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剣聖の依頼


「本当に、久しぶりにその号で呼ばれた気がする。」


『お戯れを・・・此度、シルバーンに来訪された目的を、お聞きしてもよろしいでしょうか?』


ブラックドラゴンが余りにも平身低頭だったのでメイアリアは違和感を感じるしかなかったが、ブラックドラゴンの右の翼だけが妙にヒクヒクしていることに気が付く。


「そんなに畏まらなくても良いんだけど・・・それにあれは不幸な事故だったんだから。」


『そうは申されましても、この歳まであれほどの恐怖を味わったことはありません。』


「あれ? そうなんだ 結構平和だったんだね ここ五百年ぐらいは。」


『小競り合いは多少在りましたが押しなべて平和とは言えたかもしれませんな、つい最近二十年ほど怪しいですが。』


つい最近のあたりからメイアリアを軽くチラ見してからブラックドラゴンは剣聖と話を続けていた。


シルバーン街壁外 城塞の東門の門扉の前で立ち話も何だということで東門をブラックドラゴンが直々に開けると剣聖を通した後、中に入ると元のように東門を閉じた。


カエサルは剣聖の来訪を白龍皇帝に伝える為、先に戻って行った。


そんな姿を見ながら「相変わらず龍族もドラゴンも器用に色々こなすんだねえ。」と彼女(剣聖)はずいぶんと感心している様だった。




中に入ってから肝心の来訪の目的を話していなかった事を思い出した彼女はブラックドラゴンにひどく言いにくそうに話し始めた。


「うーんどこから話したもんだかねえ、まあ、はっきり言っちゃうね、魔界との境界にある大門と中門と小門全部開きかかってるんだよね。」


『それでは、あちらの物がこちらにあふれると!』


「まあ、なんかね、どっかのくそったれが残した迷宮魔法(ダンジョンマジック)があってそれが踏破されちゃったせいで妙なブービートラップみたいな仕掛けが動き出しててね。」


「中門は心配してないんだ、元々魔王が守ってるからあそこは問題ないだろうし中門の向こう側はそこまで好戦的じゃないはずだし門に比べて図体もデカいから浸食してくることもそうそう無いだろうから。」


『ということは・・・。』


「そう、小門が問題なんだ、本来大門の前で開かないようにしてる私がこうやってきてるのはその通達って言うのと、開き切ってからじゃ遅いから開く前にこいつの調律を頼もうと思って。」


剣聖は自分の太刀の柄をこんこんと叩きながらそう言った。




メイアリアも知らない会話が飛び出していた・・・。


魔界との境を守っている門があるということはあくまでも御伽噺や神話の中だけの話だと思っていたので実在しているということが寝耳に水だった。


話の感じから察するに昔ブラックドラゴンの翼を魔力は確かに強いが一見非力そうに見えるこの女性が斬っているかもしれないという事と、龍族でも無いのに平然とドラゴンと思念会話が出来ている事実にメイアリアは驚いているしか出来なかった。



シルバーン内の市街に入って本来、アンデットであれば神聖魔力が満ちている状態ともいえるこの街中で存在を保てるはずも無いのだが、彼女にとっては「ちょっとちりちりするね。」という程度で何ともない様子だ。








『大門と中門は良いとしまして小門はどうされるのですか?』


「あ、それそれ、小門が開いちゃうと色々と変なのが出てきて浸食されちゃうかもしれないから、君たちに託そうかと思って。」


『そ、それは、いくら我らでも些か荷が勝ちすぎるといいますか・・・。』


「破軍起きたんでしょ。」


ブラックドラゴンは外部に大々的には漏れていないはずの情報を大門の門番をしていて動けない剣聖に知られていたので困るほか無かった。


ずっと驚きどうしだったメイアリアが口を開いた。


「剣聖様は、破軍様が目覚めたことを何処でお知りになったのですか?」


「簡単な話ね あの氷の刀はあたしの太刀をモデルにして巨人族が打った物なの、それにシルバーンの旗も白龍皇朝旗に戻ってるし、そもそも踏破褒章クラスの武具が出現すると少しだけ魔素空間が歪むから。」


「あと、それと ついでと言っては何だけど魔導王朝とか言うあっちの国の方にもう一つ別の踏破褒章の武具の気配があるわね。」


「それは本当ですか!!」


『それが事実ならばここ最近、あちらの技術が急加速で発展したのも合点が行くという物。』





剣聖はメイアリアと共にブラックドラゴンに乗り込み白夜の塔に付くとここまでの会話と同じ内容を一通り白龍皇帝にもう一度繰り返し伝えると西門の方を差しながら。


「どうやら終わったみたいよ、私も戦場の跡を確認し終わったら シュウスイの弟子達と暫く一緒にこの街に居ることにするわ。」


と言い残し、白夜の塔から飛び降りると自の足で西門を目指し シルバーン市街の屋根伝いに飛んで行ってしまった。












戦闘の行方を上空で旋回しながら見ていたレッドドラゴンさんと子ブラックドラゴンが降りてきた。


『なんとも、でたらめな威力と性能だねえ。』


『我らではこの戦闘速度は出ませんね・・・。』


と各々独自の感想を述べる。




ボウッ!!


その時、シルバーンの方向からそれはとても名状しがたいほど禍々しく凶悪な魔力が疾風と共に吹きすさぶ!!



大鎌を持ったゴーレム・ゲリエが逃げるときにまるで元の世界の映画のバンパイアの様に霧と蝙蝠が視界を遮ったので、間髪入れずレッドドラゴンさんが『剣聖!!』と言いながらひれ伏さなければ咄嗟に攻撃を仕掛けるところだった。


「久しぶり、元気だった?」


放つ魔力は明らかにアンデットやそれに類する魔力でありながら非常にフレンドリーにレッドドラゴンさんに話しかけている。


『こうして貴女が外に出てきている・・・ということは!!』


「うん、やっぱり女同士、ブラックドラゴンよりずいぶん話が早いね。」


「それと破軍、復帰おめでとう、あたしが解放して上げられたら良かったんだけど、あたしが本気出して動くとゴールドドラゴンがカンカンに怒るだろうし。」


「お初に目にかかります剣聖殿、いえ もしや・・・一度、会っていますでしょうか?」


「あーうん、会ってるけど、一万年もの間、氷霊封結晶の中にいたんだから記憶があやふやに成ってても仕方ないよ。」


「まあ、つもる話は後にして、何だか 面白いことに成ってるね!!」


戦闘後の残骸を見るとそんな感想を述べる。


アンデットの軍勢が跡形もなく消滅したのではなく凍り付いて所々砕けたまま気温の戻ってきた灼熱の砂漠そこら中に散乱しているのだ、そういわれても無理も無いと思われた。


「それに君が、破悪(ハーク)皇子かい? 中々面白い感じの子だね、初めて会ったはずなんけどなんだか初めて会った気がしないわ。」


そういいながら俺の顔を見てニッコリ笑った。




暫く俺達と剣聖を足した五人(?)で和気あいあいとはいかないが戦闘後の検分をしていると倒した片方のゴーレム・ゲリエの残骸の近くに来た時、唐突に剣聖から冷たく鋭い殺気が放たれる!!


何事かと問う間も無く剣聖が叩きつけた殺気が近くの地面で餌を探してついばんでいた雀の群れの動きを押しとどめ、ぷんっと刀を振った音に似つかわしくない音が聞こえたと思うと、全ての雀が血も流さず袈裟切りに成っていた。


「何を!?」


俺が疑問の声を上げた後も袈裟切りに成った雀が暫く血も流さず自分が斬られたことにも気が付かず目をぱちくりさせていたが、ドロドロと石油か原油の様な油が浮いた黒い液体に変化したあと燃え始めそのまま燃え尽きて消滅した。


「魔界の寄生型のスライムだね、もういてもおかしくないとは思ってたけどそれなりに小門の裂け目は開いてるみたいね。」



















アーシェリカとブリジットは工房の最深部に赴いていた、そこは旧世代の遺跡がそのまま可動しているといっても過言ではない場所だった。


始めて彼女の工房の最深部まで入る事を許されたブリジットは今までの様々な事柄に合点がいったのだった。


暫く螺旋階段を何階層か分下ると、膨大な量の魔導書が収められている区画にたどり着いた。


「その本返してもらえるかしら?」


つい先ほどまでは感情を隠していなかったアーシェリカはすでに普段の感じに戻りブリジットに話しかけてきた。


言われるがままについてきたとき思わず持ってきていた例の本を返すとアーシェリカが本を戻そうとしている本棚を認識して驚愕した。


返した本と同じ背表紙の本が本棚に何冊も収まっていた、自分が今返した本を同じ背表紙の本の空いていた隙間に戻すと、アーシェリカはさらに階段を下って行った。


暫くブリジットは本棚を凝視していたがアーシェリカが先に行ってしまっていることに気が付くと急いで追いかける。


「今日はずいぶん静かねブリ子。」


そういわれてもブリジットは流石にいつもの調子に戻れなかった。


螺旋階段の終わりまでたどり着く。


三方向ある扉の正面の扉を開け、中に入っていく。


そこでブリジットは信じられないものを目にした。


子供の頃母親が寝付けないときに読んでくれた御伽噺に出てきた重震龍が地下にあるとは思えない広い空間の魔法陣の真ん中に陣取っていたのだった。



「重 震龍・・・。」



「あら、良く知ってるわね・・・そういえば、重震龍(かれ)が出てくる御伽噺とか有ったわね。」



重震龍が出てくる御伽噺の内容は最初はよくある勧善懲悪の話だったが、後半から最後の部分が子供心によく分からなかったから印象に残っていた。


悪事を働く悪いドラゴンを倒すためによいドラゴン(重震龍)の力を借りて戦いに行くのだが重神龍の力を借り得た主人公以外の人達がどんどん年齢を重ねて行って、最後に悪龍を倒した時には守るべき家族も仲間も年老いてみんな死んでしまって、ついには悪龍が働いた悪事や、その存在すら時が経ち忘れ去られ、悪龍を倒した主人公の功績は誰にも知られず、そして年老いることが無くなった主人公が生きている人たちに化け物扱いされたあげくどこかに居なくなり御伽噺は終わるのだった。


最終的に主人公が悪龍をやっとのことで倒しても、誰も助けられていない、誰も救われていない、そんな話だった。


「実在 した・・・。」


「ええそうね、能力もその御伽噺のほぼそのまま特定空間や人物の時間の流れを加減速することが可能ね。」


「それじゃあ今まで開発してみせた技術や魔法は。」


「そうよ、彼に色々とヒントや時間を貰って開発した物よ。」


迷宮魔法(ダンジョンマジック)の踏破褒章 武器である重震龍の杖を見せながらアーシェリカは続ける。


「まあ、この杖が無ければ意思の疎通すら出来ないのだけれど。」


時間を貰って、の所でブリジットは頭が痺れる思いだったがアーシェリカの破格の能力の片鱗が理解できたのだった。












完全中立を標榜する国家があった、その国家は大海原の群島に存在した。


自国の騎士や魔導士、そしてこの国を発祥とする冒険者 組合(ギルド)によって過酷なこの世界に有りながら人、亜人、様々な人種によって他国、自然の環境、魔物から守られていた。


だがある時、鉱山において[それ]が出土したために周辺の国々をも巻き込む戦乱が起きることと成った。


戦乱の後それを封印、守護するための組織が新たにその国家内部に興ったのだった。


「これが小門を管理している群島国家のあらましね。」


「それでその国はどうなったんですか?」


戦場からシルバーンに戻り鍛冶弟子コンビの工房で小門を管理していた群島国家の話を剣聖から聞かされていた。


まあ、鍛冶弟子コンビの二人は最初紅龍皇朝皇帝陛下から直の仕事が言い渡されたかと思えば、次は剣聖というはっきり言って化け物中の化け物から仕事を依頼されて可哀想だった。


だが、そんなことはお構いなしに剣聖は話を続ける。


「正直どうなってるかは分からないわ、こっちまで寄生型のスライムがたどり着いているとするととっくに滅んでるかもしれないし、それともたまたま偶然が重なってこっちまでたどり着いてるのならまだ普通にあるかもしれない。」


「じゃあ行って確かめないと何も判らないということですか。」


「残念ながらそうなよ。」


「剣聖殿は御同道して頂けるのですか?」


破軍が最もな質問をした。


「残念ながら一緒には行けないの、元々大門を閉じておかないといけないし 実は今、出歩いてるこの体もあくまでも分身体だから無茶は出来ないの。」


分身体なのにこの凶悪な魔力で存在感とかいろいろと反則な気がしたが、確かにそう明かされて それを認識すると徐々に存在感が儚くなっていった。


「このこ(刀)の調律が終わったらあたしは本体のある大門に戻るからあとはこの国と現世(うつしよ)の人たちで何とかしてくれると良いんだけど。」





問題が山積みに成ってしまった、話の内容的に俺と破軍は小門を閉じるために絶対に必要だという事と。


魔導王朝がこれからどう出てくるかが判らないという点だ・・・。


此方の戦力的にはゴーレム・リッターとゴーレム・ゲリエだけにおいては基本的に彼らよりどうやら強そうだが、(剣聖もそのような見立てだった)魔導王朝の方が迷宮魔法、踏破褒章武器をもっている踏破褒章所持者(ホルダー)が一人多い、俺と破軍が居ない状態で、あちらが同時に踏破褒章所持者(ホルダー)を繰り出してくると残った戦力では厳しいかもしれない。


俺や破軍、そして鍛冶弟子コンビの工房に来ていたメイアリアやローグが困った顔に成ったのを見て剣聖が一言加える。


「破軍が解放されたんだから、最悪の事態にはならないと思うけど、あの広場の下にあるあたしのプラチナとゴールドドラゴンのゴールドのゴーレム・リッターも誰かに使ってもらって良いから、自国を守るために使うんだから彼女も文句ないでしょ。」


誰もそれを知らないみたいだった。


今まで破軍を閉じ込めていた氷の浸食をくい止めるために地下生活を余儀なくされていた白龍皇朝のローグですら知らないみたいだった。







俺と破軍とメイアリア、ローグの四人で剣聖の指示どうりに破軍が氷漬けに成っていた広場に向かった。


四人で注意深く広場の隅々まで調べると中央付近から少しずれた位置に初代白龍皇朝の紋章がかすれているが微かに残っている石があった。


「これじゃないか、ローグ。」


「この位置じゃ氷の下で何かがあるなんて判別できなかったのも無理ないかもしれないな。」



ゴゴゴ、ゴン



ローグがそう言いながらその紋章に触れると俺達がいる中央の丸い大石が階段を残しながら回りながら下に降りていく


「おいおいおいおい。」


「これはまた・・・。」


「まだこんなものが・・・。」




各々が静かに驚嘆の声を上げた。


それもそのはずで剣聖の話では剣聖の機体とゴールドドラゴンの機体があるという話だったがそれだけじゃ無かった・・・。


見たこともない美しい翠の葉と植物の蔓をモチーフにした弓をもった機体や 胸に獅子の顔の付いた鎧を纏った機体、紫の龍の鎧を纏った機体、鬼のような面を被った機体、鮫がモチーフに成っている鎧を纏った機体、ユニコーンの頭の様な角の生えた白い機体、白頭鷲の鎧を纏った機体など種々様々なゴーレム・リッターが下っている丸い大石をぐるりと取り囲むように鎮座していた。


一番最後まで降りると広大な通路の先にあかりが灯り 続きを作ってくれと言わんばかりに製造施設と作り途中のゴーレム・リッターを照らし出した。













俺達は元の世界の日本で目覚めるとつい先ごろまでシルバーンで有った事を聖母龍に報告していた。


最初剣聖が訪れたことを伝えると明らかに機嫌が悪くなっていたが彼女は彼女なりに己の使命を全うしていることを理解すると少しずついつもの感じに戻って行った。


「かといってわらわの機体を使うといわれてものう、誰ぞ相性のいい者がいるとも思えんが・・・。」


「シルバーンに戻ってこれないんですか?」


「戻れんことも無いが戻ったところでこっちの世界に居る妾の方が主体に成ってしもうているからあっちの妾は今は使い物にならんじゃろうし。」


「え、じゃあ、俺達みたいにホイホイ行き来出来ないって事ですか?」


「残念ながらお主らの魔力を使って逆召喚してこっちの世界に来た物の、あっちでまた同じように召喚しなおさないと元の戦闘能力は発揮できん。

まあ、なんというか、天を翔けるものと同じようなそんな都合のいい話は無かったという事じゃな・・・。」


「そうなると本格的にあちらでゴールドドラゴンさんの機体を操れる相性のいい龍族を探さないといけないな。」


と劉生。


「意外とエリザとか似てるから上手く行ったりしてな。」


と、俺が言うと。


「あまり彼女を前線に出したくはないんだが・・・。」


そう、小さな声でぼそぼそと劉生は言った。





そんな俺たちを知ってか知らずか自衛隊のヘリは俺たちを乗せて夕暮れの中、習志野から一路とある神社に向かっていた。


俺達と接触を図って成功して以降、なんだか昇進したみたいな黒藤とその部下の君野女氏は色々と普通の人間では対処できない厄介事を俺達に持ち込む様に成っていた。


「それで、今回妾達を呼んだ理由はなんじゃ?」


龍宮寺 真理亜(聖母龍)が黒藤に問う。


「神社本庁で管理していた神籬(ひもろぎ)が何故か禍神に堕とされてしまったんだよ、君たちなら燃やさずに浄化できるんじゃないかと思って・・・。」


「神籬ですか、確か神様が降りてくる樹木か何かの事ですよね?」


「博識だね・・・私もそこまで詳しくないけども何でもその神籬は神様が降りたままに成ったのを御神体として御祀りしていたんだけど、何故か判らないけど人を襲うように成ってしまったんだよ。」


「ちょっと待ってくださいよ、じゃあ俺たちに禍神になった神様を治めろって事ですか?」


「正直、そういうことに成るね・・・。」


「ふむ、ようするに燃やさずに浄化すればよいのじゃろ、ならば妾の得意分野じゃ、安心して良いぞ。」


暫くして俺達三人は群馬県と栃木県の県境にある、とある神社の表参道にまるで特殊部隊かの様にヘリから降ろされたロープ(?)を伝って降り立った。


俺達のその様子を始めて見た自衛官は目を白黒させていたが黒藤も軽装だが俺達と行動を共にするつもりらしく遅れてヘリから降りてきた。


「なんじゃお主も多少は使えるのか?」


「一応、このくらいのことは・・・あ! 勘違いしないで下さいよ、一般人と何ら変わらないんで戦う時にあてにされても困りますよ。」


そう言いながら黒藤は非常に慌てていたが。


劉生に大丈夫ですよと言われて心底嬉しそうだった。


表参道を進み境内に入ると待機していた自衛官と宮司が状況を説明してくれた。


「黒藤主任、御神木は本来の場所から山中を進路上にある木をなぎ倒しながら北東に進んでいます。」


「それで被害は?」


「参拝客五人が重傷です、神職方々に、負傷者は居ません。」


黒藤が状況報告を聞いている間に境内を調べていると龍宮寺(聖母龍)が怪訝な顔をしていた。


本来ご神木が生えていた場所まで来ると地面に落ちていた葉を拾い酷く驚いている。


「何か有りました?」


「なんという事じゃ、ここに生えていた神籬とやらは・・・こんなところでぐずぐずしておれん、二人共行くぞ!」


そう言い残し龍宮寺(聖母龍)が神籬が歩いて行ったと思われる引きずり後を辿って山中に入って行ってしまった。


俺達のそんな会話を察知したのか黒藤と、報告に来ていた自衛官はとっさに引き留めようとしていたが。


「大丈夫ですよ任せてください。」


とだけ言い残し俺たちは龍宮寺(聖母龍)を追いかけた。


俺は、遠くで「あの若者達は大丈夫なんですか?」なんて、宮司が言っていたのが聞こえたが知らないのだから仕方がないと思ったので聞かなかったことにした。







ズズン、ズズン、ズズン! メキメキメキ


夕暮れから完全に暗闇に成った悲惨な爪痕を残す山中を暫く進んでいくと遠くから大きな物体が一歩一歩、地響きを轟かせ歩いている音が聞こえてきた。


さらに進むと大きさ10メートルぐらいだろうか、広葉樹と思われるそれほど高さの高くない樹木が行く手を遮る他の木々をなぎ倒しながら進んでいる。


上空では俺達が乗って来たのと同じ型のヘリがライトを照らし何機も追いかけている状態だった。


速度としてはそれほど早くなかったがこのまま進んでいって何処かでこのまま市街地に突っ込まれでもしたら大事なので俺達にお鉢が回ってきた様だった。


「ミサイルとかぶち込めば簡単に倒せるんじゃないのか?」


「流石に、そうゆう訳にも行かないだろう、元々御神木なんだ暴れて動き出したからと言って御神木を吹き飛ばすわけにもいかないと思うが。」


俺は劉生と会話しながら持っていたスマホを取り出し、黒藤に連絡した。


「黒藤さん、神籬に追い付きました、もう追跡してるヘリ戻して良いですよ、後は何とかなると思うんで。」


「いつもすまないね、毎度こんな無茶な事を頼んでおいてなんだが三人とも気を付けて。」


可能な限り目撃者を少なくするために毎回戦闘中やこう言った事案の解決の時は人払いをしてもらっていた。


電話を切って暫くすると上空でライトを照らし神籬を追跡していたヘリの音が遠ざかっていく。


俺達は神籬の横から前まで回り込んだ。


「あまり損傷させないようにしないといけないけどどうしたもんだが・・・。」


「お主ら二人の属性ではここでこやつ相手だと被害が広がり過ぎるな、ここは妾がこやつを浄化してくれよう!」


龍宮寺(聖母龍)が引き受けるというので俺たちは左右に散開するとそれを待っていたかのようにゴールドドラゴンがその名のとうり金色に輝きだす!


最初まさかこっちでゴールドドラゴンに成るのかと思ったが光が収まったときそこに居たのは例の地下施設でみた金色のゴーレム・リッターだった。


「お主らに言われて久しぶりに使ってみたくなったのでなあ!」


そう宣言すると、そのまま神籬に腰を低くして掴みかかると腕の様に動かしていた大ぶりの枝を躱し幹に相撲取りの様に組み付いた。


組み付いた途端そのまま浄化魔法を行使しているようで金色の光の奔流が同じ色のゴーレム・リッターからあふれ出る。


「やっべえ眩しすぎる!!」


禍神と化した神籬は最初はもがいていたがすぐに大人しくなり龍宮寺(聖母龍)が放すと南に向いて動きを止めると、先ほどまで歩いていた根はすぐさまバキバキとその場で地面を抉り根を張り、まるで元々ここに有ったかのように鎮座した。


どうやら今回も無事に問題解決できた様だった、まあ、俺と劉生は何もしてないんだが・・・。



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