元ニートに働けというのですか?
「えっと・・・よく意味が分からないのだが」
「お客様の理解力はブロウム以下でしょうか?リカルド様も困惑しておられます」
「ブロウムって何か分からないけど罵倒されたのはなんとなく分かる」
「ハッハッハハー、じゃあもう少し分かりやすく説明してアーゲヨウ。この領地は魔法魔術街として栄えてる都市があるノダヨ。しかーし、その一方で発展のしていない場所とか使われていない土地がたくさんあーるのだよ」
「つまり、俺にその発展のしていない地域を発展させて、この領地を豊かにしろってことだな?」
「まあ、端的にいえばそのとーりダネ。あとは領地内の警護ダーヨ」
「はいそこストップ! その領地の警護ってのがよく分かんねーんだよ。リカちゃんでもそのくらいは出来るんじゃねーの?」
「リカちゃん という呼び名・・・なかなか良いセンスじゃあないか」
「リカルド様は魔導八柱聖の1人です。強さで言えばお客様の数億倍強いです。しかし、領主という立場や、ギルドマスターとしての立場で領地にいる時間が少ないのです」
「リカちゃんってあのギルドのマスターだったのか?」
「あのってキリトくーんを保護した街のギルドかな?残念だーけど、あそこは商業ギルドなーのね。私がマスターのギルドは討伐系の依頼が多い 一般的なギルドダーネ」
商業ギルドとは物流、仕入れ、採集の依頼、情報交換の中心となるギルドらしい。勿論、植物の種類さえも分からない俺には到底無理だ。
魔導八柱聖とは、周辺諸国が加盟している魔導評議会の定める優秀な魔法魔術師8人の事らしい。
また、ブロウムが猿とチンパンジーとゴリラを足して3で割った知能の低い魔物だということを霧斗が知るのは数日後だ。
「で、俺は魔法も使えないし、武術も知らないぞ?そんな俺に警護なんて務まるのか?」
「安心しーなさい。ちゃんと手は打ってあるのダヨ」
「リカルド様、セルシア様を教育係にするのですか?」
「そうだヨ、セルシアほどの適任はいないノサー」
「セルシアって誰だ?」
「お客様、セルシア様、です。『様』をつけなさい。セルシア様は魔導八柱聖の1人ですよ」
「いいじゃあナイカ!セルシアは『様』付けはあまりして欲しくないようだヨ?」
「じゃあ、これから数日間は魔法の練習をシーテもらうよ〜。この数日間は多分死ねるから気をつけるのダヨ!」
他にも色々と話しながらデカイ屋敷の中のドアを一つ一つ確かめて行った。
「へぇ、さっきのメイドの子 ルイカって言うのか〜」
「可愛いカラって変なことは考えないホーガいいネ。あの子も一応魔導八柱聖だからネ」
「はい? えーっとつまり?」
「ウン!こーの屋敷には3人以上の魔導八柱聖がいるってことだネ!」
「・・・・マジかよ」
そこまで話し合えたら急にリカルドは一つのドアの前で止まった。
「さあ、ここだね」
「何がだ?」
「セルシアのいる部屋ダァネ。ほら開かないだろう?」
ドアノブをガチャガチャするが開かない。
それどころか押しても引いても音の一つもしない。
「『力の神よ。我に力を貸し給え』ソオレッと」
〔ドーンッッ〕
リカルドが呪文(?)を唱えたあと思いっきりドアをぶん殴った。
「おいおい、リカちゃん!流石に壊すことないでしょ!」
「うーん。コーノ程度で壊れてくれたら本当に楽なのにネェ」
〔ガチャリ〕
リカルドがドアをぶん殴った数秒後 ドアが開いた。
「うるさいわ。呪うわよ?」
ドアから出てきたのは黒髪で、肌は色白、喋り方にはあまり感情のこもっていない、ゴスロリ姿の少女。
「やーあやあ、セルシア。たまには引きこもってないで出てきたらどうだい?」
「引きこもっていてもドアを殴り続けて無理やり出させるくせに。よくもまあ そんなことが言えたものね。 それで、何用かしら?」
「こーちらの後藤霧斗くーんに魔法を教えてあげて欲しいんだけどナァ」
「・・・・・良いわよ。けど、私について来れるのかしら?」
「ウーン、無理だと思うヨ☆」
「うるせぇ!何がなんでも付き合ってやらぁ」
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約5分後
「ゼーッ ゼーッ ゴホッゴホッ ハー ハー。まだまだぁぁぁぁ・・・・・」〔パタリ〕
「口程にもないわね。全然ダメじゃない」
「お客様、こんなところで寝られたら困ります。さっさと失せろください」
「お……お...ぅ」
やはり、何かが違う。魔法くらいチート特典として付けてくれても良いじゃないか・・・
そんなことを考えてるうちに視界は真っ暗になった。