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増長の増長


ドン!


もう一つの話を聞くのを思い出したブリジットは再びアーシェリカの工房の扉を蹴りあけていた。


それほど時間を空けていなかったのだがアーシェリカの姿はそこには無かった。


「これは・・・。」


アーシェリカの座っていた椅子の前の机の上に余り見覚えのない言語で書かれた魔導書がそこにあった。


魔導書そのものにトラップが有るかもしれないのでブリジットは注意深く魔力の流れなどを観察したが何もなかったので手に取り開くと迷宮魔法(ダンジョンマジック)の解説をしている魔導書だと思われた。


「こんなとんでもない代物・・・、どこでどうすれば手に入るのかしら・・・。」


書いてある言語はさっぱり判らないので推測でしかないが、どのような種族がどんな迷宮魔法(ダンジョンマジック)の魔法陣や迷宮を作りどの様な踏破褒章が得られるか書いてある様だった。


文字と挿絵が交互にありその中に見覚えのある物があった、アーシェリカの使う杖が踏破褒章としてそこには描かれていた。


その迷宮魔法(ダンジョンマジック)の制作種族は母親が生前読んでくれた御伽噺の中に出てくる重震龍という古代龍種だった。


「重震龍が、実在して いた・・・!?」


アーシェリカが現在使っている杖が本当に踏破褒章であるならば当然重震龍も存在したことに成るのかもしれない。


気が付くとブリジットはその魔導書を夢中になって読みふけっていた。


暫く読み進むと(文字は判らないので推測でしかないが)メモ書きが挟まっているページがあった。


そこには不死者の王が制作した迷宮魔法(ダンジョンマジック)と禍々しいデザインの大鎌の挿絵が描かれていた。


メモには石塔作動せず、と記されていた。


「不死者の王?・・・不死者・・・すごく 嫌な予感がするわ・・・。」


















魔導王朝からセレンス村自体は奪還したものの未だに戦争が完全に終わる気配はないので街道騎士がパトロールはするが村民は戻っていなかった。



この星の衛星である月宮殿の公転周期が一年に一周なのでセレンス村の港には大幅な潮流の変化によってあまり北の大陸では見ないものが流れ着くことがあった。


船というには余りにも小さすぎるその木の船は生き物の骨の彫刻で象られていた、南西の群島国家の難破船と思われる船なのだがその上に奇妙な物体が蠢いていた。


夜の闇よりも暗く黒い生き物は魔物を知らぬ物が見ればただのスライムか何かに見えるその何かは、船から岸にたどり着くと僅かな影に吸い込まれるように伸びていき石畳の上で餌を探してついばんでいた雀の足元の隙間から急に染み出し足を絡めとると影の中に引きずり混むように飲み込んだ。


一度、飲み込み終わるとその生き物はみるみる色を変え元の雀の色と形と大きさに戻ると何も無かったかのように石畳の上で餌を探してついばみ始めた。















ドゴンッ!!!




イヴォンヌが振り下ろしたバトルアックスがスカルドラゴンの頭蓋を砕く!


「面倒なことに成ったわね、どうしてこう次々とアンデットがうじゃうじゃとわいて出てくるのやら。」


イヴォンヌは自らも特注したブリジットのクローンに魔術的な補助を借りて取り憑いているだけの死霊だということはすっかり棚に上げまくっていた。


「イヴォンヌ様、この魔導干渉地帯に入ったとき何かありませんでしたか?」


「あたしは何も感じていないわ、そもそも生身の身体があっても細かい感覚は希薄なのよ。」


「そうでした・・・。」


「ジェレミー貴方はなにか感じたの?」


「私も特に何も感じませんでしたが・・・。」


本当はジェレミーには時間の感覚が狂っている感じがしたのだが他の二人が何も感じていないようなので気のせいだと思うことにした。


実はこのジェレミーはイヴォンヌの色だった、見た目はハンサムなのだが何ら抜きん出た才能や能力が何も無いにも関わらずこうしてゴーレム・ゲリエに乗れているのはそれが理由だった。


死ぬまで性的な快楽に縁がなかったイヴォンヌが覚えたての性の悦びに嵌ったため、取り憑いているブリジットのクローンからフィードバックできる感覚の大部分を性的快楽を優先しているが為に他の感覚が希薄になったとは誰にも暴露していなかった。


「次! また来ます!!」


メリシャがそういうと今度は、ゴーレム・ゲリエを大幅に上回る長さのスネークゾンビが森から現れた。


ゾンビのくせに蛇特有の滑らかな動きはそのままに、キングコブラの様にゆらゆらと揺らめいた後、喰らいついてくる!!


メリシャが喰らいついてきた蛇頭に向けてメイスを叩きつけようとしたが寸でのところでするりと躱され機体の手首に噛みつかれた。


ガギン!


「面倒な!」


メリメリメリ


残る手で剥がしにかかるが外れる気配が全くない、スネークゾンビの牙からは毒と思われる紫色の液体が出ていた。


「メリシャ!!」


ゴガシャン!!


イヴォンヌが噛みついているスネークゾンビをメリシャのゴーレム・ゲリエの右手ごと叩き潰した。






その後も多種多様なアンデット系モンスターが次々と現れたがイヴォンヌがあることに気が付いた。


森の近くの草原で戦っていたのだが森の中にある古い石塔に向くとアンデットが一層涌くように成ったのだった。


「あそこに近づかれたくないようね。」


アンデットたちは石塔から距離を取るとそれほど積極的に襲い掛かってこなくなった。


過日ブリジット達がこの付近でキマイラを始末した時はこんな事態は起きなかったのだが本来の目的の前に近くを通るからと言って物見遊山で立ち寄った事が裏目に成っていた。


戦い始めてからほぼ丸一日、メリシャもジェレミーも不眠不休で戦っていた為、疲労困憊だったので石塔から遠ざけ殆ど戦わせないようにしていた。


ゴーレム・ゲリエの魔力は魔法を使わなければかなり温存できるとはいえ、中に乗っている生身の人間には余りにも苛烈な戦闘時間だった。



ドゴオオ!!



それから何時間経ったのだろうか、アンデットなのに炎を吐き自らも燃えながら攻撃してくる、頭部がキマイラのように三つ付いた巨犬を二頭倒した時、変化が訪れる。


石塔を中心に大型の魔法陣が輝き石塔が砕けると中から禍々しい気配を纏った大鎌が現れた!!


「まさか、迷宮魔法(ダンジョンマジック)!!」


イヴォンヌのゴーレムが大鎌を掴むと夕方だった景色が最初のアンデットが現れたと思われる午前の景色に戻っていた。


「イヴォンヌ様・・・。」


「ウフフフ・・・これは傑作だわ、気が付かないうちに迷宮魔法(ダンジョンマジック)に囚われていたのね、けれど踏破した、フフフフ、ハハハハ、ハーハッハッハッハッハ!!」


『この鎌さえあればアーシェリカも倒せるのでは!? この禍々しい魔力あの皇子にも匹敵するかもしれない!!』


そう思うと、イヴォンヌは笑いが止まらなかった。


この時イヴォンヌが入手した大鎌まで笑っていたのを誰も気が付かなかった。


イヴォンヌとメリシャ、ジェレミーの三人は戦闘を繰り広げた場所からほど近い見通しのいい草原で丸一日休んだ後、本来の目的地に向かって行軍するのだった。


魔導干渉を後世に残すほどにこの付近の土地を滅ぼした古代文明の兵器が最低最悪の人物の手に渡るというブリジットの嫌な予感が的中した瞬間だった。
















「事象終極魔術?」


「ああ、そうだ、エルフ族の高位の術者に成ると大概習得してるんだが、精霊魔術を極限まで習得すると途中の経過をスキップしていきなり求めた事象を引き出せるように成るんだ。

俺も当時のエルフの女王から教わったんだが。」


劉生、いや、破軍がゴーレム・リッターの戦闘訓練後に今まで見たことも聞いたことも無い魔術の話をしてきた。


どうやら破軍にはまだまだ奥の手や奥義、裏技が有るようだった・・・。


「この魔術をくらった側からしたら何が起きたか理解できないだろうな。」


「なんだか今一要領を得ないけど・・・。」


「実際見せたほうが早いな。」


そういうと高位の水属性の詠唱と思われるものを始めるが一向に水がわいたり集まったりしない。


「丁度いいからさっき訓練中に割ったあの石を狙う。」


破軍がそういった次の瞬間何も当たっていないのにかなり大きな石が急に吹き飛んだ。


「え!! なんで!?」


「今のは圧縮された水の魔術によって吹き飛ばされる最終的な結果だけいきなり出現させたんだ。」


「えっと、ようするに本来なら水が集まってきてから放出された水が当たって弾き飛ばすとこを弾き飛ばすところだけ出したって事か!?」


「そうなる。」


「いやいやいやいや、実際見せられても、全然要領を得ないんだが・・・。」


物分かりの悪い俺の為に破軍による精霊魔法の奥義ともいえる、事象終極魔術の解説がこっちの世界でもあっちの世界でも続くのであった。

















イヴォンヌ達三人はブロウ近辺の遺跡から出土した古龍の骨が槍に加工が為されたということで槍を受け取りに首都に赴いていた。


素材の骨の大きさが大きさもありブロウのアーシェリカの工房ではゴーレム・ゲリエの製造と調整で手一杯だったため魔導王朝の首都にある大工房で加工することに成ったのだった。


本来の任務はこれだったのだが思わぬ足止めにあい時間がかかったが三人のゴーレム・ゲリエはこれまでにないほど装備が拡充することに成った。


ゴーレムゲリエの背面の武装マウントに取り付けるために柄が長めに作られた骨ばった槍を首都の工房から受け取るとメリシャとジェレミーのゴーレムの武器マウントにそれぞれ二本づつ取り付け一路ブロウに向けて首都を後にするのだった。



その間もイヴォンヌが手に入れた不死者の王の大鎌は薄く笑っていた。


未だこの三人の誰も手に入れた大鎌がインテリジェンスウェポンだという事にも勝手に魔術を行使していることにも気が付かないのだった。



ブロウに向けて首都を出たはずだったイヴォンヌはなんの疑問も抱かず紅龍皇朝に向けて海を渡っていた、正確にはゴーレム・ゲリエの足で海中を走っていた。


後ろから付いてくるメリシャもジェレミーもなんの疑問も挟まなかった。


大鎌はもう魔術を行使していなかった、目的は達成されたからだった。


この大鎌が密かに魔術で為したことは、イヴォンヌの増長を促した、過信させた、そもそも持っていた弱点を魔術でさらに伸ばした。


そして、元々あまり何も考えずにイヴォンヌに付き従っているメリシャとジェレミーも魔術で弱点をさらに伸ばされ、自分たちの主ならそうするだろうと何の疑いも持っていなかったのだった。











































静謐な朝だった、いや、おかしいぐらいに静かすぎた、いつもなら窓の外に鳥のさえずりが有るはずだが何も聞こえてはこなかった。


俺は妙な悪寒を覚え頭と体をたたき起こすと、隣の部屋で寝ているはずのことりがドアを バン!と開けて入って来た。


「お、お兄ちゃん、怖いのが来る!!」


ほどなくしてメイアリアも何かを察知したのか俺の部屋に入って来た。


「殿下。」


「ああ、どうやらついに来たみたいだ。」






シルバーンの外壁から西の街道沿い二十キロほどの所に夥しい数のアンデットの群れが整然と隊列をなして待機している。


西の砂漠は紅龍皇朝の領土ではないが簡単に侵入され過ぎな感が正直否めなかった、まあ、魔導王朝側の大陸とは四国と中国地方ぐらいしか離れてないので渡ろうと思えば


何とでもなるのは容易に想像できるし西方諸国には魔導王朝の手が伸びているのは過日のつるし上げ会議でも明白だった。



カーディナルはメリンと共に竜騎士団再編成の為に南都ザンリーンに戻っているので西都シルバーンには白龍皇朝皇帝と皇子のローグ、第一騎攻師団メリン姉さん以外の第二騎攻師団、(副長が女性だったことも有り実はほとんど女性だった。)


白龍皇朝が復帰したことで地上の生活に戻った竜騎士とカエサルさん以外の城塞騎士、街道騎士、それとシルバーンを本拠地とする一般冒険者のサポートで戦う事に成ると思われた。


あとは虎の子のゴーレム・リッターを何処で出すかが肝心なのだが・・・。


白龍皇朝の騎士や各、皇朝の騎士達から選抜して六十五機まで揃えることが出来ているが如何せん練度が充分とは言い難かった上、余りにも人員が足らないので俺と破軍とメイアリアだけでなく、俺やメイアリアと連携が取れやすいだろうという事でエリザ、カレン、ユリエ、リーナ、ライノルトそして成績上位の騎士学院の生徒までも訓練をしていた。


男子生徒の何割かは大興奮だったようだが・・・。(俺もそうだったが)






緊急時なので外から白夜の塔のバルコニーへ上がりそのまま軍議になった。


そうこうしているうちに白夜の塔に居る白龍皇朝皇帝の元に次々に報告が挙げられていく。


「あちらの戦力はゴーレム・ゲリエ三機とアンデットの軍勢およそ二万といったところでしょうか、


ゴーレム・ゲリエに当たらなければアンデットの軍勢は竜騎士と騎士で問題無いかと思われます。」


とドレイク。


「シルバーン南西の街道沿いの町や村々は平気なのか?」


白龍皇朝の執政官が答える。


「常駐騎士の報告によるとアンデットの大群が通過したりはしていないとの事です。」


「・・・こちらの近くに来てからアンデットを量産した・・・?」


「そんなことが可能なのかドレイク?」


「ですが状況的にそう考えるしか・・・聖母龍様がいらっしゃれば何か知っておられるかもしれませんが・・・。」


「センシズの霊廟に籠られておでましに成っていないらしい、過日の戦闘で消耗しているのかもしれん、ご無理させるわけにはいかん。」


実際は全然そんな事微塵も無いんだが流石にここで余計なツッコミを入れる気に成ることは無かった。


「先鋒は私と第一騎攻師団が勤めます。」


メイアリアが当然のように言い出したのだが。


「ちょっと待ってもらえるかなメイアリア、今回は、白龍皇朝に華を持たせてくれ。」


と白龍皇朝のローグにはっきりと言われてしまった。


「それに、僕たちが地上に復帰してから初めての戦だ、ここは君たちは前に出ずにシルバーンを守ってもらうとしよう。」


「ですが・・・。」


「まあ、危なく成ったら勿論助けに出てきてもらって構わないけどね、それに・・・。」


「それに?」


「向こうのゴーレムの事も有る、実際、僕たち地下に籠っていた白龍皇朝の竜騎士がどの程度通用するのか、通用しないのか、それを早いうちに見極めないといけないからね。」


ということに成った。


シルバーン内の白龍皇朝の竜騎士が皇帝を除く四十八人ほぼ全員が順次四騎編隊で飛び立った。


カンカンカンカン!


緊急警報の鐘が鳴らされシルバーンは厳戒態勢が敷かれ全ての城門を閉じ、普段それほどの水量が無い掘りも急ピッチで満杯にまで水が回される。


都市の外壁側の住民もシルバーン城近くの避難所に指定されている貴族の屋敷に避難誘導が開始された。











ダダダダダダダ!!


バゴン!


「ねえ!!」


アーシェリカの工房の扉をいつものように蹴りあけながらブリジットが入って来た。


「こんな朝早くからなんなのよ?ブリ子」


「あの色ボケババアまた勝手に戦争仕掛けてる!!」


そういいながら使い魔の視点で映像を映している水晶玉を見せる!


「あら、綺麗に映ってるわねえ、十一席が何やらかすか判らないからってしっかり使い魔飛ばしてたのね感心するわ。」


「そんなことはどうでもいい!!どうすんのよこれ!!」


「まあ、なるように成るでしょどうせやられても・・・。」


そこでアーシェリカがイヴィンヌのゴーレムが持っている大鎌に気が付いた。


「なに?!」


「これ・・・。」


「なんなの?」


「へえ、面白いことに成ってるじゃない、そうね、それもそうよね、確かに十一席は生きていない。」


「ちょっと何かあるなら教えなさいよ!」


「貴女がこの前ここから持って行った本に載ってる大鎌を十一席が持ってると思って。」


「ちょ!」


アーシェリカが戻ってくるまでに戻し損ねていた事がばれていたのでブリジットはばつが悪かったが、それよりも今は大きな力を絶対に持たせてはならない人格の人物が持っていたのだった。


「ちょ、ちょっと借りただけよ、べつにいつも魔導書は好きに見ていいって言ってたじゃない!!」


「確かに見て良いけど、だからといって持ち出されっぱなしで外部に流失してしまっても良い物じゃないんだけど。」


「ううっ!」


そういわれてブリジットもあの本のやばさは何となく判っていたので手に持っていた水晶玉を珍しく放り投げたりしないですごすごとアーシェリカに手渡して自分の部屋に例の本を取りに戻るのだった。


「うふふ、さあて、十一席が常に戦を求めるあの大鎌でどうなるのか、そして紅龍皇朝の皇子がそれをどうするのか見物ね。」
















これまで散々小競り合いとはいえ戦争を繰り返してきた両国の兵が街道近くの砂漠に対峙していた。



おおよそ二万と思われる様々な種類のアンデットが種類ごとに規律をもって陣形を保ち整然と整列している。


だからこそ数が判ったのだがそれが逆に非常に不気味な光景に成っていた。


本来、知性が無いはずのアンデットの軍勢を多少の知性を与えフルコントロール出来ているように見受けられた。


ぱっと見では通常のゾンビ、スケルトン、スネークゾンビ、スカルドラゴン、ゾンビドック、ゾンビウルフ、オークや、ゴブリン、オーガ、トロール等のゾンビも見受けられ、一般的なアンデットが勢ぞろいしていた。


「ローグ殿下、これはとんでもない相手かもしれません・・・。」


白龍皇朝筆頭竜騎士でカエサルの従弟でもあるカール・ハイウィンドが思わず口に出した。


「そうだね、流石にここまで規律が完璧に取れてると気味が悪いね、まあ、だからと言ってここで放置するわけにもいかないんだけど。」


午前9時30分 本来ならアンデットにとっては不利な影響が日光によってかかりまくるような時間帯なのだが


白龍皇朝の竜騎士が全て視界に出揃ったところでドラが鳴らされそれを合図にアンデットの軍勢が前進を始める!


歩幅もアンデットの種類によってまちまちなのだが完全に同じ速度で陣形を保ち前進してくる!





「第一波かかれ!!」


ローグ皇子、号令の元、白龍皇朝の竜騎士も行動を開始する。


四騎編隊で反時計回りにアンデットの軍勢を取り囲み各々が最も得意とする属性のワイヤードランスで攻撃を開始した!


あるものは旋風、あるものは断空の刃、あるものは真空、あるものは振動波。


ドゴー!ブワー! ギイイイイイン!!


第一波目の攻撃によって砂埃をまき散らしながらアンデットの軍勢は吹き飛び、切り裂かれ、はじけ飛び、ほぼ三分の一がバラバラになったように見えた!


最初の攻撃が終わり砂埃が晴れ始めるとまるで攻撃を意に介さないとばかりに同じ速度で前進を続けていた。


「第二波!かかれ!!」


第二波の攻撃が加えられたが結果は先ほどと変わらなかった、攻撃を明らかに受けてバラバラに成って脱落したアンデットは確かに居るのだがまるで攻撃そのものを意に介さないかのように何も起きてないように進軍速度が変わることはなかった。


「なんだこれは!」


「なんなんだ!」


「なぜ止まらない!!」


そこここで竜騎士たちの驚嘆の声が上がる。


「ローグ殿下!われわれの攻撃が通じておりませぬ!」


近場に飛んでいた歳若い竜騎士から悲鳴のような声が上がる。


竜騎士たちの士気が下がるのでローグは表情に出さずに驚嘆していた。


『どうなっている、如何に弱点属性ではないとはいえ我ら龍族の魔力は神聖属性を同時に帯びている、消滅しない道理はない』


ボボン!! グワアアア!!


その隙を察したのかアンデットの軍の中心に居るゴーレム・ゲリエから竜騎士が使うワイヤードランスの倍以上の大きさの骨ばった槍が飛んできた!


「殿下!!」


ローグの四騎編成の竜騎士たちは寸でのところで散開して飛んできた槍を避ける!!


「く!!」


避けた所で槍の行方を見やるとシルバーンと街道が真後ろに在ったことに気が付く!!


「なっ!!」


ドゴハア!!


投擲された槍の軌道が多少曲がっておりシルバーンに直接槍が降るという最悪の結果にはならなかったが街道騎士の見張り櫓に命中し任務に就いていた二名の街道騎士ごとバラバラに爆ぜた!


「引け、引けーーー!!」


驚愕の色を隠せないローグの代わりにカール・ハイウィンドが号令を下し四十八騎の白龍皇朝の竜騎士達は撤退した!










「フフフフ、ハハハハ、ハーッハッハッハッハッハ」


成すすべなく撤退した竜騎士達を見てイヴォンヌは笑いが止まらなかった。


ゴーレム・ゲリエで全軍停止の合図を出した。


「このまま攻め込まないのですか?」


メリシャにそう聞かれ楽し気にイヴォンヌは応える。


「いままで散々煮え湯を飲まされてるのだからじわじわとなぶり殺しにした方が愉快でしょ。」


イヴォンヌの合図によって停止したアンデットの軍勢は竜騎士の攻撃でバラバラに成ったはずのアンデットも全て元通りに成り戦闘が始まる前の状態に戻っていた。



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