴を耳にしたウサギのように反応した。



「ら……ラスト・マギアの真の力……!? 今でもじゅうぶん凄いのに、まだ底力が隠されてるの!? それに7つ集めると、すべての力が手に入るだなんて……!? もう、探すしかないじゃないか!? それっていったい、どこにの遺跡にあるの!?」



『申し訳ございません、旦那様。それはキャンペーンの性質上、わたくしどもAMR(アムール)にもわからないことなのでございます。ただ……昨日、旦那様がわたくしをお選びいただいた遺跡の最深部に、ひとつ目のウルトラビッグコードがございます』



「ほ……ホントに!?」



 まさかこんなに身近に、7分の1の、ひとつめがあるとは……!

 と、色めきたつボウイ。


 それはおもちゃ箱に入れていたボールが、実は伝説の龍の球だと教えられたような驚きであった。


 そして少年は、メイドとの脳内会話に夢中になるあまり、気付かなかった。


 茂みに偽装した何者かが、メイドのすぐそばまで、近づいていることに……!

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