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雷神様の人助け  作者: ミタ
第一章 始まりの場所
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二人の会話

村で雷神とジャルトが相まみえた頃・・・・


完全に蚊帳の外に置かれたルドとエミルは、雑木林の中をひたすら歩いていた。

一キロと言っても、木が密集している樹海の中を歩くのは想像以上に過酷だ。

自然の創りだした障害の数々は、ただでさえ機嫌の悪いエミルの虫の居所をさらに悪くする。


「あの・・・エミルさん? 大丈夫ですか?」


エミルから漂う負のオーラに負けたルドは、先程からエミルに対しての口調がやたらと丁寧だ。

すると、今まで一言も発さなかったエミルがふと後ろを向くと、ルドに尋ねた。


「そう言えば、ルドに知り合いの神族とかはいないの?」


それを聞いたルドはしばらく考え込むと言った。


「俺は結構いるぜ。大体の人間派の神族とは仲が良いからな。むしろ問題は雷神だよ」


「まぁ確かに、雷神様は神族の方から嫌われているって聞いていたから分かるけど・・・・そんなになの?」


すると、ルドは少し悲しそうな表情を浮かべながら言った。


「周りから嫌われているのもあるけど、アイツが毛嫌いしている神も何人かいるんだよ。そういう意味ではアイツもかわいそうなんだよなぁ・・・」


「何で? 雷神様は最強の神なんでしょ? だったらむしろ敵がいないわけなんだから誰かを一方的に毛嫌いすることは少なくなるんじゃ・・・・・」


だが、ルドは首を振ると言った。


「神族ってのはな。とにかくいろんな連中が居るんだ。俺たちみたいに人間族に近い容姿をしているのもいれば、むしろ獣に近い容姿をしている奴等だっている。確かに雷神はアウトラセル城に幽閉されたことを除けば、誰かを必要以上に毛嫌いすることは少ないさ。でも逆に言えば、雷神が嫌っているその数少ない神はそれだけ雷神にとっては嫌いなんだよ」


「じゃあその嫌っている神はどんな神なの? その人たちはルドにとっても嫌なわけ?」


するとルドは少しだけ悩むようなしぐさを見せる。

だが、「仕方ない」とでも言うかのように溜息をつくと、静かに言った。


「正直言って、アイツが嫌いな神は俺も決して好きなわけじゃない。特に「人間派」の神だったら殆どの奴らが嫌うと思うぞ」


「じゃあ・・・具体的には?」


「・・・・・レガリア大陸にいる神でアイツが嫌っている奴と言えば、『魔導帝』ザクロだろうな。二万年前からザクロに対してはずっと敵対心を持っていたよ、アイツは」


それを聞いたエミルは、思わず足を止めた。

ザクロという名前は、人間派のリーダーとして長年戦ってきたエミルにとっては聞き慣れたものだったからだ。


『魔導帝』ザクロ。

魔術を主体にして戦う神族であり、その圧倒的な火力によって人間派の神族でも何人かが葬られている。

「神族派」の神でも最高クラスの戦闘力を誇り、現在はレガリア大陸全土を統括する総指揮官である。

残虐さと凶暴性を併せ持ち戦闘を好むことでも有名だが、飽きっぽいことでも有名で、戦い以外では神族の女を侍らせて贅沢の限りを尽くす悪癖がある。

炎系統の魔法に精通し、ザクロの通った場所は塵一つ残らず万物が燃やし尽くされるというのはとても有名な話だ。


「ザクロがこのレガリア大陸に!? 一年前までは戦場で暴れまわっていると聞いていたけど・・・」


「あの野郎は面倒くさいことを嫌うからな。どうせ戦場で戦うのに飽きて、贅沢三昧でもしてんだろ」


だが、エミルは一つだけ腑に落ちない所があった。

雷神がザクロを嫌っているということは理解したものの、元々筋金入りの「自由派」だった雷神がザクロを嫌うには今一つ決め手に欠ける気がしたからだ。

戦いを好んでいたのは雷神も同じだし、意外とピュアな部分がある雷神が、女云々の話をそこまで深く知っていたとは思えない。


「でも雷神はザクロの何所をそんなに嫌ったのかしら・・・・」


思わず、エミルは呟いた。


するとルドは、完璧な無表情でエミルに近づくと言った。


「ザクロの悪癖は色々知られているが、恐らく『一番ヤバい』悪癖はあまり知られていないんだろうな。まぁ、それも仕方ないとは思うぜ」


随分と含みが多い発言だ。


「教えて。一体雷神様はザクロの何所を嫌ったの?」


エミルはストレートにルドに尋ねる。

するとルドは周りを軽く見回し、辺りに誰もいないことを確認すると、エミルに囁いた。


途端に、エミルの表情が青ざめる。

ルドがエミルに全てを話し終わったころには、エミルの顔色は死人のような白になっていた。


「そんな・・・・なんてことを・・・・」


「ザクロが雷神から嫌われている理由はそれさ。だから・・・・エミルも気を付けてくれ」


ルドは静かにそう言った。

しかし、エミルの動揺は収まらない。

それほど、衝撃的な物だったのだ。


すると無意識に歩いていた甲斐があってか、雑木林を抜け、その少し先には村の入り口のようなものが見えて来た。

エミルとルドは服に着いた葉っぱや木の枝を落とすと、村の入り口に向かう。


「やっと着いたか・・・・アイツ面倒事を起こしてなきゃいいけどな・・・」


「・・・・そうね」



因みに雷神がジャルトと相まみえたのは、エミルとルドが雑木林を抜けたのとほぼ同じである。

面倒事に愛された神は、二人の願いなどお構いなしのようだ。

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