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第5話 これが俗に言う拉致か!?

今回区切りが良かったので短めです

 状況を整理してみよう。


 殺されたと思ったらいつの間にか石になっていて、狼みたいな獣に追いかけられたと思ったら、ドラゴンに会って拉致られた。


 こんな目まぐるしいぐらいにいろいろな出来事が起きている中でも、頭の中には冷静に働く部分がある。


 私を拉致したドラゴンは、きっとやさしいのだろう。


 小学生が先生の事をお母さんと呼んでしまうときの感覚に似ている。母親と勘違いしてしまいそうな母性がこのドラゴンにはあるのだ。


 いきなり未知の世界に放り込まれて、右も左もわからない私に話をしてくれた。短いながらも話をしてくれた。まだあって間もない私を義理の娘にするといってくれた。


 そんな彼女が連れて行く場所には不安がないと言えば嘘になる。


 未知の世界に行くというのは大小さまざまだが恐怖はある。


 だが、こんな優しいドラゴンに連れていかれる場所なのだから、恐ろしい場所ではないと思う、思いたい。


 暫くの空の旅を強制的に楽しまされていた時間が遂に幕を閉じる。


 ついた場所はそのドラゴンの巨体が大きな洞穴だった。


 事前によって勝手にできた者か、それともドラゴン自身が作った穴なのかはわからないが、見事な洞穴が開いていた。


「ここに住んでいるんですか?」


「あぁ。もうここに住んで数十年になる。お、そうだ。お前に凄いものを見せてやろう」


「……?」


 平和ボケで人をあまり疑うことなく育ってきた巴笑は疑問に思いながらも素直にドラゴンの後ろについて洞穴の中を進んでいった。


 徐々に太陽の光が失われ、くやら実だけが続く丈の道となった。


 しかし、それは途端に終わりを告げる。


「わぁ」


 そこには金色があった。


 金銀財宝が無造作に積まれている正に、宝の山がそこにはあった。


 紙幣やら硬貨などしか見たことがない現代人な巴笑にとって金を一個見るだけでも驚嘆するレベルである。


 それが数えきれないほどに積まれているのを見れば口がだらしなく開けっぱなしになってしまうことの言い訳にはなるだろう。


 意識を黄金達に持ってかれた巴笑はなんとか意識を戻して隣を見れば、そこには笑みがあった。


 表情豊かな人間の姿であったならば、悪巧みを成功させた子供のような笑みを浮かべていることだろう。


「どうだ、すごいだろう? これは私が一から集めた宝だ」


 ドラゴンの言葉に巴笑は一人肩を揺らした。


「これは、どうやって手に入れたの?」


 集めたという言葉、それはいったいどういう意味なのか。


 人間の国を攻め落として略奪してきたものなのではないか、と考えたからだ。


「何、昔人間が住んでいたが今は住んでいない場所、遺跡から掘り当てたのを持ってきただけだ」


 その答えを聞いて巴笑は安堵した。


「なんだ? まさか人間の国をわざわざ襲いに行ったとでも思ったのか?」


「ギクッ!」


 考えていたことを当てられた巴笑は声に出すほど動揺した。


「ふむ、確かに私達は宝が好きだが、一々危険なところに行くことはない」


「え? 人間の攻撃って効くの?」


「何を言っている。お前の尻尾も人間に着られたのだろう?」


「あ! え、あ、えっと、そ、そうだったそうだった!」


「……」


 その時の視線を巴笑は一生忘れることはないだろう。


 二十年以上人間社会で生きてきた大人の筈なのに、まるで出来の悪い子供を見るかのような大人の視線。それはかなり屈辱であったが、同時に自分の発言の迂闊さを呪った。


 じっとこちらを見てくるドラゴンの視線に冷や汗が止まらない。


「そ、そういえば、ドラ……コホン、あなたの名前は何というのですか?」


 話題を変えようとして、ドラゴンさんと言おうとした巴笑はすぐにごまかした。


 向こうからすればこちらもドラゴンなので、変な言葉になってしまうからである。


「お、そうだな。私の名前は……なんだっけ?」


 ゴンッという鈍い音が洞窟内に響き渡る。


 あまりのドラゴンの答えにその場でずっこけてしまったのだ。巴笑に痛みはないがその地面は小さく陥没しているが、巴笑は気にしないことにした。


「あっははは、すまんすまん冗談だ。私の名前はシュクリスという」


「シュクリス……なんて意味なの?」


 それはただの好奇心だった。


 自分の名前をほめてくれたため自分もほめようと思ったから聞いたのだ。


「破壊だ」


 聞かなければよかったと思った。


「私の親はなんでも昔人間に深い傷を負わされたなのだと。いつか人間共を絶滅させてやる! とか言ってたから、その影響だろう」


(絶対に人間だってばれちゃいけない。絶対に!)


 再び決意を固める巴笑であった。


 忘れてはいけないが、巴笑は人間ではなく石である。

「うん? あぁ、来たか」


「来た? いったいなにが、っ!」


 種クリスの不審な動きに疑問を投げかけた時、地面が揺れた。


 自身のような継続的な揺れではなく、大きな何かが地面に落ちたような一瞬の大きな揺れ。そしてその揺れを起こした原因の大きな音。


「トモエ、今から教えることがある。ついてきなさい」


「え? あ、は、はい!」


 一人、いや一匹で勝手に入口へと戻っていくシュクリスの後を急いで追いかける。


「え、あ、はは、あははは……」


 入口までくると巴笑の口から乾いた笑みが零れ出る。


「……」


 そこには巨体がいた。


 隣にいるシュクリスと同じほどの大きさの赤いドラゴンがこちらを凝視している。


(え、何? 喰われるの? 私、食べられちゃうの!?)


 未だ上から凶悪な顔で眺められるのに慣れていない。というか慣れたくない。


 そして、最強の肉食爬虫類に見られているのは心臓に悪い。


 今の私に心臓があるかどうかは分からないけど。


「ワ、ワタシハオイシクナイデスヨォ」


 無害を演じ、さり気なくドラゴンの小長たる翼を動かす。


 自分は何もできないただの子供ですと、冷や汗をかきながら相手の出方を見る。


「……」


 無言、ひたすらに静かな時間が流れる。それと比例して巴笑の冷や汗が増えていく。


 爬虫類独特の縦に裂けた瞳孔と巴笑の動揺しきった瞳が見つめ合う。


「……」


「……ぁ、はは、はははは、はぁ」


 ドラゴンは動かず、巴笑は蛇に睨まれた蛙の如く動けない。


 しばらく見つめ合った後、ドラゴンが口を開く。








「どうも、回覧板で~す」

「ずこぉおおお!」


 巴はその場で勢い良く地面にヘットバットを食らわせた。

巴「なんで私ドラゴン? 賢者要素はどこ?」

作「ドラゴン主人公が描きたかった。後悔はしてない。賢者要素はもう少し後になるだろう」

巴「早くブッパしたいなぁ」

作「ブッパ!? 巴笑……恐ろしい子(恐)」

シュク「それでこそわが娘だ! さぁ、人間を皆殺しに」

巴作「「しない!」」


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