第一章 一話 ルリアス
昔々、Grimonautsという亜人がいました。
゛ソレ゛は長年続く人間と魔族の戦争を終結するため魔王を討伐、
世界には平和が訪れ、彼は英雄となり、神の世界へ迎えられました。
これは、そんな童話に憧れた少年ルカのお話。
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829年
7才の頃の話
その童話に憧れていた僕は、魔王が復活したことを聞いて
ある夢をもった。
「英雄になりたい」
誰でも持つような平凡な夢だった。
それを父親に話すと、とても喜んでいたのを今でも覚えている。
軍を退役したお父さんに剣を教えてもらい、
村の教会にある神父に゛女神イリアスの加護゛を受け魔力を微力ながらも授かった。
その夢を碇に、修業を続けた。
そして今僕は15才になり、「旅立ちの年齢」を迎え、村を飛び立つ。
清々しい朝だった。
おはよう母さん、
僕はいよいよ今日勇者として旅立つよ…
もうしばらくこの家には帰ってこない、そう思うと感慨もひと押しだ。
でも今は寂しさより希望で胸があふれていた。
魔王討伐!英雄ルカ!世界平和!モテモテ!
いや、あくまで魔王退治が目的なんだけどね?
まあ、多少はね。ね?
魔王退治までもうしばらく戻ってこないんだし…
僕はいそいそと掃除を始めた。
お金よし、剣も研いだし…
準備はできた。多分。
「…それじゃあ、行ってくるよ。」
僕は今まで住んでいた家に挨拶し、ドアを閉めた。
村から出て、一本道を通り森を抜ける。
森といっても小さな方で、凶暴な魔物もいない散歩道のような場所だ。
小鳥の鳴き声、風の音、木々の匂い…
全てが僕を祝福しているようだった。
調子に乗っている。いや今は浮かれていよう…その方が楽しい。
森を抜け、王国-イングランドに着いた。
王国イングランド…そこは魔王の住んでいる島に近いため、
防衛の集中している王国である。魔王には表立った動きがないので、
今は緊張が薄れているが、八年前の魔王復活が知らされた時は緊迫状態だったそうだ。
魔物の住んでいる島に近い…というところを除けば文化の発達しているいいところである。
昔、異世界人を名乗る人物の持ちこんできた知恵により文化の急速な発展が起こったのだとか…
ゲェムやらオフロ、スクミズ…
ただ、イングランドは貴族が多く、なんでも自分たちだけ潤いたいらしくその技術を外に出そうとしたくないらしい…
王国もその貴族たちのお金で防衛を組んでいるので貴族と仲の良い関係が望ましいのだとか…
まあこの国の諸事情は置いておきやることを説明しよう
本来ならここで勇者ギルドに加盟、依頼をこなしていき実力をつけ、
名声を得て稼いだお金で武具を揃え、仲間を集めてパーティーを編成し魔王討伐への準備をする…
というものなんだろうが
僕は王国内に入り、勇者ギルドの勧誘所がある場所に来た。
だが僕はギルドに悩んでいた。
…ギルドが多すぎるのだ。
クランが多すぎて入るのに迷った結果、身内クランかソロプレイヤーになってしまったといえば分かるのだろうか。
とりあえず入団金の低いギルドに入ろうか…
いや、やっぱり人数の多い所か?
お金は依頼をクリアすれば入ってくるんだし、
所持金の三分の二を失ってでも実力のあるところに入るか?
いやでもなぁ…
僕はギルド勧誘の掲示板とにらめっこしていると、誰かが声をかけてきた。
「おいそこのキミ」
ふりむくとそこには明るい黄色いツインテールの髪型に赤い目をした女の子がいた。
正直、同年代の少ない村で育った僕には野良のボス猫に睨まれた子猫の気持ちだった。
「なんでしょうか…」
「たしかにそこのギルドは実力もあるけどガラは悪いわよ。やめといたほうがいいわ」
「なるほど、ありがとうございます。いやぁ僕いなかものd」
「入るなら私のギルドに来なさいよ」
「え?いや、えぇ…」
いや、今どういう状況だよ。つうかキミ誰だよ。かわいいけど胸は
「ぺったんのくせに」ボソッ
やっべ口に出た
「え?今なんか言った?」
「いえ、なんでもないです。それよりどうして僕を?」
「気まぐれよ、気分が良かったの。迷ってるキミを見て助けてあげようかなって」
怪しい…絶対ランク低くて人数だけでも確保するとかいうアレだろ
「えっと…ちなみにギルドランクは?」
「B+よ」
…どうしよう、本気で考えようかな
ギルドランクというのはまあそのままギルドのランクで、
ギルドメンバーが功績をあげるとギルドポイントが加算され、
ランクがあがっていく。ランクは下から
C,C+,BB,B,B+,A,S となっている。
平均的なギルドをBBとする。そこからBにするには危険度の高いモンスターが比較的多いとされているイングランド王国東部にある森に一人で行って帰ってこれるような人間が十数人いても難しいのだとか…B+て…さっき見ていた掲示板にもBが1,2個ぐらいしかなかったのに…
あれ?そういやさっきB+のギルドなかったくね?詐欺か…?
「もしかして嘘…ついてません?」
「はぁ?」
「さっきB+のギルドの勧誘チラシ、ありませんでしたよ?」
「それは勧誘なんてしなくてもいいからよ。まあ疑いたい気持ちもわかるわ」
じゃあなんで今僕を勧誘しているんだよ…
「うーん…」
「ああもうじれったいなぁ!あんたうちのギルド入る。依頼受けれる。あんたシアワセ」
「僕、ギルドハイル、シアワセ…」
「分かればいいわ」
「分かってねぇよ…まあいいや。ていうか僕戦闘経験0なんですけど」
「いいのよ、丁度資材調達係がギルド脱退したから」
あぁ、なるほどね、雑用ね。
でも依頼の幅が広がるのはいいことだよな…
「その…入りたいです。」
「急に下手に出てきたわね…。まあいいわキミを私のギルドにいれてあげるわ」
わーい。喜んでいいのか分からねえ。これなら平均ギルドでわいわいするのも…
いや、この子がちょっときついだけ。うん他の人は優しいと信じよう。
朝に家を出て、日も沈んで来てお腹もすいていたので、思考回路が停止していたのかもしれない。
「そういえば名前聞いてなかったわね。キミ、名前はなんていうの?」
「ルカだよ。ルカ・グリアス」
「いい名前ね。私はアイン・ルリアス・グレイよ。アインでお願いね、ギルドの名前は゛ルリアス゛よ。あと…」
でたよ自分の名前そのままギルドとかにつけるやつ…
「あと…?」
「次ぺったんっつたら埋めるぞ」
…きこえてたぁ
Grimonautsの一話をお読みいただきありがとうございます。
更新ペースは不定期ですし、私にとって第一作目ですので
お見苦しい点が多々あると思いますが
温かい目でご覧になっていただけたらと思います。
ps,ルカに変換しようとすると、ル科になる。告訴
(ノ)・ω・(ヾ)では。
~言葉の説明~
異世界人による発展でいうところの゛ゲェム゛はチェスや将棋、オセロなどといったテーブルゲームの類とお考えください。
旅立ちの年齢…女神イリアスの加護を受けたものが15才になると、勇者と認められ旅をすることが許されます。
軍を退役したお父さん…軍というのはイングランド王国の騎士ということにしといてください。
ルカの発言に依頼の幅が広まる…とありますが、
依頼の難易度には14段階あり、ギルドのランクに合った依頼しか受けることができないシステムになっています。個人のスペックではなく、ギルドのランクに合わされます。