訪ねてきたのは 2
妹。
そう。誰がなんと言おうと妹なのである。
「「「…………」」」
誤解を解くためにも話をしようと言うことで取り合えず蒼太達は居間に座ったのだが全く落ち着かない。
和やかにご飯なんて雰囲気ではなかった。
何故なら一人は冷や汗を流しながら笑顔を張り付けていて一人は自らの行いが事態を悪化させたことなど知らないと言うようにそっぽを向き、一人はびしょ濡れのままその二人を睨み付けているからだ。
これは修羅場というものなのではないだろうか?
「そ、それじゃあ改めて自己紹介からいこうか! こちら、異世界から来ましたルルリエ・ルルアーデさんです!」
「ど、どうもー。こう見えてほら、機械なんですよ私。それにさっきみたいな奇跡も使えたりして」
「……」
話を進めて何とかなあなあに収めようとするがびしょ濡れ少女の反応は無し。
急に水を浴びせられ、意味の分からない言い訳を聞かされたら誰でも怒るだろう。
それでも蒼太はめげずに続ける。
「で! えーこちらが僕の従兄妹の藤堂霧子ちゃん。たまにこうしてうちの掃除に来てくれるんですよー。助かってますー」
「……っ!」
媚びるような言い方が癪に触ったのか霧子は髪から水滴を滴らせながらキッと二人を睨み付けた。
そして萎縮する二人に霧子は久しぶりに口を開いた。
「で、お二人はどういった関係なの? 何時からいるの? まさかうちに住んでるの?」
「そ、それは……今日急に現れてですね……」
蒼太がどもりながら今朝からの信じられないような出来事を説明すると霧子は長いため息をついた。
「お兄ちゃんが嘘を言っているようには見えないし……しょうがないか」
「良かった……信じてもらえないかと……」
「私がお兄ちゃんを信じなかったら誰が信じるの?」
「霧子ちゃん……!」
なんてできた従兄妹なのだろうと蒼太は感極まる。
そんなちょっと情けない感じの兄に霧子は「ただし!」と人差し指を突きつけた。
「ひとつだけ条件があるの」
「な、なんでしょう?」
「私も此処に住むわ!」
霧子は確固たる決意を込めた顔でそう宣言した。
「住むって……親御さんの許可は?」
「後で電話でとるわ!」
「着替えとかの荷物は?」
「こんなこともあろうかと準備してきてあるわ!」
「どんだけ用意周到なんだ……」
登山に使うような大きなリュックサックを目の前にドンと置かれ、断るための口実がことごとく潰さた。
霧子は何故か準備万端で居座る気満々であった。
「それに私がいた方がルルちゃんの面倒見やすいでしょ?」
「確かにそうだけど……」
「それともなに? お兄ちゃん、ルルちゃんと二人っきりでイケナイ事でもしようと思ってたの?」
「わかったよ! どうせ部屋余ってんだし住めば良いだろう!」
もはや脅しのようになりながらも半強制的に居住権を得た霧子は小さくガッツポーズをとった。
「よし! 言質とった! これでお兄ちゃんと同居……へくちっ」
「もうなんでもいいけどお風呂に入ってきなよ。風邪引くぞ」
「そうね。それじゃお言葉に甘えて……」
流石にずっと濡れたままなので体が冷えてきたようだ。
蒼太は湯船にお湯を張りに行く。
「そうだ。ルルちゃんも一緒に入りましょ?」
「ふぇ?」
それから霧子は手持ち無沙汰にしていたルルリエに声を掛けた。
すると完全に自分は蚊帳の外だと思ってぼーっとしていたルルリエは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
お風呂への自然な導入。