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27 横転ゴーレム

「ニロロロロロロロッ! ボックンの『センチピード・ゴーレム』があれば、ちんたら回り道なんかしなくても、遺跡まで一直線! みんなをブッチぎって、一番乗りは間違いな…………い?」



 自慢のクルーザーを見せびらかすように、ゴーレム自慢を続けていたスネイル少年。

 しかしふと、イルカのように窓の外を飛び跳ねるものに気付く。



 ……バウンッ!



 とエキサイティングに飛ぶバイクを目の当たりにした瞬間、



「ニョロオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!?!?



 スネイルはゴーレムの窓枠から、寝床から飛び出すウナギのようにニョロリと身を乗り出す。

 彼のクラスメイトも、空を泳ぐようなボウイに気付いた。



「なっ……なんだありゃ!?」



「木馬……!? いや、魔導装置かっ!?」



「しかもソリじゃなくて、脚もない!? 輪っかみたいなのが付いてるぞ!?」



「そんなので、なんであんなにスピードが出るんだ!? 山道だってのに、下り坂を滑り降りてるみたいだ!」



「すっ……すげえ……! デコボコの道でも、スキップするみたいに軽々と走り抜けてる!?」



 ……バウンッ!



「まっ……! また飛んだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」



 賢者科の生徒たちの驚きように、すっかり気をよくするボウイ。

 イルカに乗った少年のように、みなに向かって手を振り返す。



「じゃあねっ! みんな、お先にぃーーーっ!!」



 そして軽くアクセルを捻るだけで、あっさり先行した。



「す、すげえ……! すごすぎる……! すごすぎるぞっ!?」



「もしかしてあれも、ラスト・マギア……!?」



「こんな道で、あれだけの速度で走れるだなんて……!」



「しかもまだまだゼンゼン余裕って感じだ! 俺たちの乗ってるゴーレムなんて、もういっぱいいっぱいだってのによ!」



「そうだ、アイツが乗ってるのを若いウサギだとすれば、これなんて病気の亀みたいだ!」



「うん! 私、あれ乗ってみたい! 風を切ってるみたいで、すっごく気持ちよさそう!」



「わかる! この泥亀、ノロいうえにやたらと揺れるし、乗ってて気持ち悪いんだよなぁ!」



「そうそう! ちょっと近道できるからって、無理してこんな山道を通ることなんてないのに!」



 さんざんな言われように、スネイルのプライドはズタボロになってしまう。

 半ば意地になって運転席に飛びかかっていくと、お付きの運転手に向かって、



「ニョロロローッ!! もっとスピードを出すんだっ! ボックンの『センチピード・ゴーレム』が、あんな死にかけのバッタみたいな乗り物に負けるはずがないんだっ! 追いついて、踏み潰せっ!!」



「む……無理ですぼっちゃん! 山道のうえに登りですので、これ以上スピードを出せませんっ!」



「ニョロォーーーーッ!! うるさいっ! ボックンの言うとおりにしないと、パパに言いつけて運転手をクビにするぞっ!!」



「そ、そんな……! 無理にスピードを出したら、故障してしまいます!」



「ニョロッ! だまれだまれだまれっ! ボックンの『センチピード・ゴーレム』が、壊れるわけないじゃないかっ! お前がやらないなら、ボックンがやるっ!!」



「いけません、ぼっちゃん! 勝手にいじられては……!? ああっ!?」



 スネイルは運転手の制止を振り切って、強引にスロットルレバーを倒す。



 ……ガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!



 するとレバーは途中でひっかかり、無理にギアチェンジしたような、異音と震動がおこった。


 それでもスネイルはおかまいなし。

 両手を使って、力ずくで最後まで押し倒すと、



 ……ガゴガゴガオガオガオガゴアガオガオガゴガショガショガコガガガショショショショ!!



 『センチピード・ゴーレム』は、ルームランナーの速度調整を間違った人みたいな、無理矢理な足運びで走りはじめた。


 そして車体は揺れに揺れる。

 まともに座っていられなくなったクラスメイトたちは、たまらず叫んだ。



「や……やめろっ! やめるんだ! スネイル君!」



「ううっ、気持ち悪い!」



「む、無茶をするなっ、スネイル君! このままじゃ、誰かが振り落とされてしまうぞっ!」



 運転席まで止めに行こうとするも、揺れのせいでまともに歩くこともできない。

 掴まって振り落とされないようにするだけでも精一杯だった。


 そしてついに、脱線するかのように……。

 車体は、大きく傾いた。



 ……ドッ! ガッ……!!

 シャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!!



 背後から世界中の鍋をひっくり返したような轟音がしたので、ボウイはビックリして丘の頂上で停車する。

 慌てて振り返ってみると、



 ……ガゴンッ!! ガゴンッ!! ガゴガゴガゴガゴガゴンッ!!



 丘の中腹あたりで横転した『センチピード・ゴーレム』が、木々をなぎ倒しながら転がり落ちているところであった。



「ああっ!? な、なにがあったの!?」



 すると、きわめて冷静なコエの声が返ってくる。



「はい、魔導装置のオーバーロードのようです。規定以上の高出力をしてしまったために、装置の脚部が噛み合わなくなり、転倒してしまった模様です」



「みんな、大丈夫かなぁ……?」



「軽傷を負われた方が何名かおられるようです。運転手と乗客あわせて、31名様ほど確認いたしました」



「それって、全員ってことじゃないか……」



 麓でようやく止まった巨大ムカデの窓から、ほうほうのていで這いだしてくるスネイル。


 しかも運悪く麓は沼だったので泥まみれになっていたが、彼は怪我も汚れもおかまいなし。

 まだ車内に残されているクラスメイトたちもほったらかしで、ひとり泣き崩れていた。



「ニョロッ!? ニョロロロロローーーーーッ!! ぼ、ボックンの、ボックンの『センチピード・ゴーレム』がぁぁぁぁぁ……! 屋敷が買えるくらい高いゴーレムだったのに! それが、それが……! パパに叱られちゃうよぉっ! ニョロロロロロロロロローーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!」



 車体が沼に飲み込まれる前に、なんとか自力で脱出した賢者科の少年少女たち。

 彼らは泥まみれのまま、スネイルを取り囲む。


 それはまるでクレイ・ゴーレムの軍団が、主人に反旗を翻したような光景であった。

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