とある天気のよい平凡な一日 3
(ちょっと時間が空いたのと、評価入れてくれた人がたくさんいるし感想もくれたので隙間投稿です)
ちょっと最新話がわかりにくくなるのでこの形式に変更。
「――――で、これからどうするの?」
事情はわかったものの何をすれば良いいか全く分からない。
それはルルリエも同じようで悩み始めた。
「その……そーた。取り合えず私の祈人になりません?」
「ぷ、ぷれいやー?」
蒼太がプレイヤーと聞いて出てくるのはゲームのプレイヤーとかそんなものだ。
だけどそういう意味じゃないのは状況から分かっているので思わず聞き返す。
「奇跡は一人では起こせない。奇跡の代行者――――私ですわね。と生命力を持ち奇跡を願う者、プレイヤーがいて初めて模倣できるの。たぶん先ほどのは無理矢理私の願いを押し付けようとしたからあぁなったのだわ……なので私に奇跡を願う祈人になりません?」
「なるほど……つまり相棒とかパートナーみたいな?」
「そんな感じの認識で結構ですわ。ちなみに私自身が奇跡のような存在ですので定期的に生命力を少々いただきたく……」
「つまりそれって僕が君の生命力タンクみたいな感じになるって事?」
「そ、それは否定しませんわ……私は他人の生命力無しでは生きらない寄生虫ですし……」
「ふむ……」
それはこの先もこの子としばらく共に暮らすことになるという事。
既に片足が浸かってしまったこの異世界からの来訪者のごたごたに全身ずっぽりはまりこむことに他ならない。
「ま、いっか。なるよ。祈人に」
しかしだからと言って失うものなんてなにもないので快諾した。
こういう時、独り身だと楽だった。
「ほ、本当ですの!? だったらちょっとお手を拝借……」
「ん……? あだっ!?」
蒼太が言われた通り右手を差し出すとルルリエは彼の親指に噛み付いてきた。
「なっ、なにすんの!?」
「血をもってして契約する。普通じゃありません?」
「そりゃ物語の中とかじゃよくあるけど痛いよ……」
「じゃあ契約の確認もかねてさっそく奇跡の模倣と参りましょう!」
「まさか治せるの?」
「はい。自己治癒力を高めるという方法でなら可能です」
「へー……やっぱ君はすごいな」
「えへへ……それほどでもありますけど……んん゛っ! とっ、とにかくやるのだわっ! 自分の傷が治って行くのをイメージしながら私の言葉を復唱して!」
「わかった」
褒められてちょっと嬉しかったのかルルリエは頬を緩ませたが咳払いをして仕切り直すと息を大きく吸った。
「神の奇跡の代行者として命じる」
「神の奇跡の代行者として命じる」
「彼の者に祝福を」
「彼の者に祝福を……おぉっ!?」
すると蒼太が言い終わるのと同時にまるで巻き戻したように傷がふさがって行くではないか。
残った血をふき取るともうそこには裂傷が欠片も見当たらなかった。
「おぉー……」
その現代医療を根本から覆すような現象に蒼太は素直に感動する。
「よしっ! ちゃんと使えばこんなもんなのだわ! そしたら契約もしたことですしこの家が拠点ですわね!」
「あ、やっぱ居座るつもりなんだ……」
「迷惑でして……?」
「あー……いや、部屋余ってるし良いんだけどさ、世間体的に、ね?」
着の身着のままで来たのだから他に行き場がなくてこういう事になることは分かってはいたが、独り暮らしの家に幼女がいるなんて知れたら警察を呼ばれかねない案件だ。
蒼太個人としては寂しい一人暮らしに可愛い同居人が増えるのはとてもうれしい事なのだが。
「……?」
「あぁいや、気にしないで使ってくれ」
そんな懸念を知る由もないルルリエは可愛らしく首をかしげる。
これを見てNOと言える者はまずいないだろう。
「まぁ良いのでしたら遠慮なく使わせてもらいますわ!」
「……どうぞお好きに」
「人間のお家なんて初めてなのだわ! 青い空から見えた町の景色も灰色じゃないし! すごいのだわぁ!」
ルルリエは初めて家に来た犬のように興奮気味に部屋を歩き回ってはそっと家具に触れたりして喜んでいる。
その様子を見ているとは胸の奥から母性のような保護欲と幸せがじわじわと湧き出して来るようだった。
「これもまた奇跡だな……」
人生とは奇跡の連続である。
蒼太はその言葉を噛みしめて彼女に聞こえないくらいの声でひとりごちるのだった。
「それにしてもやっぱり人間は生命力に溢れてるのだわ! ゴーレムかと思ってかなりの生命力を使ったのだけどピンピンしているのだわ!」
「え? あ……言われてみれば腹が……ぁっ」
「そーた!?」
言われて気づいたからだろうか、それともただ単に朝食を食べていなかったからだろうか。
蒼太は急速な飢餓感に襲われ、意識を失った。
肝臓から供給される糖にも限界があるよね!
マラソンランナーのラストみたいな感じかな?