表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/25

災厄の萌芽

戦闘観測任務に就いていた城塞騎士から白龍皇朝皇帝に報告が上がる!


「報告!ローグ殿下及び我が方の竜騎士団による攻撃の効果一切認められず!敵兵力、未だ出現時と損耗なく健在!」


「敵方の攻撃により街道の見張り櫓一基、爆発四散、任に付いていた街道騎士、二名の安否不明!」


「なんと、それは事実か!」


白龍皇朝の執政官が思わず聞き返した。


「はい!間違いありません。」


白龍皇帝が問う。


「敵方の動きは!?」


「こちらの竜騎士団が撤退したところで前進をやめその場にとどまっています。」


「ならば、カエサルを街道騎士の救助に向かわせよ!他にこちらの損害はどうなっている。」


「外壁上から観測した限りでは脱落している竜騎士は見受けられませんでした。」


「そうか。」


そういいながら白龍皇帝が俺と破軍の方に悔し気に向き直ると。


「ハーク皇子、破軍殿、どうやら此度の戦、我々では手も足も出ないようだ、残念ながら君たちに頼る他ない・・・。」






丁度其のころシルバーン外縁部の城塞に舞い戻った白龍皇朝の竜騎士達は心底震えあがっていた。


相手の底が全く知れなかったからだ、たかがアンデットの軍勢など蹴散らせばすぐ済むと思っていたのだが、実際戦ってみるとそんなことはなかったのである。


ローグとカールの二人は何とか報告の為に白夜の塔まで舞い戻った。



「無事かローグ!」


「はい、我々は無事です、ですが・・・。」


「よい、報告は聞いている、街道騎士がもしもの際は家族には可能な限り保証する。」


その言葉をきいてもローグとカールの顔は晴れなかった。


二人から戦闘の詳しい話が為される。


攻撃は当たりダメージも与えはするが何の痛痒も感じていないのでそのまま進んでくる上、

アンデットなのにも関わらず神聖属性も同時に帯びている龍族の魔力で 浄化されて消滅することも無く いつのまにか吹き飛ばしたアンデット達も元に戻っていたという事だった。



その話を一通りきいて破軍が口を開いた。


「お二人から見てアンデットの軍勢は何か攻撃を仕掛けてきましたか?」


「特に攻撃らしい攻撃は何もなかった。」


俺が思わず口を挟んだ。


「まさか、破軍、あのアンデット達が幻影か何かだって言いたいのか?」


「そんなはずはない! 不浄なものの気配はあるし、明らかに攻撃を加えた時 手ごたえはあった、確かに砂漠での戦闘だから砂煙で視界は通らないが。」


破軍が俺達をなだめるようにつづける。


「ハーク、まだそうと決まった訳じゃない、ただ本当にこちらであれほどのアンデットが作れたり、召喚したり出来るのかという事と、もし仮に本当にそれらが可能なのだとしたら、別の可能性を考えなければならないと思う。」


「別の可能性?」


「そう、例えば、迷宮 踏破褒章所持者(ホルダー)が居るのかもしれない。」


そういわれて俺は腰に差している刀に目をやる。


腰に差している刀は、何?あたしの事?みたいな雰囲気を醸し出していた。


「ハークその刀に聞いてみてくれないか?」


破軍のその言葉でみんなの視線が俺に集まる。


「あー、えーと、なんだ、発言を許可するよ、それと質問に答えてもらえると助かる。」


「イエス、マイマスター何なりとお申し付けください。」


「そうだなーなんていうか今の話みたいなとんでもないアンデットが呼び出せたり作れる踏破褒章の武器とかって知らない?」


「はい、一振り有ります。」


氷の刀の発言をきいて白夜の塔内の面々がざわつく。


「それはどんな武器?」


「不死者の王が残した大鎌に相違ないと思われます、能力は使用者の弱点や運を使い潰すまで一定量のアンデットが召喚可能で、不死者の王と同じように操れるように成ります。」


「ちょっと意味がわからない所があったんだけど、弱点を使い潰す?」


「ハイ、例えば物を考えるのが面倒な質だったとします、それが最も弱点だと認識された場合、物事が考えられなくなるまでその弱点を伸ばします。」


「そんな無茶苦茶な魔術が有るのか。」


「どちらかというと魔術体型の内にはありますが効果的には呪詛や呪いの類と言ったほうが良いかもしれません。」


ここで呑気なやりとりをしていると思われたのか、白龍皇朝の執政官がじれて口を挟んできた。


「その大鎌に対抗する手段は何かあるのかね?」


「・・・。」


ん?この刀応えないぞ、どうした?


「むりなの?」


と、俺が問うと。


「私の能力とマスターの魔力が合わされば向かうところ敵なしです、絶対零度の凍気で粉砕して御覧に入れましょう!!」


なんだろう、これから俺達 まじめに戦いに行くんだけど このそこはかとない脱力感、このノリ、何だか誰かに似てる気がする・・・。


しまいに「オホホホホ」とか笑ってるし・・・。


こっちの世界の人って(人じゃないけど)みんなこんな感じか・・・。











ギキイイイイイン


断空の刃を使いカエサルと二名の救護班が見張り櫓のあった場所に到達すると櫓の瓦礫の中で二人の街道騎士達は何とか生きていた。


一人は右腕に刺さった何かの破片が腕を貫通しそこから夥しい量の血を流しており一人は左脚の膝から下が無かったが。


「すぐに止血を!」


救護班の二人が手早く魔術と包帯で止血し再びカエサルがあけた断空の隙間を通ってシルバーンに戻って行った。







その様子を余裕しゃくしゃくでゴーレム・ゲリエに標準搭載されている遠見の魔法で眺めていたイヴォンヌは満足げにほくそ笑んだ。


「クックックック、良いわね良いわね、そろそろじわじわと前進するわよ。」


「「はい」」


メリシャとジェレミーは妙に無機質な返事だけするとイヴォンヌのゴーレム・ゲリエに続いて行軍というには遅すぎる前進をしていく。


それに続いて周りのアンデット軍も一糸乱れぬ前進を始めた。



















「敵軍緩やかに前進を開始しました!」


報告を受けて白龍皇朝の執政官が答える。


「そうか、引き続き監視を続行するように。」




「流石に待ってはくれないか、どうするハーク?」


「この刀がこう言ってるんだから俺だけで良いんじゃないか?」


俺の呑気なセリフを聞いてメイアリアが驚きの声を上げる。


「そんなまさか、殿下、自殺行為です!!」


むしろ俺がメイアリアの剣幕に驚いたが。


「まあ、それもそうか、じゃあ破軍と二人で行ってくるよ、流石にあっちがあれに乗ってきてる以上、ゴーレム・リッターは出そうと思いますけど良いですよね?」


と俺が白龍皇帝に聞くと。


「ハーク皇子の好きにしてくれて構わない、現状の我々 いや、只の竜騎士の攻撃方法ではどうにもならない様だからな。」


俺と破軍は白龍皇帝に一礼するとバルコニーから各々のドラゴンに騎乗して飛び立った。






俺達はレッドドラゴンとブラックドラゴンさんの子供の子ブラックドラゴンの二騎で西の砂漠を低空飛行で飛ぶ。


「よっしゃー行くぜ破軍!」


「応!!」






ドハアア!!!!


ゴンゴンゴンゴンゴンゴン


ドドンッ!!


ハーク達、後方のシルバーン西門が内側からの爆風と共に丸ごとせり上がり大穴が二つ開くと大きな何かが途轍もない速度で打ち出された!


リーン・・・・


チリチリチリチリ


撃ちだされたそれは低空で飛んでいたハークと破軍の二騎に追いつくとドラゴン達が逆方向にバレルロールしたかと思うとすれすれを掠めて砂塵をまき散らしながら着地した。


ドッワアアアアア!!



アーシェリカはブリジットと共に使い魔からの映像を見ていた。


「何!!何あれ!何なのよ!?」


ブリジットはここぞとばかりに喚いている。


(まさか、まさか、まさか!!)


さしものアーシェリカも目を見開き唇を噛んでいた。





















リーンリーンリーンリーン


キンキンキンキン


金属を主に使っている外装が黒光りのする素体に風に吹かれ揺れて触れると独特な甲高い音を鳴らしている。


立ち込める砂塵の中に紅と黒の二機の偉容が現れていた。












その様子は正面にアンデット軍を展開するイヴォンヌ達にも見えていた。


「アハハハハハ!紅龍皇朝にも乗り込んで操作するタイプのゴーレムが有るのね!面白くなって来たじゃない!!」


「これだけの数相手に二機だけとは、目に物見せてやりましょう!」


「二機だけとは舐められたものだ!」


三人の人格の変容に大鎌はほくそ笑んでいた。


「ゆけええ、かかれえええ!!」


イヴォンヌの号令によってアンデット達が隊列を維持したまま全速力で遅いかかる!!






「取り敢えずどうしようか?」


俺が呑気に破軍に聞くと。


「取り敢えずも何もこれ(ゴーレム・リッター)で出た以上、出し惜しみしないでその刀を最大出力で振るえばいいじゃないか。」


「それもそうか。」


「マスター、魔力充填しながら全力突撃ののち真一文字に居合を放ってください私の方で合わせます。」


「あ、そうなんだ、じゃあそれで行こうか、急だったからぶっちゃけ戦術とか何も無かったしそれでいいや。」


「イエス、マイマスター!」


このとき言われるがまま、魔力をこめようとしたのだが どうせなら単に魔力込めるだけじゃなくて冷気の魔力込めたほうが良いんじゃねって非常に余計な事を思いついてしまった。


ドギンンッ!!


冷気の魔力を込めつつゴーレム・リッターで駆け出す!


瞬く間にアンデットの軍勢との距離が狭まる!


打ち合わせに無かった冷気の魔力を込められて氷の刀のくせに「うっそ、冷たい!!」とか何か言っていた気がするがもう遅い!


ゴギンンッ!!


さらに加速し、トップスピードに達するともう少しで音の壁を破るのではないかという所で打ち合わせどうりに居合を放った!!



パン!!!




スファアアア!!


ピリピリピリピリ



バギイイイイイイイイン!!


最初剣風が通り抜けたかと思えば通ったところが凍り付く!


凍り付いたところからビキビキと浸食を広げ真一文字に切られたアンデットの氷の彫像が出来上がっていた。


だがおかしなことに真一文字に斬られて剣風が通り抜けた所に隙間や空間があるにも関わらず俺が斬ったままその場に静止している。


「あれ?」


「マスター ハアハアハアハア、ほんと、凄かった、ハアハアハアハアハアハア・・・。」


何で刀の癖に息が上がってるのか知らないけどあえてそこはスルーして聞いた。


「どうなったのこれ・・・。」


「た、多分、マスターの膨大で過剰な冷気魔力で空間丸ごと凍りつきました・・・。」


「え、これどうなんの??」


「わ、私にもちょっと、この状態は想定していなかったので、判りかねます・・・。」




前半分のアンデット軍が上下に切り裂かれ凍った上にそのままその場でその周りの空間ごと動かないことに増長を増長されていたイヴォンヌですら背筋が凍り付いた・・・。


イヴォンヌが自機の両翼のメリシャとジェレミーの機体を見ると二機共に足元から霜が降りていた。


「メリシャ!!ジェレミー!!」


イヴォンヌが怒鳴っても反応は帰ってこなかった。


「まさか凍らされた、この距離で!?」


未だ五百メートルは開いているだろうと思われるのだが辺り一面があれよあれよという間に白く染まっていく・・・。


「っつ、い、痛!!」


普段それほど重要視していなかった操作盤に自分の手の皮が少し剥がれてくっ付いていた。


事ここに至ってイヴォンヌは自分のゴーレム・ゲリエも丸ごと凍り付いていることに気が付いた。


「なんて、なんて、でたらめなあああ!!」


「くそ、くそ、くそ、動けえええ、動けえええ!!」


イヴォンヌがどれだけ魔力を込めてゴーレム・ゲリエを動かそうとしてもびくともしない。


新たにアンデットを呼び出そうにも現状呼び出している数が同時召喚最大数なのか、何も現れない・・・。


そこでイヴォンヌの耳に聞きなれない声が聞こえた。



「やってくれやがったなあのクソビッチ、この俺をバキッバキに凍らせやがって・・・。」


「何!?誰!?」


「チッ、クソが! 本来は口をきくつもりは無かったんだが・・・。」


イヴォンヌが声の主を辿るとゴーレム・ゲリエの持つ大鎌から声がしていた。


「あなた、まさかインテリジャンスウェポン!!」


「カッ!! バレちゃーしゃーねーな。」


「貴方、何か出来るならやりなさい!!」


「ああ? 俺に命令するとはいい度胸じゃねえか、が、しかし だ・・・。」


「この状況は俺も気に喰わねえ、契約次第じゃ何とかしてやらねえこともねえ!」


「良いからはやく何とかしなさい!」


「俺は何も言って無かったがいいのか、もう契約成立だ、この状況を打破したらお前は俺の言うとうりに動いてもらう!」


「そ、そんな話が通る訳が。」


「それが通るんだなこれが、お前はもう俺が持ち出した話に「良いからはやく何とかしなさい」と言った、もう俺の契約魔術は発動を終えた、お前が何を喚こうが契約は履行される。」


「馬鹿なそんなわけが!!」


イヴォンヌは魔力の流れを読もうと感覚を巡らせると大鎌から伸びた魔術の杭がブリジットのクローンと自分の魂に喰い込んでつなぎ留められているのを感じた。


「さあ、なんとかしてやるよ、そうだなお前の魔力だけじゃ足らねえ、お前の部下の魂も寄越せ。」


「アア ウワ、ウ。」


イヴォンヌが抵抗の意思をもって何かを口にしようとしたが反抗の言葉さえ出なくなっていた。


「ウ、ワ、ウ!!・・・ワかったは・・・。」


大鎌から呪詛のような呪文が聞こえてくると、メリシャとジェレミーの機体から手のひらに乗るぐらいの青白い炎に包まれた珠が現れると大鎌に吸い込まれて消えた。


同時にイヴォンヌも魔力の枯渇の為、意識が闇に包まれた。








俺の攻撃が入ってから暫く空間ごと凍って止まっていたが十分ほどするとバキバキとアンデット達が崩れ始めた。


砂漠だったはずなのに見渡す限り真っ白に成っており、迷宮魔法(ダンジョンマジック)の吹雪の迷宮を思い出させた。


「ハークこれは、過剰な攻撃だったな・・・。」


「いやいや、まさかこんなになるなんて。」


「マスターが急に冷気属性の魔力をこれでもかと寄越すものだからちょっと予定が狂いました。」


「え、それってどうゆう・・・。」


俺達が呑気に話していると真っ白な世界に成った砂漠の真ん中に急激に魔力が集まりだす。


「まさか、一撃で倒してない!」


「私は悪くありません、マスターが急に予定にない事をするからいけないんです・・・。」


「うへえええまじかよおおお!!」


「来るぞ、ハーク!!」



















丁度其のころ、シルバーンの東門に、タイミングが悪いことにアンデットの首領ともいえる人物が訪れていた。


「たのもーー、たのもーーー。」


ドンドンドンドン


城塞騎士が「アンデット!」というや否や城壁から攻撃を加えた!


厳戒態勢のシルバーンだったが故、仕方ないのかもしれないがアンデットの反応、それも吸血鬼だったのだ仕方ないといえよう。


ギキイイイイイイン!!


「何者!!」


そう言いながら攻撃が出てしまっているのは厳戒態勢の為、ご愛敬だったが 


彼女には城塞騎士が放った魔法やカエサルが放った突きを避けるなど造作も無かった。


「なんか、物騒な気配がするなーと思ってたけど、あたし、相変わらずタイミング悪い感じ?」


かなり本気の攻撃をひらりと躱されたうえに著しく呑気なセリフが聞こえてカエサルは毒気が抜けてしまっていた。


「貴女はいったい・・・。」


「あ、そっか、最近の若い子はあたしを知らないか・・・。」


手のひらひらさせながらそう言う。


「刀の手入れを頼みに来たんだけどシュウスイの弟子は居るかな?」


戦いに出たはずのカエサルが戦っていないのを察知してメイアリアを乗せたブラックドラゴンが空から見てぎょっとする。


そのまま、舞い降りると開口一番平謝りした。


『これは!失礼を!』


「ああ、いーよいーよ、なんか、運ていうかタイミングが悪いのは生来の事だから慣れてるし、そもそもシルバーンが物騒な感じって知ってて来た こっちにも落ち度はあるっていうか・・・。」


ブラックドラゴンの態度を察し、メイアリアがもっともな疑問を問うた。


「どなたなのですか?」


カエサルが補足する。


「シュウスイ殿のお弟子さんに御用がある様で・・・。」







メイアリアが質問してからしばらく間が空いた後ブラックドラゴンが答えた。


『・・・・・・剣聖。』

















アンデット軍の中心で急激に膨れ上がった魔力が不意に消え失せたかと思った次の瞬間、二機のゴーレム・ゲリエが突貫してくる!!


ゴーレムの手足には不気味な鬼火の様なものが灯り冷気による凍結を防いでいる様だった。


俺達はそれぞれ一対一で戦闘を開始する!!


ガキン!


相手のゴーレム・ゲリエが突撃の勢いのまま叩きつけてきたバトルメイスを氷の刀でいなして弾く!


ガガン!!


いなしたメイスが凍った砂漠の砂に亀裂を作り、それと同時に鬼火が地面に爆ぜる!!


ドン!!


「あっつい!!あっつい!!あれ熱いです!!!!」


氷の刀から悲鳴が上がるがそんなことを一々聞いている場合ではない!!


ボゴン!!


氷の刀に消極的に成られても困るのでちょっと大量に魔力を絞り出す。


ギキン!!ギン!!


その間も相手の機体と戦闘状態なのは変わらないが。


途端に俺の魔力で悦に入ったのか判らないが刀身からダイヤモンドダストをまき散らし始めた。


二合三合打ち合うたびに徐々にゴーレム・ゲリエの動きが鈍くなっていく。


次第に避けるまでも無い動きに変わり回り込んだら片膝を着いたところで動かなくなった。


「やったか!?」


「関節をこれでもかって位、凍り付かせました、これで今までの様な派手な動きは出来ないはずです!」


戦闘前に密偵の偵察内容を白龍皇帝から聞かされていたのだが その資料によると俺たちの乗っているゴーレム・リッターより随分性能面では劣るという話だったのが 実際こうやって戦ってみると機体の造形や素体に若干の荒さがあるものの本当に俺達の機体より性能が低いのかは甚だ疑問に思われた。




破軍(劉生)の方を見ると丁度短槍がゴーレム・ゲリエの頭部を貫いているところだった。


頭部を失ったゴーレム・ゲリエは外装をのこし素体がばらばらと崩れ、ただの黒い砂のように成った。


そこで妙な魔力を感じたので咄嗟にその場から飛びのく!


ブワアアアア!!


チュイン!!!


敵の三機目のゴーレム・ゲリエが繰り出した大鎌が俺の機体の頭の表面を掠めていた。



「チイイイイイ! 良い勘してるじゃねえかクソがああ!!」


何だか褒められたのだか罵倒されたのだか判らないセリフが敵の武器から聞こえてきた。


続けてガンガン攻撃してきながらべらべらと喋り足りないのか色々とまくし立ててくる。


「こんなクソみたいな持ち主なんざ、とっとと見限って新しい宿主みつけてえんだけどよ、一応は契約だからやるこたやらねえとな!!」


とか、そんな俺達からしたらさっぱり訳の分からないことを喚きながら攻撃してくる。


「せっかく色々と入念に隠蔽魔法かけてやって最高のタイミングで攻撃して見りゃ外しやがってクソが!俺がわざわざ使った傀儡とかも諸々無駄にしやがってこれでどうやってこの局面切り抜けんだオラ!!」


俺が三機目のゴーレム・ゲリエの相手をしている間に破軍が俺が凍り付かせたゴーレム・ゲリエの頭部を短槍で貫いていた。


めっちゃくちゃ口が悪いインテリジェンスウエポンで、びっくりなんだけど・・・。




そういや、この刀逆に何にも言わないな。


そんなこんなしているうちに二機目のゴーレム・ゲリエが砂に還ったのを認めると、何処からか現れた黒い霧と蝙蝠の大群に視界が奪われたかと思ったら三機目の大鎌を持ったゴーレム・ゲリエは消えていた。







どうやら今回の戦いは俺たちの勝利の様だった。















イヴォンヌ達の戦いぶりを最後まで見ていたアーシェリカは珍しく感情を隠すとこも無く強く唇を噛み締め握った拳の隙間からかすかに血がにじんでいた。


そのまま立ち上がるとブリジットに話しかける。


「少し付いてきてもらえるかしらブリジット」


いつもなら嫌味や罵詈雑言、若しくは殺意を浴びせるのだが余りのアーシェリカの形相にブリジットは黙ってガクガク頷いてついて行くことしかできなかった。






































実は、ゴーレム・リッターに乗り変えた所でレッドドラゴンさんに


『こんな年寄りに見得切り飛行させんじゃないよ こっちゃ結構恥ずかしいんだよ!!』


と、言われてしまった・・・。






カッコ良かったと思うんだけどなあ・・・。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ