そこはもう日本だろうが。
タイトルの日本は(にっぽん)と読みます。
そうするとほのかに語感が良くなります。
泣き叫ぶ乗客。
激しい振動と轟音を鳴らしながら落ちていく飛行機。
田中 一生 17歳 高校中退の童貞男である俺も、乗客の一人だ。
……俺は泣き叫んだりしない。
不幸には慣れてるし、これ以上生きたいとも思わない
なんかいろいろ疲れた。
今期のアニメも終わったし、ちょうどいいタイミングだ。続きが気になる漫画もあるけど、もういいだろう。
これで終わるんだ。
飛行機の窓から水が見える。
海はもうすぐそこだ。
……せめて飛行機に乗った目的くらいは果たしたかったが……
……それも叶わない。
仕方ないな。
ぐっばい。世界。
なかなかに悪い、ヲタク人生だったよ。
「――――――――――――――」
「…………………………?」
俺は飛行機の墜落の際、目を瞑っていたのだが、いつまで経っても墜落の音が聞こえない。
あれ? 俺生きてる?
それになんか瞼の奥が明るいし、ガヤガヤとうるさい音が少しずつ聞こえてきた。
…………外?
俺は瞼を開けた。
「―――――――な」
目の前に広がっているのはまさに中世の世界だった。
馬の代わりにトカゲのような生き物が馬車をしており。
建物も見渡す限り茶色の木と煉瓦でできている。
街の人間の髪の色も緑とか青色とか明るい色ばかりで、黒髪がいない。
空を見上げても東京と違い空が広い。
「これは……まさか…………」
念願の。
「異世界転生キターーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
うおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!
まじかまじかまじかまじかぁぁぁ!!!
こんなこと本当にあるんだ!!異世界だ!!すげえ!!
え……じゃあ俺ってこの後アレ?この世界で活躍しまくる主人公みたいになるの!?
なれるの!?
胸のドキドキが止まらない。
周りの、この世界の住民が奇声を上げる俺を不審がって見つめている。
目立つのは嫌いだが、それでも叫ばずにはいられなかった。
俺は。
特別になったんだ!!
「俺は主人公だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「お 新入りか」
「あ ヒャィッ!!」
いきなり後ろから声をかけられた俺は、不意を突かれたせいで声が裏返った。
断じてコミュ障だからではない。
「……て え?」
声をかけてきたそのマッチョを見た瞬間の動揺。
そのマッチョ。
短髪の黒髪だった。
「えっと……え? 黒染め?」
「はっはっはそうだよな俺も最初はそうなったもんだ!」
男は俺を馬鹿にするように腹を抱えて笑った。
「いやすまないすまない……」
ゴホン と男は仕切り直す。
「まずはお前の間違った認識を正そう」
「………………はい?」
「この異世界に来たのはお前だけじゃない」
……ほ?
「この街だけで言えば、人口の7割が日本人だ」
……7割?
「お前は特別でもなければ主人公でもない」
…………
俺は今どのような顔をしているだろうか。
異世界召喚モノって、そういうんだったか?
こう、俺だけがこの世界に転生されて、特別で、最強系主人公とかになったりしてこの世界の命運とか可愛いヒロインとか、そういったものを守るものじゃないの?
「だが安心しろ ここは日本よりも楽しめる場所だ」
男は両手を広げ、言った。
「帝都ヴァーリアへようこそ! 異世界ファンタジー 存分に楽しみな!」
…………
待望の異世界転生。
誰もが羨むこの状況になった俺は、それでも思わずにはいられなかった。
帰りたい。
人口の7割日本人って、そこはもう日本だろうが。
更新速度は、まあ、頑張ります。