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魔導王朝の斥候?とネックレス

おもいっきり夏を満喫してしまいました、今年は海は行きませんでしたが新しいスポーツにのめりこんでしまいました。すいません。

 「えーとなになに、騎士学院は6月から12月までで一学期で、新年のお休みが終わったら1月10日から二学期で5月までが二学期と」

今更何を読んでいるのかと言えば騎士学院のあら方の年度予定表を見てたりする。

どうやら、日本とは違って6月1日から新年度の様だ、入学式の前の日が実は俺の誕生日だったらしく、まあ要するに5月31日が俺の誕生日でメイアリアが6月2日が誕生日みたいだ、しまったー何もあげてなかったー><

レイボルグが昨日は誕生日だって言ってたのが聞こえてたのに、色々あって何にもあげてねええー、やっぱし、あれか、織覇瑠金オリハルコン

アクセサリーでも作るかなーうーん、でも、実際錬金術師にいくら取られるか判らないし、誰かに着いてきてもらったほうが良いのかなー、やっぱ一人しか居ないよなー魔法とかに詳しくて誘えば来そうなの・・・。

でも二人で行って迫られたら面倒だし、でもデートはするって言ってるからしない訳にも行かないけど、メイアリアのプレゼントを買うのに着いてきて

くれるか非常に微妙だなー・・・。

 そんな事を悩んでいると、メイアリアが学院の行事予定の冊子を見てるだけの俺がうんうん唸っているのを見つけて、声を掛けてきた。

「殿下、どうなさったのですか?そんなに悩まれて??」

「うーん。」

「そんなに、行事予定で改正すべき点がございますか??」

うおい、そんな事さっぱり考えて無いよ、君の事よ君の事!!

「そうゆうわけじゃ無いんだけどね、なんか、もうちょっと面白いイベント欲しいかなってさ。」

「面白いイベントですか??」

「そうそう、なんか学院のお祭りみたいなのが無いかなーってさ。」

メイアリアは驚いている。

「騎士学院でお祭りですか?」

「どういった事をお考えですか??」

「いやさー、皆でクラスごとに屋台出したりして食べ物売ったりさ、楽器の演奏とか、演劇とか、それこそ舞踏会なんてのも良いんじゃないかな?」

「舞踏会ですか!凄く良いと思います!!」

「女性騎士とも成ればそれこそ毎日の様に夜会等が有るでしょうからその練習も兼ねて、とても良いと思います!」

おおーなんかめっちゃ食いつき良いんですけど。

何と無く無さげのイベントの話ししただけだったんだけど・・・。

こりゃあ、騎士学院祭開かないと収拾つかないテンションの上がりっぷりだなーおい・・・。

そんなこんなを考えてるうちにメイアリアは、

「理事長と教員に提案してきます。」

と言って部屋から出て行った。

 メイアリア、仕事が速すぎるよ、俺、着いていけないよ。

まあ、丁度メイアリアと別行動できる様になったから良しとするか。



 んで図書館、

「アレイクさんさー。」

「はい!?何でしょう殿下。」

俺がいきなり名指しで話しかけるとは思って無かったみたいで、驚いて居るが。

「錬金術師とか知ってる??」

「はい、勿論存じ上げて居りますが、何か作りたい物でもございますか??」

うーん素直に言っても教えてくれるかなー、でも正妻ではなく妾で良いって言ってたし、平気かなー。

「実は、メイアリアの為にアクセサリーとか作ろうと思うんだけど、ちょっと二人で錬金術師の所まで行ってくれないかなーって思って。」

「そ、それは・・・、デ、デートですか?」

「まあーそうなるけど、魔導学とかに詳しいって言ってたからさ、なんかメイアリアに効果的なアクセサリーが判らなくてさ。」

「そうですね、たとえメイアリア様へのプレゼントを買うためとは言え、デ、デートには変わらないのでお供させていただきます。」

「そうかーよかった、アレイクさんて結構大人なんだね、ちょっと、認識改めないといけないね。」

途端にアレイクは顔を真っ赤にして俯いた。

「そ、そんなことは御座いません。」

って言ってるけど、こういっとけば、変な事は起きないだろう。

 俺って腹黒いな・・・。

「じゃあ、取り合えず錬金術師の所に行こうか??」

「はい、畏まりました。」

俺は校庭でアレイクさんを待たせ寮から織覇瑠金オリハルコンを、でかめの袋に入れて持ってきた。俺の意図がわかっていたようで、メイアリアのブラックドラゴンが降りてくる。

『殿下も中々隅に置けませんな。』

「まあ、一応さ、メイアリアには色々教わってるし、実際大怪我とかされたら多分、俺、戦えなく成っちゃうし。」

「そうなのですか?」

とアレイク。

「多分だけどね、まあ、防御系のアクセサリーか攻撃特化のアクセサリー作れば平気だと思うけど。」

「判りました私も知識の限りを尽くします。」

まあそんな感じで俺とアレイクさんは、メイアリアのブラックドラゴンで錬金術師の店が有るシルバーンの市街地に向かった。



 シルバーンの市街地の上空に差し掛かると、なんかきな臭い匂いがする、暫く行くと街で火災が起きている。カエサルさんは既に到着している様だが火の勢いが強すぎて手間取っている様だ。

「殿下、此処はお任せ下さい、ブラックドラゴンさんは、雨雲をお願いします。」

『任せよ。』

ブラックドラゴンを中心に雨雲が集まり始める。

どうするんだろうと思ったのだが、アレイクは、ドラゴンから飛び降りると雨雲からかなりの量の水を引き出し火災現場に叩き付けた。

見事だ。

 正直此処まで騎士として優秀だとはぶっちゃけ思って無かった。いや今のは魔法か(汗)

アレイクはブラックドラゴンが集めた雨雲からどんどん水の玉を落とし火災をあっという間に鎮火させた。

「アレイク殿、ご助力感謝致します、どうも私の能力では火災とは相性が悪いので困ってました。」

とカエサル。

「そんなことはございません、ブラックドラゴンさんが居たからですよ。」

そんな、やり取りを見ていたが俺はアレイクさんの認識を本当に改めなければいけないなと痛感した。


 どうやら、火災自体は負傷者もなく建物を修復すれば済む程度だった。

元々シルバーンは石造りの建物が多いので、たいした被害に成らずにすんだ様で。

「ハーク殿下もアレイク殿に魔導理論を教わると良いですよ。」

そういい残しカエサルさんは、自分の家の方の空間を斬って帰って行った。

「なんか、今日はアレイクさん連れてきて正解だったみたいだね。」

俺は素直に賞賛した。

「そ、そんな、照れます殿下。」

なんか微妙にもじもじしてるぞ、まさかこの人も乙女なのか??

アレイクさんも黒龍皇朝系の血筋らしいけど、黒龍皇朝って乙女、量産してるのか??


 まあ、そんなアクシデントも有ったが錬金術師の店の近くの広場に降り立った。

「ここは、私がよく知っている錬金術師なので、問題は無いと思いますが、殿下の作りたい物次第ですね。」

「うーん、でも実際さ、おれ魔法とかあんまし詳しくないからメイアリアにあげるのにどんな効果のアクセサリーあげれば良いのかわかんないけど。」

「そうですね、ダブルスペルなんてどうでしょうか?」

「ダブルスペル??」

「はい、完全に攻撃特化なのですが、ワイヤードランスの投擲は魔法を詠唱して放つのと同じだという事は学ばれましたか?」

「ああ、それはこの前メイアリアに教わった。」

「この、ダブルスペルの装飾品を装備すると、ワイヤードランスが二回投げられます。」

ん?

「二回投げるって言っても、一個目が飛んでってるのにもう一回投げれても無駄なんじゃないの?」

「ちょっと、説明が簡単過ぎましたね。」

「投擲して飛んで行ったワイヤードランスに飛んでる速度からさらに投げられると言えば判りやすいでしょうか?」

「うん、今いち判らないけど、飛んでるワイヤードランスがその速度から加速するってこと??」

「はい、そうです実際そこに行かなくてもワイヤーで繋がってますので、ダブルスペルでさらに投げた状態が作れるわけです。」

おお、そいつはすげえ。

『それは完全に攻撃特化だのう。』

「そうですね、ですが、メイアリア様の、ワイヤードランスは、初速が時速5000キロほどですのでそこから空気抵抗などで4800キロまで落ちた状態からまた時速5000キロが足せる事になりますね。」

むむ?!

「結果的に時速9800キロから低気圧で有れば時速10000キロが出ますね。」

「ちょっと、速さの想像がつかないんだけど・・・下手すると速度が二倍に成るって事??」

「要約するとそうなります。」

『ガハハハハハハハ、そうなれば破壊力は下手をすると、小島が吹き飛ぶぞ!面白い、そのような様をワシは見たいぞ!!』

なんか激しく危険な話に成ってきたけど・・・まあいいか、魔導王朝の事も有るし。

 可哀相、魔導王朝・・・。

それこそ本当に一撃必殺に成りそうだ。

 ブラックドラゴンさんは通りが狭い上に暇なんで上空の警戒に飛び立った。


 狭い上にあからさまに怪しい路地を暫く入ると変な形の気味の悪いドアが有る建物の前に着いた。

アレイクは躊躇無くその扉を開けた。

「こんにちはー。」

「いらっしゃいませ、あら、アレイクいらっしゃい。」

「久しぶりフルニ。」

「ダブルスペルの何にしますか??」

「なににって、ああ、アクセサリーの種類か、そうだね、ネックレスでいいんじゃない??」

「判りました、じゃあフルニ、ダブルスペルのネックレスを、お願いしたいんだけど。」

「いいけど、材料は?」

「材料はこれで。」

俺が抱えていた織覇瑠金(オリハルコンの包みを開くと、フルニと呼ばれた錬金術師の目つきが変わった。

「まさか、これは・・・。」

「うん、そのまさか、だから此処に持ってきたんだけど、お願いできる?」

「わかった、でも、下手するとトリプルスペルに成るかも。」

え??

「え?どうしてフルニ?」

「この織覇瑠金オリハルコンすごく純度が高いから、おまけでついちゃうと思う。」

おいおい。

「純度が高いと起きるの、本来狙った以上の効果が出るときがあるから。」

「それならそれでも良いよ、寧ろメイアリア様が使うから。」

「え?そんなに高名な人の装具を作れるの??」

「だってそもそも、ハーク殿下よこちらの方は。」

「ええええええ?!」

「どうしよう!、お化粧してないよう!!」

「大丈夫だって、フルニは充分可愛いよ。」

「そんな事言ってアレイク、ハーク殿下を連れて来るなら前もって言ってよーーー!!」

おや?まさか、この展開は、さらに妾候補が増える展開か?

フルニと呼ばれた錬金術師は恥ずかしがって俺を見ようともしないし。

アレイクはそんな事は承知の上だったみたいで、

「じゃあ、任せるから」

と言って店を後にした、俺も続いて出て行く。

「どの位でできるかな??」

「そうですねー久しぶりの織覇瑠金オリハルコンだからテンション上がって速攻で出来るかもしれないですが、最低でも三日は掛かると思います。」



 まあ、暫くは平和だと良いなー、と思いながら広場に出てくると見慣れない格好で杖をついたいた女の子が居る、それも左腕の肘から下が無い!

その子の容姿で目を引いたのは腕だけでは無かった、完全に白い髪、そして赤い瞳で瞳孔は人間のものだ。

上から大慌てでブラックドラゴンが降りてくる?

『殿下、強力な時空震を捕らえました、それも・・・!!!』

「ん?どうした??」

『この幼子は!!!!』

そういうやいなやブラックドラゴンはその子を翼で起こした突風で吹き飛ばす!!

軽量級なその少女は近くの壁まで吹っ飛んだ。

「まてまて、何してんだよ!!怪我してる子供に何てことしてんだよ!!」

『殿下!!油断めさるな!!この幼子は魔導王朝の先兵ですぞ!!』

「なんだって!!でもどう考えても、ただの怪我した子供じゃないか?」

『殿下はご自分の魔力が強すぎる為にこの幼子の発する魔力が判らないのですな!!』

『アレイク、殿下を安全な場所に退避させるのだ!!』

「はい!」

アレイクは俺の手を引こうとするが俺がそれを拒んだので驚いて。

「殿下一大事ですよ!!ここはドラゴンさんに任せて引きましょう、カエサルさんもすぐ来ますから!!」

「いや駄目だ、どんな理由があっても子供と戦ったりできない!!」

「ですが、彼女から発せられる魔力は人でありながら龍族と同等かそれ以上です、ここは避難して下さい!!」

俺は嘆願するアレイクを振り払い左腕の無い少女に近づいて行った。

『殿下おやめください危険です。』

ちょうどそのときに俺の後ろの空間を切り裂いてカエサルさんが現れた。

「カエサルさん、殿下を止めてください、魔導王朝の魔法使いが侵入してきたのです。」

「ま、まさか、シルバーンに直接転移してくるとは!!」

ブラックドラゴンに吹き飛ばされた少女は壁に打ち付けられて咳き込んでいたが、立ち上がるとこちらをギラリと睨んだ。

「巨大な魔力に引き寄せられて転移してみれば、まさか紅龍皇朝の皇子殿下ですか、これは失礼しました。」

 少女は見た目とはそぐわない口調としゃがれた声で俺に話しかけてきた。

だが俺は何か引っかかるものを感じ気にせずそのまま近づく。

ついに少女に手が届く所まで近づいた。

「その子を放せ!!」

「「?!」」

みんな俺の言っている意味が理解できないみたいだったが、そう、俺の耳には不可思議な音が聞こえていた。

一番驚愕の表情を見せたのはその少女だった。

「恐ろしい方ですね紅龍皇朝の皇子殿下は!!これは早い内に芽を摘んでおかなければなりませんね。」

そういった少女を中心として膨大な熱が集まる、少女の口から何か呪文めいた物が発せられて居る。

どうやら火炎魔法の詠唱に入った様だがそんな蛮行は俺も許さない。

俺は一切詠唱無しでいきなり冷気を呼び寄せる!

少女が詠唱で呼び起こした熱が霧散する。

また驚愕の表情を見せる少女。

「これだから龍族は困る我等人間が詠唱を必要とするのに意識を集中しただけで魔法が発動するなど出鱈目だ!!」

少女は俺を杖で突き飛ばそうとしたが龍族に比べて人なのでその動きは遅く稚拙な物に見えたので無造作に掴んだ。



 バガンッ!!


少女が持っていた杖が唐突に大きな赤い宝玉を残し爆散した。

「な!」

そりゃそうだ、いくら魔法の杖といえど俺の巨大な魔力が侵入したら当然吹き飛ぶ。

「く、くちおしや、・・・」

そういい残し少女を捕らえていた音も意識も途絶えた。

杖を無くした少女はその場にくず折れた、俺は優しく抱きかかえると、皆に向きなおした。

『ハーク殿下、これは一体!?』

「うーんなんて言えばいいのかな・・・俺の思う所この子は、ただ、洗脳かなんかされて飛ばされて来ただけなんだと思う、杖から妙な音が出てたし。」

「音や振動を察知する能力は随一の私でも気が付きませんでしたが・・・」

『カエサルがわからないとすると、殿下はカエサル以上に耳が良いと言う事に成りますな。』

「そんな、カエサルさんより耳が言いなんて紅龍皇朝家の殿下ではとても有り得ないと思いますが。」

『しかしアレイク事実こうして殿下の耳の良さが、無用な争いを止めたのだから信じるしかあるまい。』

「しかしその子どうしましょうかね、明らかに人間なのに龍族並の魔力の持ち主ですし、また洗脳されるとも限りませんし。」

みんな一様に悩んでしまったが。

『殿下の身近に置くしか有りませんな。』

「「「え!」」」

『洗脳されていたのを気付いたのも、解いたのも殿下です、一番安全な案だとおもうがのう。』

「確かに・・・」

「再び洗脳されても問題なさそうですし。」

「おいおいおい、また俺の周りに女子が増えるのかよ!!」

『ガハハハハハハハ、そうなりますな殿下!!!』

『見た目は少女といえど魔導王朝が繰り出してきたと成ると見た目どおりの年齢でも有りますまい。』

『これで、もし殿下に好意を抱いたりしたら妾候補が増えますのう、ガハハハハハハハ。』

うわあー止めてくれよ今日はメイアリアのプレゼントを作る為にこうして街まで出張って来たのにまさか少女を連れ帰る事に成るとは><


 俺は仕方なく少女を抱きかかえてブラックドラゴンに跨った。

アレイクさんは暫く爆散した杖の破片を調べて居たが、カエサルさんに送って貰うとの事なので俺たちは飛び立った。



 騎士学院に戻るとメイアリアからの質問攻撃が待っていた、というか、

アレイクさんが、

「殿下が女の子を持って帰ってきますよ」

なんて言ってたもんだからなおさらだ!!

俺とブラックドラゴンさんで事情を説明すると憮然としていたが、俺の近くに居るのがこの街を守るのに一番都合が良いと言う事には納得したようで、終始むくれていたが少女の介抱をしてくれる気に成ったようだ。



 俺の所に魔導王朝の先兵が来た事に騎士学院中が放課後にも関わらず大騒ぎになってしまった。

それも可憐な少女で人間でありながら龍族並の魔力を持ちおまけにアルビノとかいう色素欠落した人間などみんな見たことも聞いたことも無かったみたいだ、まあ、この辺の説明はみんなアレイクさんの受け売りなんだけど・・・。

 一番興味を引かれたのは彼女の破損した左腕だった、どうやら、龍族との戦闘で斬られたか、なにかした様で切り口が焦げているので出血はしてないが、かなり痛々しい。

魔導王朝にも回復魔法は有るらしいが、そんな事お構いなしに転移させられて来た様だ。


「しかし、非常に困ったことに成りましたね。」

え?

「なんで?メイアリア??」

「いえ、殿下がこの街に居る事が魔導王朝側に露見してしまいましたので。」

「そんなに不味いことかな??」

「はい、この街が戦闘の中心地に成ってしまう恐れが有ります。」

「え、どうして?」

「殿下は現在の龍族の中でも最も大きな魔力をお持ちです、魔導王朝側から見れば最も忌むべき存在です。」

「そ、それもそうか。」

「このシルバーンを守る為にはこちらから討って出るしか有りませんが。」

「ですがこの街の防備もないがしろにする訳にはいきませんし。」

俺たちが自分たちの部屋で前後策を議論していると、部屋のドアがノックされた。

メイアリアがドアを開けるとがっちりした体型の瞳の色が左右で違う龍族がそこには居た。

「ドレイク兵長、わざわざお越し頂かなくても私から参りましたのに。」

メイアリアがかなり丁重にそういった。

そうか、この人が元冒険者で、教員のドレイク兵長か。

 ヘブンリー村のことが有ったので、騎士学院を結構さぼってたから会えて無かった。

刀の使い方教えて貰わないといけないんだった。

「メイアリア様は相変わらず、わしを過大評価しとるようですな。」

「そんなことは有りません、何度も助けて頂きましたし、今回も相談に伺おうかと・・・。」

あれ、なんかドレイクさんの表情が芳しくないぞ?

俺が連れてきた少女の腕の傷口を見て固まってるし。

「どうしたんすか?」

俺が聞くと、

「申し訳有りませんがその少女の左腕を斬り落としたのはわしです。」

え!?

「どうゆう事ですか?」

「いや、ハーク殿下とメイアリア様が不在の間にセレンス村の奪還作戦の下見の為にわしが一人でセレンス村に斥候として行った際に戦闘に成りまして、この少女と戦ったのです。」

あらーそんなことが有ったのね、つうか奪還しなきゃいけない村が有るなんて知らなかったし。

「そのときはこの少女が操られているなど露知らず焼き斬ってしまいまして・・・手負いの兵なので魔導王朝側も情報収集の捨て駒としてシルバーンまで転移させて来たのでしょう。」

「そんなことが有ったのですね・・・。」

「ん?ということは?」

「そうです、セレンス村を奪還出来ればシルバーンはとりあえず安全を保てるでしょう。」

とまあ、方針がある程度固まった所でその少女が目を覚ました。

「あれ?」

「お、おきたか!」

「ここは?」

少女は自分の置かれた状況が一切飲み込めて居ない様だった。

メイアリアが優しく答えた。

「ここは紅龍皇朝の西都シルバーンですよ。」

「?・・・しるばーん?」

どうやら街の名前も国の名前もさっぱり判らない様だ。

メイアリアが優しく問いかける。

「何か覚えている事は有りますか?」

少女はメイアリアに言われた事を反芻しているようだが、


「わたし、だれ?」

「わたし、なに?」

「わからない、わからない・・・」


 俺たちは呆然と成ってしまった、そう、彼女には名前も無ければ記憶も何もかも無いのだ。


「殿下、わしはアレイクを呼んで参ります、この少女の有り様はわしらの手には負えませぬ。」

ドレイク兵長は立ち上がると俺たちの部屋から出て行った、メイアリアは気づいていなかったが、ドレイク兵長は歯を食いしばって怒りを抑えて居る様だった。


メイアリアは少女を再び寝かせると。

「大丈夫ですよ。」

と言って布団をかけてから少女の右手を優しくにぎって、子守歌を歌い始めた。

聞いたことのない旋律だったが不思議と懐かしかった。

暫くして少女は再び眠りに落ちていった。




 俺の中にもはっきりとした怒りが渦巻き始めていた。





 「メイアリア、セレンス村って何処にあんの??」

俺が問いかけるとメイアリアは何かを察知したようで、

「殿下、そんなことを聞かれてどうなさいます?」

メイアリアにしては珍しく、怒気が篭った発言だった。

「決まってるだろ、奪還してくるんだよ。」

「成りません!」

「殿下のお怒りはごもっともですが一国の皇子が自ら前線に討って出るなどとても承服しかねます!!」

「じゃあ、良いよ他を当たるから!!」

俺はそう言い残し部屋を後にした、メイアリアも出てこようとしたが少女を放っておけないと気づいたのか苦虫を噛み潰したような顔をしていたが部屋からは出て来なかった。



 初めてだな、メイアリアとこんな風に言い合ったのは・・・。

俺は男子寮から出るとユリエに呼びかけた、ユリエもどうやら気づいて居たようで既に女子寮から出てくる所だった、おまけにカレンもエリザもリーナも居る。

「ハーク、そんなに怒らない・・・。」

「ああ、ごめん、ユリエ。」

「魔導王朝が、非道なのは昔からよハーク。」

「そうなのかもしれないけどなこんなの見せ付けられるとどうもね・・・」

「ハークってばお人よしなんだから、知らない子の為にそんなに怒れるなんて。」

「本当にハーク様は優しい・・・。」

「なんか面と向かってそう言われると照れるな・・・。」

なんか微妙な空気になったが、とりあえずいつもの面子が揃った、ヘブンリー村の輸送改革やら街道騎士や常駐騎士の底あげやら使える冒険者のリストアップやらで騎士学院をサボりまくりだったからなんか久々な感じがしたが俺たちはいつもの如く図書館で作戦会議を開くことにした。


 いつもならアレイクさんが居るはずなのだが校内で行き違ったのか図書館の司書席には誰も居なかった。

取り合えず、セレンス村って何処に有るんだろう?

そう思うと、ユリエがいつもの如く地図を開いて、指を指す。

「そこかー。」

「なあに?ハークとユリエ通じあっちゃってるの?」

カレンが不服そうに呟く。

俺はしどろもどろになりながらもユリエが頭が良いからと言うことにした。

「オホン、まあとにかくだ、この村が奪還出来れば、カレンの親父さんの仕事も減る訳だし、魔導王朝も暫くは手が出せないだろうし。」

「そうね、うちのパパもそんなにいきなり攻め込まれたら流石にしんどいだろうし。」

 なんやかんやと俺たちが言い合っていると、大きな人影が棚の間から現れた。

ドレイク兵長だ、それもそうだ、アレイクさんを呼びに行くと言ったのだ此処にいてもなんら不思議は無い。

「ハーク殿下、メイアリア様にあまり心労をかけては成りませんよ。」

ドレイク兵長がそういうと皆シャキっとしてしまった、どうやら俺が居ない間に皆、騎士学院でドレイク兵長に鍛えられて居た様だ。

あんなに頼りなかったリーナまですっかり凛々しい顔つきに成っている。

「ドレイク兵長、仰ることはごもっともですが、ハークの気持ちもわかります。」

ドレイクはエリザにそういわれて困った顔になってしまった。

「殿下は、皇帝陛下によく似ておいでだ、女性に好かれるのも、血気盛んなのも紅龍皇朝の血筋ということですかな。」

「仕方有りませんな。」

「え、それじゃあ?」

「いえ、ですが、未だ騎士にすら成ってない女子生徒を戦場に出させる訳には行きませんので、この四人は騎士学院で帰りを待つと言うのならば、わしも参りましょう。」

確かにそうだ、俺は自分の怒りに任せて、騎士にすら成ってないこの女子生徒四人を戦場に出させる所だった。

「人選と策はわしに一任して頂けますかな、ハーク殿下、いえ・・・紅龍皇朝、竜騎士団、第二騎攻師団、団長!」

そう言われた俺は自分に責任があった事を思い知らされた。

 確かにそうだ、俺は既に騎士に成っているし前線に立つのも指揮もしないといけない。



 暫くして四人は騎士学院に残るという事に納得はして貰えた、普段から戦闘訓練で教官をしているドレイクの制止に逆らう余地も無かった。

「さて、殿下、まずは人選と策、そして時期ですが順番に言いますと、まずは殿下の通常装備を作らねば成りません。」

「え?でも、波紋鋼ダマスカスの長刀なら二本有るけど。」

「いえ、竜騎士の通常装備はあくまでもワイヤードランスです、これが無い事には話になりません。」

「そうなのか、困ったなー織覇瑠金オリハルコンは有るけど肝心の紅龍石が無いんだよなー。」

「いっその事神々の武器庫のワイヤードランスで戦うか?」

「残念ながら、それも無理です。実のところ神々の武器庫の武装の存在自体が紅龍皇朝の秘中の秘ですので、普段から使うわけにはいきません。」

「え?じゃあなんでメイアリアのは良いの??」

「メイアリア様のワイヤードランスは歴代の第一騎攻師団のシンボルとも言えるランスなので、存在自体は敵国にも知れ渡っています。」

「ですがあのランスが神々の武器庫の武器だということを知って居るのは倭の国と海龍王国だけです、まあ、魔王は知っているでしょうが、彼にはゴールドドラゴン様から契約のリングを授かる事はまず不可能で契約のリングを手に入れることはできませんし。」

「そんなに、機密なの??」

「そうですな、殿下がお生まれに成った時にはあまりの魔力の為にゴールドドラゴン様自ら殿下の元に赴いたという程でしたが、事実、城塞騎士カエサル程の猛者でも持っていません、まあ、わし個人はカエサルにも持たせた方が良いと思いますが。」

「現状で、殿下がシルバーンに居るという事が露見している上さらに殿下の情報を魔導王朝側に知られる訳にもいきません。」

「戦争と言うのは情報の取り合いなのです、事実、殿下の姉上のメリン皇女殿下も魔導王朝に表向きは外交特使という肩書ですが諜報なども行い情報収集している事でお分かりいただけるかと思いますが。」

確かにそうだ、姉さんも潜入してる位だから情報の取り合いは大事だ。

俺がレイボルグとやった時の様に怒りに任せて突っ走ったら国が傾きかねない。

「それでなのですが、殿下。」

「ん?」

「殿下のワイヤードランスをこの宝玉で作れるか試してみませんか?」

そういうと、ひとつの宝玉を取り出した。

「え、それって、まさか。」

「そうです、あの少女の持っていた杖についていた宝玉です、アレイクに託されました。」

あー確かにアレイクさんあの後、色々物色してたからなー。

なんつうか抜け目ないと言うかなんと言うか・・・。

「アレイクの話によると少女が起こそうとした火炎魔法を殿下が冷気で抑えたとのこと、そのまま杖を掴んで宝玉だけが残ったので、これならば殿下の巨大すぎる魔力にも多少は耐えられるのでは無いかと。」

「試しに殿下この宝玉を掴んで魔力を少しこめて貰えませんか?」

えー折角の宝玉壊したらやだなー、なんか怖いなー。

俺が逡巡しているとドレイク兵長が投げて寄こした!!

「うわっとっと。」

俺の手の中に宝玉が納まったが、一向に壊れる気配が無い、取り合えず魔力を込めない状態なら平気みたいだ。

「じゃあ、まあ、壊れてもともとだ、いっちょやってみますか。」

そういうと俺は魔力を宝玉に込めた・・・。





 念のため温度変化無しで魔力を込めてみたが結構込めてもぜんぜん壊れる気配が無い!!

「これは驚きました、問題無さそうですな。」

「そうみたいw」

流石アレイクさんの見立てだ、見立てどおり宝玉はびくともしない。

確かにあの時火炎魔法の発動を察知したときかなりの魔力で冷気を起こしたから壊れないのはうなずける。

「ていうか魔導王朝ってルビーとかの産地が有るのかな??」

「そうですな、その可能性は非常に高いと思われます、捨て駒状態の少女に持たせているのですからかなり沢山産出されるのでしょう。」

「若しくはこのくらいの宝玉じゃないと、洗脳が維持できないとか??」

「その可能性も充分ありますな。」

「まあ、これで、殿下の通常装備のワイヤードランスの目処が立ちましたな。」

「じゃあ、うちのパパの出番ね!!」

うおい、そういえば四人とも未だ居たんだったw

「では殿下、メイアリア様と共に倭の国に参りましょう。」

う、なんかさっき、言い合いしたからちょっともどりづらいけど。


 俺とドレイクさんは四人を女子寮に送ると俺の部屋に戻った。

どうやら丁度アレイクさんが回復魔法?で少女の左腕を治している最中だった。

 メイアリアからは「しー」という静かにしてという合図が来た。

どうやら繊細な魔法の様だ。

 メイアリアはさっきの言い合いのことは気にして無い様だった。

少女の左腕はガラスのケースのようなものに入っていて黄色い液体がケースの中を満たしている。

アレイクは慎重に魔力を調整して、少女の左腕に集中している。

「あの液体はなに?」

「あれは、生物の根源の液体といったところでしょうか、我が国の天才錬金術師によって作られた物です。」

「失われた部分を再生するには二つ方法が有るのですが、この方法は少女自身の遺伝子情報をアレイクが読み取ってその通りにあの液体を組み立てるのです。」

「アレイクさんてそんなことまでできんの!?」

「殿下、アレイク以上の回復魔法の使い手はいまのシルバーンには居ませんよ。」

 どうやら少女の遺伝子情報を読み取るのが終わった様で一息つくとアレイクは再生魔法の後半に入った。

徐々に少女の左腕の肘から下がパズルのピースを嵌めるように組みあがって行く。

まずは、骨、神経、血管、筋肉、皮膚、爪、体毛。

今日はアレイクさんの凄さをまざまざと見せ付けられた一日だな。

 メイアリアとアレイクは少女に着けていたガラスのケースを外すと、少女の左手を掴んだ。

その左手がぴくっと動いたのをみてアレイクとメイアリアの顔がほころんだ。

メイアリアもアレイクも少し疲れた様子だったが、少女を眠りから起こすと。

「大丈夫ですか?」

と声をかけた。

「うん、どこも痛くない、ありがとうおねえちゃん達。」

「左手はちゃんと動きますか?」

「大丈夫だよ、ちゃんと動く。」

俺達が図書館で色々やってる内に打ち解けていたみたいだ、少女はけっこう明るい性格の様でいまの自分の状況に混乱はしていたが、絶望はしていなかった。

「この、ハーク殿下が助けてくれたのですよ。」

メイアリアがそう告げると少女は俺を見て。

「こんなかっこいいおにいちゃんが!」

「いや、めんと向かってそういわれると照れるんだが。」

「ありがとう、おにいちゃん、大好き!!」

なにかがひび割れる様な音がした。

メイアリアとアレイクが凍っている。

「お、お前ら子供相手になんて顔してんだ。」

「そ、それもそうですね。」

「私とした事が大人気なかったですね。」



 アレイクさんによるとこの少女は魔法で強制的に魔素の吸収効率と蓄積能力そして放出能力を拡大された人間らしい、どうやら人間の色素は魔素の吸収を妨げる様なのでアルビノとして産まされたと言うことだ、細胞の分裂回数から推測するに肉体年齢は八歳と言うことだ。

 実際の所彼女に危険性は無いとの事なので、騎士学院内で面倒をみる事に成った、まあ、魔力はあっても人間だから詠唱呪文も知らないのだから当然の処置と言えたのだが・・・。



 俺が行く所行く所付いて来るのである、授業は勿論のこと食事、寮の部屋、買い物から何から何まで。

インプリンティングされた小鳥か、こら!!

ことりか、そういえば名前を付けてなかったな。

「なあなあ?」

「うん。」

「どんな名前がいい??」

「え!」

「だって名前ないと困るだろ?」

「うんうん!!」

「じゃーいつも付いてくるから、ことりでいいか?」

「うん、いい!!」

「わーいわたしことりー」

「今日からことりー。」

「殿下あまりにも安直だと思うのですが?」

「いや、だってさメイアリア、本人も気に入ってるしいいんじゃん。」

「はあ。」

メイアリアは最近はことりの世話も加わって忙しそうだ、そんなこんなで三日たった。


 俺はアレイクさんを伴ってフルニという錬金術師の店に向かったもちろんブラックドラゴンさんでだ。

「フルニー??」

「あーアレイク出来てるよダブルスペルのネックレス。」

「おお、すげえ!!」

豪華と言えば豪華なネックレスなのだが戦闘中に使うこともきちんと加味されており無駄の無い作りだ。

 服の下にも取り付けて差し支えない様な形に仕上がっている中央には何か文様の様な物が描かれておりどうやらこの部分がダブルスペルを行使するようだ。

「な!」

どうやら錬金術師のフルニは俺も来るとは思ってなかったみたいで、また驚いて居るが。

「ハーク殿下にはお日柄もよろしく、あのその・・・ダブルスペルなのですが、使ってみないとトリプルスペルになっているかわかりませんので・・・。」

「あーそうだっけ?じゃあ早速メイアリアに試して貰うよ。で、代金なんだけどいくらかな??」

「い、いえ殿下からお金など頂けません。」

「じゃーどうしよう、なんか欲しい物とかないの??」

「フルニはっきり言っちゃいなよ、皇室御用達の錬金術師に成りたいって、実際その実力は有るんだからさ。」

「っちょ、だ、黙っててアレイク!!」

「なんだ、じゃあ、それでいいや。」

「え・・・?」

「だって皇室御用達の錬金術師必要だろうしアレイクさんが認めてるなら相当な腕だろうしさ。」

うんうん、アレイクさんも頷いている。

「騎士学院の魔導研究室って結構でかかったよね?」

「はい、そうですね殿下。」

「魔導研究室と錬金術の研究室ってどのくらい違うかな??」

「素材にもよりますが殆ど変わりは無いと思いますが。」

「じゃあ、フルニさん、皇室御用達錬金術師決定で、必要な荷物とかあったら、騎士達に運ばせるからさ騎士学院の魔導研究室で色々研究してよ。」

 フルニは終始ポカーンとしていたが、実は俺がこっそり用意しといた正式な紅龍皇朝雇用契約通達(もちろん紅龍皇帝の判も押してあったりする)を見てさらに固まってしまった。



 メイアリアのプレゼント買うのに来ただけなのにことりと合わせるとまた身近に女子が二人増えてしまった。

どうしよう俺。


次回は出来れば来週中にあげたいと思います。なにとぞよろしくお願いします。

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