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収集癖

作者: 赤口

 不思議なものだ。私には収集癖がある。一つのものを手に入れると、もっと欲しいと思ってしまうのだ。収集癖が芽生えた出来事も覚えている。ある推理漫画がきっかけだ。

 おそらく私が小学校3年生の頃であろう。親からお小遣いをもらい、本屋に行った。当時の私は本屋でコロコロコミックや週刊少年ジャンプは買ったことがあったが、単行本は買ったことがなかった。友達の家に遊びに行くと単行本がたくさんあることが気になっていた。そろそろ自分も単行本を買っても良いだろう。そう思って1冊の単行本を持ちレジへ。お金を支払い、家に帰るとすぐに封を切り早速ページをめくった。本屋で買ってきたものは、名探偵コナンの10巻である。特に1巻からというこだわりは当時はなかった。月刊誌や週刊誌で漫画を1話からではなく途中から読むことが当たり前のようになっていたためであろう。途中からの話でも楽しめた。しかし、この楽しみ方は決して漫画の内容を楽しんでいるのではない。

「これが単行本か!薄いし小さい!」

 漫画の内容も多少は楽しんでいたかもしれないが、本当に楽しんだことは単行本を手にしたという感覚である。正直言うと、いきなりコナンの10巻を読んでも当時の私では事件の内容が全くわからなかった。そして、単行本を手に入れた感覚がまた欲しくなり、次に買ったのがコナンの4巻である。10巻の事件が気になるのであれば、9巻かもしくは1巻から順番に読むべきである。しかし、当時の私は4巻を買うという理解し難いルートをたどったのである。単行本を買うことで満足しているのだ。

 しかし、まだ足りない。友達の家で遊ぶと自分の環境と比べてしまうのだ。単行本の量の違いはあって当然だ。単行本を買い始めた時期が友達のほうが早いのだから。ただ比べたのは単行本の量ではない。揃えかたである。本棚の左から1巻、2巻と順番に並べられているではないか。私は本屋に足をはこび、コナンの1巻を買った。少しずつ買い、1巻から4巻まで揃ったときは、パズルを作り終えた感覚に似たものを感じた。これが快刺激となり、集めることの楽しさとなったのである。気づいた頃には家に大量の漫画があった。引っ越しの際に全部持っていくこともできないので、古本屋へ売ってしまった。売る瞬間、正直言うと非常につらかった。そして、もう集めるのはやめようと思ったのだが、今でも集めることが好きである。

 一度集めることの快感を知ってしまうと、もうこの快感なしの生活が想像つかないものだ。

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