(自宅の)外の世界は良いものですか?
「うーん。魔法も使えない、ヒロイン的存在と出会えてもない、 文字も読めない。この都市は大き過ぎて全体を回ることはできなさそうだ。となると一旦出て他の場所を探すべきかな?」
「おい、そこの坊主」
「この『レベルの引き継ぎ』と『ステータスの追加』も気になるな」
「おい!聴いてるのか!?」
「は、はいっ?何でしょうか?」
「ブツブツうるせぇよ!考え事なら組合か酒場でやれ!」
「ギルドって?」
「お前、ギルドも知らねぇのか?ギルドはこの路地を三つ越えたとこに広場がある。その近くに馬鹿デカい建物がある。そこがギルドだ。」
「ありがとよ、おっさん!」
「てか、坊主 何者だ?この辺でギルドを知らねぇなんて異国人か?」
「いや、何も分かんねぇから今は情報収集中だ」
「金はあるのか?」
「俺は無一文だぜ!」
「あぁ、ダメ人間か。金が必要ならちょっと頼まれてくれねぇか?」
「いや、ギルドに行ってガッポリ稼ぐから遠慮するわ」
「ギルド登録には500ルッツ必要だぞ。無一文の坊主には無理だ。だから頼まれろ」
この世界のお金の単位は『ルッツ』なのか
やっぱり元の世界のお金は使えないのかな?
「・・・・・・分かったよ。何すれば良い?」
「クラーダス薬店にこれを運ぶのを手伝え」
「クラーダス薬店?」
「おいおい、無知にも程があるだろう。クラーダス薬店って言ったら冒険者でも軍隊でも商人でも一般人でも知ってるくらい有名だぞ」
「そうなのか?」
「まぁ良いか。坊主もギルドに入るつもりなら覚えておいて損はないぞ」
「クラーダス薬店ね。ゲームの展開でいけばクエストの予感がするし、絶対に使うことになるな。ラノベの展開ではあまり無いな。えーっと…」
「ブツブツうるせぇぞ。 ほら、あれを運ぶのを手伝ってくれ」
指を指してる先には茸や葉っぱが入った木箱が二つあった。
「これを運べば良いんすね?」
「ああ、助かるぜ。2往復は最近キツくてね」
「そうなんすか。おっさんは何の仕事してるんだ?」
「俺は仕入れ屋と八百屋をやってる。今日はクラーダスって奴に中位治癒薬の材料の仕入れを任されたんだよ」
「大変だな」
「無一文のお前に労われるほどの事でもねぇよ」
数百メートルくらい歩いたところで止まった
「ほらよ着いたぞ。 おーいクラーダス! 頼まれてたもの持ってきたぞ」
「はーいちょっと待ってくださいね〜」
可愛い女の子の声が聞こえた。
「お待たせしました。お父さん今居ないから代わりに受けとるわ」
「久しぶりだなエリスちゃん」
銀髪少女キターー!!
ヒロインか? ヒロイン展開だろ!!
3次元にこんな可愛い子が居るのか!
「久しぶりです、フランクさん。その方は誰ですか?」
「こいつは・・・そういえば名前聞いてなかったな。俺の名前はフランクだ。お前の名前は?」
「俺は、後藤霧斗だ」
「キリト?変な名前だな。やっぱり異国人か?」
「確かに珍しい名前ね。よろしくねキリトさん」
「よ、よろしく」
ここまで2年間も引きこもりの自宅警備員のコミュ力を恨みたいと思ったことはない。
「エリスちゃん言っとくがそいつは無一文だぞ」
「言うなよおっさん」
「まあ入ってくださいフランクさんと霧斗さん」
中は想像した通り、変な機械と大量の瓶、赤い液体の入ったもの、青い液体の入ったもの、緑の液体の入ったもの 他にも色々。
いかにも怪しいって感じの薬屋だ。
「そんなに珍しいか?霧斗」
「ああ、見たこと無いものばかりだな」
「そりゃそうだ。一般人はこの中にあまり入ることはねぇからポーション製造の機械が珍しく思うのも普通か」
俺が珍しいと思ったのは普通にポーションの方だけどな。機械はどちらかというと中学校の時に行った工場見学で同じようなものを見たことがある。
「はい、フランクさん、お金です。足りてますか?」
「おお、足りてるぜ! もうクラーダス必要ねぇんじゃねーかってくらい完璧になったな」
「いえいえ、お父さんが居ないとまだポーションも綺麗に作れませんし」
一通り話が終わったらしく元の場所に戻った。
「ほらよ、約束の500ルッツだ」
「ありがとな」
「これからどうするつもりだ?」
「とりあえずギルドに行くつもりだよ」
「そうか、それと一つ聞いて良いか?」
「いいぞ、この無一文の俺に分かることならな」
「・・・・・やっぱいいや、気をつけろよ坊主」
「ああ、また来るぜフランクさん」
「おう!何かの物入りの時は是非俺の店で買っていってくれよ。またな!」
「おーう」
「あいつは何者なんだ? あの魔力量・・・・ただ者じゃないな、あのキリトとか言う坊主」
「よーし順調 順調♪ 異世界生活も良い感じだな。ヒロイン候補のエリスちゃんとの出会いもあったし、これからが楽しみでしょうがない!」
俺はフランクさんからもらった500ルッツをしまってギルドへ向かうのだった。
次回の投稿もお楽しみに。