帰還 新たな問題
首都近郊の高層ビルの最上階で監視任務に当たっている者が二人が居た。
「報告します、監視対象βが目を覚ましました。」
「そうか・・・、解った、上に報告しておく・・・。」
「環境変数が・・・。」
「違うぞ君野、環境浸食係数だ、環境変数ではパソコンのOSかなんかの話じゃないか。」
「す、すみません主任、ちょっと数値が余りにも凄かったもので・・・。」
「監視対象αの値と遜色無い位の数値だ、目を覚ませばそのぐらいの値には成るだろう・・・。」
そう言いながらも監視カメラの映像の数値を見て考えを改めるのだった。
「だがまあ、この数値は確かに脅威 だな、街中にいつ爆発するか判らない爆弾が転がっているような物だからな。」
そう言いながら主任と呼ばれた男は自らの組織の上層部に報告を上げるために自らのオフィスに戻ると備え付けの電話で電話を掛けた。
「もしもし三船だ、何か問題かな黒藤?」
「監視対象βが目を覚ましました。」
「そうか、参ったな、交通事故でそのまま死んでくれたらよかったのだが、回復してしまったか。」
「我が国の国民をそのように言うのは如何なものでしょう・・・。」
「そういうな黒藤、国民の生命と財産を守るのが私たちの使命だが、守られる必要のない圧倒的な個人ほど厄介な者はないだろう?」
「それは確かにそうですが・・・。」
「あと、まだ、確定情報ではないが、ドイツの監視対象γも帰国子女として戻るかもしれん、正直、彼女まで日本に戻ったら我々の胃がいくつあっても足らん・・・。」
「うちの面子で三人も監視対象を抱えるのは正直きついんですが・・・。」
「残念ながら彼女の実家は都内だ、諦めてくれ。」
「・・・まあ、善処はします。」
「場合によっては接触も視野に入れておいてくれたまえ。」
「な・・・本気ですか?」
「私が冗談を言った覚えが有るのかね?」
「判りました・・・。」
黒藤は電話を切り自分のオフィスを出て来ると画面の中の監視対象αとβを眺めながら大げさともみえるため息をついてみせた。
「ハァ・・・。」
「どうかしましたか主任?」
「どうもこうも無い、上からの通達で下手したらもう一人監視対象が増えるかもしれん・・・。」
「うへぇ・・・。」
「人員の補充は期待できん、最悪の場合はこちらから接触する必要もあるかもしれん。」
「接触ですか!?下手に彼らを怒らせて暴発したらどうするんですか!!」
「知らん、その時は上が責任を取るだろう。」
「主任・・・。」
「なんだ?」
「死なない、ですよね・・・?」
「どうだろうな、理性的な若者であることを祈るしかないな・・・。」
俺たちが生まれた世界に戻って来た、日本に、とくに国内情勢や世界に変わった様子はなかったが、俺と劉生には世界が激変するような事態だった、神々の武器庫の契約の指輪がきちんと右手の薬指に嵌っているのだ。
「竜哉、退院はいつ頃に成りそうだ?」
「そうだな、10月の中頃には退院できるんじゃないか、治りが早くてみんな驚いてたし・・・まあ、劉生のおかげで早くて当たり前なんだけどな・・・。」
「それもそうだな・・・。」
俺たちが戻ってからもこちらで眠りにつけば何日かに一回あちらで目が覚めてあちらの世界でも日々を送っている。
魔導王朝が宣戦布告してきたものの、実際には全然攻め込んで来ていないので俺と劉生と白龍皇朝のローグと三人で例のでっかい鎧のゴーレム
ゴーレム・リッターの戦闘訓練や模擬戦闘を地下の格納庫でみっちりと行っている。
こっちの元の世界の方が何日か居るので体感的には早いように感じた。
「何を現実逃避しておるか! 妾がこうしてこっちまで出張って来とるのに!!」
考えないようにしたら何とかなるのではと思っていたが、なんの解決にも成っていなかった・・・。
俺が目覚めてから二日後にゴールドドラゴンさんが俺たちの学校に普通に転校してきたのだ、何を言ってるかわからないだろうが俺にもよく分からない。
「簡単に言うと逆召喚じゃ!」
とかなんとか言っている。
「神々の武器庫にお主らの魔力が余りまくりで貯まりまくっておったからなちょっと新しい術式を組んでみたら思いのほか上手くいってこの通りじゃ!!」
「しばらく大人しくしてるんじゃなかったんですか?」
怪我と全く関係ない軽い頭痛を覚えながらも厭味ったらしく聞いてみたが。
「あっちの妾はきちんと大人しく寝とるから気にせんでよい。」
「そっすかーねてるんですかー・・・。」
「しかし、ゴールドドラゴンさんが普通に転校してきているけど、どうやって高校生として転校出来たんですか?」
と劉生。
「最もな疑問じゃな!」
「そうですよ、なんで龍宮寺 真理亜なんて名前で転校して来れるんですか?」
「それはな!」
「それは?」
「企業秘密じゃ!!」
ビシっと親指を立ててウィンクしながら宣言しやがった・・・。
こりゃーこっちの価値観ねえから何やってるかわからねえなーと思うんだが無理に聞き出そうとして下手に拗ねられても厄介なのでこの場は保留にしておいた。
まあ、実際の所はこっちの世界に俺たちの様に自分が居るか探してみたら居てしまったっというだけなのだが。
「しかしこちらの世界には驚かされたのう。」
「どうゆうところがですか?」
「いやなに、これだけ魔素が空気中に満ちておるのにざっと見た所、何処にも魔術の痕跡が見当たらんのでなあ。」
「それは驚かされることなんですか?」
俺たちには聖母龍の言う事にいまいちピンとこないのだったが。
「色々な世界の可能性があるとはいえこれだけ魔素がしっかり満ちていれば魔術や魔導は勝手に発達するはずなんじゃよ、それも息をするように。」
「そんなもんなんですかね?」
「そんなもんじゃ!! あーそうじゃこっちの其方たちの魔力も神々の武器庫に送るれるようにしておこう、如何に魔術的痕跡が見当たらないといっても今のままでは魔力探査が行えるものが居たら
居場所もなにも露見しっぱなしで不便じゃからな。」
そういって俺の右手を取りなにがしか唱える。
「大丈夫なんじゃないですか?」
と俺が呑気に言ったのだが。
「念のためじゃ念のため、ほれ破軍も手を出すのじゃ、ついでに妾も探知されないようにしておかんとの。」
俺たちは会話を続けたかったが丁度俺たち三人の魔力を神々の武器庫に流して隠す術式を組んだところで入院している病室に芽衣子と美鳥さんが戻って来た。
こうして聖母龍をここに連れてきたのは面倒見のいい芽衣子だった。
転校してきたばかりで右も左も判らない龍宮寺 真理亜と早く打ち解けるために入院している俺の所に全員ではないが他のクラスメートと共に見舞いに来たのだった。
暫くして他のクラスメートたちは家が遠かったり門限が早かったりでみな帰り、いつもの四人プラス龍宮寺 真理亜 (聖母龍)というかたちに成った。
「龍宮寺さんって、本当に綺麗な金髪だよねえー羨ましい。」
芽衣子の発言に美鳥さんもうんうん頷いている。
「わ、妾の祖母がドイツ人でな、く、クォーターなんじゃ・・・。」
まったく、もう、転校してきちまったもんは仕方ねえけどさ、ど・こ・で、覚えたんだよ、そんな言葉・・・。
そう思っていると返事がかえってきてしまった。
『インターネットとTVじゃ。』
コッチに戻ってきてもモノローグ読まれるとは思ってなかったので油断していたのだが。
「はあ・・・。」
とため息交じりに返事するしか無かった。
劉生も苦笑していた。
なんだかよく分からない芽衣子と美鳥さんは不思議そうな顔をしていたのだった。
ガキン!! ガイーン!!
ハークの機体の氷刀が前進しながら破軍の機体の短槍をカチあげるとそのままの勢いで前蹴りを放ったが、破軍の機体は瞬時にその蹴りよりも高く飛び上がっている!
そのまま落ちてくるのかと思えば短槍を地面に突き刺し胴体ごと大きく捻り右脚で蹴って来た。
バギン、ガラガラガシャーン
蹴られたハークの機体がまるで側転でもしてるかのように回転しながら訓練用のゴーレムまで吹き飛んだ。
「そこまで!!」
ローグの声がかかりハークと破軍の模擬戦は破軍の勝利で終わった。
蹴り飛ばされてバラバラに成ったハークのゴーレム・リッターの破片がキラキラと宙を舞い元に戻っていく。
ある程度ゴーレムが元に戻ったところで心配そうに見ていたメイアリアが居てもたっても居られずゴーレムに駆け寄る。
「殿下大丈夫ですか?」
ハークの機体の背面ハッチが開くとハアハアと肩で息をしながらハークが転げ出てきた。
「ハアハアハア、だ、大丈夫だ、ちょっと、 息が、 切れてるだけだから・・・。」
メイアリアの肩を借りるとハークはようやっと立ち上がることが出来た。
「殿下手から血が・・・。」
「強く握り過ぎてたか・・・。」
「すぐに止血致します。」
メイアリアは手練れた手つきで俺の手に包帯を結ぶと止血するために軽めの回復魔法をかけてくれた。
エリザはゴーレムから降りてきた破軍にタオルを渡しながら話しかける。
「破軍様、お怪我はありませんか?」
「ああ、問題ないよエリザさん。」
エリザもメイアリアと同様に破軍を心配していたのだが、戦歴の差というものなのであろうか、ここぞという時は圧倒的にハークよりも強いので模擬戦で負けるということが一度も無かった。
子供のころ読んだ絵本の中の最強の竜騎士が目の前に居る、そして自分などとかなり仲良くしてくれているので天にも昇るここちなのだが、
如何せんハークとメイアリアの様に破軍に肩を貸してどうのということが無かったのでエリザはかなり寂しかった。
模擬戦闘が終わって破軍と一緒にひとっ風呂浴びることに成った、勿論治療も人払いも済ませた後、地下施設の大浴場なのだが。
「はーー負けた負けた、これで40戦40敗じゃねえか!」
「中々いい線行ってたと思うけどな。」
「そんなこと言いやがってまだまだ余裕綽々じゃねえか!」
「それだけ破軍の戦歴がすさまじいって事だと思うが。」
「実際どんな気分なんだ?破軍の戦闘技能の記憶があるんだろ、なんか不思議じゃないのか?」
俺にそう聞かれて劉生は。
「実際 か、そうだな・・・こういう時どうすればいいのか、というのはある程度指針があるな、経験があると言ってしまえばそれまでかもしれないが。」
「そうか・・・あーそうだ、それと、あの最後の動き何だよ、速過ぎるだろ!」
「あれか、あれは加速する魔術を一秒だけ使っただけだが。」
「くそーそんなことまで出来るのか、毎度毎度あの手この手でやられてる気がするけど、どれだけ引き出しあるんだよ全く・・・。」
「確かにかなり引き出しはあるな、まあ、それだけじゃ無く精霊殿の精霊と相談しながら戦ってるのも大きいかもしれない。」
「そうか、俺は戦いながら魔力制御で手いっぱいでそこまでできてないな・・・。」
そうなのだ、ゴーレム・リッターには精霊殿が内蔵されている、それこそ魔力炉に魔力が残っていれば延々とそこに居続けてくれるし(騎士学院の授業って一体何教えてんだろうって思ったが)
精霊魔術の行使も容易に成っていた。
まあ、それでも全く破軍(劉生)に歯が立たないのだが・・・。
ふて寝を決め込んだ翌日、朝早くからブリジットはアーシェリカの工房に赴いていた。
ドゴン!!
ノックも何もなくただ苛立ちだけをぶつけながらアーシェリカの工房の扉を蹴りあけていた。
「随分おかんむりね、ブリ子・・・。」
そういわれブリジットはいつもよりも本気の殺意と魔力を込めて身に着けていたナイフを投げる!!
が、アーシェリカの手前の空間でナイフは急に勢いを失ってその場に止まったかと思うと床に落ちた。
「あのババアにまでゴーレム・ゲリエを与えて何を考えているの!?」
「何を考えているも何も、作ったゴーレム・ゲリエの数よりも乗り手が少ないのだからそうするしかないでしょ。」
「最悪・・・。」
ブリジットにそう言われ、アーシェリカは去ろうとしていた彼女に話しかける。
「別に仲良くしろとは言わないわ、ただ、一応、同じ宮廷魔導士なのだから協力はしてもらうわ。」
バン!!
アーシェリカの言葉が終わる前にブリジットは来たときと同じ勢いで出て行った。
死霊である宮廷魔導士、十一席、イヴォンヌにゴーレム・ゲリエを与える、アーシェリカのこの判断が後の災いに繋がるとはこの時は誰も知る由も無かった。
首都近郊の高層ビルの最上階の一室で監視任務を今日も続けている者が二人いた。
「主任、監視対象α、β、γの環境浸食係数が一般人と変わらない数値にまで下がりました。」
「どうゆうことだ!?」
「判りませんが、こちらから見えた範囲ですが対象γがαとβに何かしたようです。」
「これは困ったな、遠隔監視が効かなくなるぞ、環境浸食係数がでかいから追跡出来てたんだ、今度からカメラの映る範囲と目視で監視しないといけないじゃないか。」
「どうしましょう?」
「どうもこうも無い、上が判断するだろう、まあ、最悪の場合を想定して言いたかないが・・・遺書は、 書いておけ・・・。」
「!!・・・そう、ですか・・・。」
「それに、そもそも環境浸食係数が変えられるって事は。」
「・・・どうゆうことですか?」
「君野、寝ぼけているのか?」
「彼らは魔術かそれに類する能力が扱えるということに成る!!」
「!!」
「終わったよ、俺の人生もここまでか、君野、もし俺が先に死んだらあとは頼むぞ。」
「黒藤主任・・・。」
黒藤は自室の電話から上層部に報告する為に電話を掛けた。
「もしもし三船だ、この短期間で連絡とは新たな問題か黒藤?」
「監視対象、α、β、γの環境浸食係数が急激に無くなりました。」
「ほう、それは吉報だな。」
「いえ残念ながら、凶報です、対象γが細工をした後に急激に無くなったので、対象γは確実に魔術的な能力かそれに類する能力があると考えられます。」
「・・・それは事実かね?」
「残念ながら・・・。」
「私一人では判断できん、官邸に報告後、方針が決まり次第追って通達する。」
「判りました。」
黒藤が言い終わる前に電話は切れていた。
二時間ほどして黒藤のオフィスの電話が鳴った。
「はい。」
「黒藤、方針が決まった。」
「はい、どうなりましたか?」
「接触を試みる事に成った。」
「やはり、そうなりますか・・・。」
「もし、万が一が有ったとしても骨は拾ってやる。」
「・・・判りました。」
「人員と人選と方法は君に一任する、健闘を祈る。」
そこまで言い終えると黒藤の返事を待たずに一方的に電話が切れた。
「君野、彼らと接触することに成った、残念だがついて来い。」
「はい、判りました・・・。」
「下手に個人で居るところで接触すると警戒されるかもしれん、ここはあえて三人揃っているときに接触する。」
「はい・・・。」
「彼らはいつもの病院か?」
「はい、今日は三人だけのようです。」
「それは好都合だな。」
「ただ、」
「ただなんだ?」
「今日は、監視対象γの視線がカメラの方を見ていることが多いような気がします。」
「気のせいではないのか?」
「私も最初はそう思いましたが、ほぼすべての監視カメラと目が合ってる状態なので・・・。」
「そうか・・・ならば念のため君野、君はここに残れ、監視を止めろとでも言われたら止めることが出来んからな。」
今日はかなり調子が良かったので(そもそも劉生のおかげでほぼ完治してるのだが。)病室から車いすに乗って病院の一階から中庭に三人で散歩(?)に来ていた。
学校であったことなどを二人から聞かされているときに正しくサラリーマンといった格好の紺のスーツを着た中肉中背の男が現れた。
「三上君だね。」
始めてあった男に名前を呼ばれ俺たちは警戒の色を強めた。
「何者じゃ?」
俺たちを代表して聖母龍が問う。
「私はこうゆうものでして・・・。」
そういいながら一枚の名刺を差し出してきた。
「内閣特務公安、主任、黒藤令児?」
「政府のお巡りさんが何の用ですか?」
「君たちと友好関係を結びたい と、思ってね・・・。」
「なんじゃ、今一、要領を得んな・・・。」
「実は君たちの様な環境浸食係数が高い若者をスカウトしているんだ。」
「環境浸食係数?」
「ああ、ごめんごめん判りにくかったね、ありていに言うと君たち世代には魔力といったほうが良いかな。」
此方の世界に来て初めて魔術の話が始まりそうなので聖母龍が興味津々に聞き始めた。
「魔力の高い妾達をスカウトしに来たといったな、スカウトしてどうするのじゃ?」
「実は昨今の異常気象などには原因があってね、出来ればそれを鎮める手伝いをしてくれると助かるんだ。」
「いきなりそんなことを言われてすぐに信じられると思うのか?」
と劉生。
「どこから話したものか・・・。」
黒藤の話をまとめるとこうだ、何でも気象改変装置や気象兵器の使用禁止条約を四十年ほど前に結んだのは良いが、そのせいで逆に各国に雨乞いの魔術的儀式にそうゆう使い方も有るなと気が付かせてしまい、
各国それぞれ雨乞いの魔術的儀式などは兵器ではないという体で条約の抜け目を突き、表向きは地球温暖化などと一般人をだまし、他国の経済に打撃を与えるために過剰に雨乞いなどをする輩が各国に現れ始め
気象バランスが崩れて来てしまっているという事だった。
「という訳なんだ。」
「にわかには信じられんな。」
「そうか、それで・・・。」
「何かあったのか劉生?」
「ああ、この前、多少そう認識できる事はあった。」
「ふむ、破・・・、 劉生がそういうならそうなのじゃろう、其方の感覚は信じるに値する。」
「では、信じて貰えるのかな?」
「それは又、別の話じゃ、そもそもお主が本当にこの国の秩序を守る側か、判らんであろう?」
黒藤は、そういわれて明らかにがっかりした感じに成っていた、おれは嘘が付けないタイプの人間なんだなと妙に可笑しくなってしまった。
『そんなに虐めなくても良いと思いますよ。』
『しかしのう。』
『実際、ゴールドドラゴンさんも、この人が嘘を言ってるように見えてないんじゃないですか?』
『こ奴はこんな感じかもしれんがこやつの上がどのような輩か見えん内は信用できないじゃろ。』
俺たちが念話でそんなやり取りをしているのを横目に劉生が話しかけた。
「黒藤さん、あなたの上司は誰ですか?そういったことも教えて頂かないと我々はあなたの発言が信じかねますが。」
「そ、それはそうだろうね、本当はここでその話をする予定では無かったのだけども。」
そういいながらポケットからスマホを取り出すと電話を掛け始めた。
「黒藤です、 はい、 はい、はい、では。」
「うちの一番上の上司と電話がつながった、代わってもらえるかな?」
そういいながら黒藤は俺達にスマホを差し出してきた。
俺たちは少し逡巡したが俺が受け取ることにした。
「もしもし。」
「もしもし、三上君かな、私は官房長官の須賀山義雄という、一応ほぼ毎日TVで声も顔も出ていると思うが。」
「・・・本 物?」
「それを疑われるとこれ以上抗しようが無いが、君たちが良ければ退院後にでも首相官邸まで会談に来てもらえると助かるのだが。」
「そうですね、考えておきます。」
「どうか前向きに考えてほしい、では黒藤に代わってくれ。」
そういわれ黒藤にスマホを返す。
「一応、これで俺の用は終わりなので帰らせてもらうよ。」
「しばし待つが良い。」
ゴールドドラゴンにそういわれて黒藤はおもいっきりビクついていた。
「其方たちがしておる妾達への監視を辞めてもらおうかの・・・。」
「!!」
「気が付いておらぬと思ったのか?生まれたときから散々人の視線には晒されておる、今もそことそこ、妾達に協力を要請するならば即刻、辞めて頂こうか。」
ゴールドドラゴンさんが病院の防犯カメラを指さしながらそう言った。
「わかった、俺から辞めるように言おう・・・。」
先ほど返したばかりのスマホを取り出すと部下に電話をかける。
「君野、監視は終了だ、あちらからそのように指摘されてしまってな。」
「!!、判りました、では、監視を終了します。」
その様子を見て満足したのか、ゴールドドラゴンさんが。
「ふむ、素直でよろしいの、ゆめゆめ忘れるなよ監視されて居ったらすぐに解るからの。」
「承知した、それでは、俺はこれで失礼するよ。」
そう言って黒藤令児はそそくさと帰って行った。
「どう思います?」
「そうじゃな、まあ、嘘は言っておらんじゃろうが気象改変云々はあくまでも建前じゃろうな。」
「そうか、劉生はどう思う?」
「確かに何日か前に天候がおかしい感じはした、あまりに雨が降り過ぎるので少し散らしたが。」
劉生はすこし考えてからこう言った。
「だが、本音は恐ろしいほどの魔力の持ち主が居るから、管理出来ないか模索してるって所じゃないかな。」
「ふむ、・・・。」
二人にそういわれて俺は考え込むだけだった・・・。
騎士学院の一日の授業を終え、ゴーレム・リッターの戦闘訓練は今日は休みだったので破軍(劉生)とあっちでの対応をどうするかのアイディア出しをしていた。
「ああやって本物かはまだわからないが、あっちでも活動するには何か方法が必要だな。」
「どうゆうことだハーク。」
「いやだって、あっちで人が大量に死なないように守らないといけない訳だろ俺たちは、その活動するときに姿が丸見えだったら色々面倒だろ。」
「普通にこっちの竜騎士のフルアーマーを着れば良いんじゃないか?あれなら顔も全部見えないだろうし。」
「悪くないとは思うけど、日本でそれ着て活動すると浮きすぎな気がするんだよな、もっとメカメカしいほうがいいともうんだけど。」
「それこそアイ○○マンみたいなのって事か?」
「!!っていうかそれでよくね!!」
「それって?」
「竜騎士のフルアーマーをアイ○○マンみたいなのに改造してやれば良いんじゃん。」
アイディアが出てからの俺たちは行動が早かった、余っていた織覇瑠金を久しぶりに引っ張り出し鍛冶弟子コンビを呼び出し普通にシルバーン城の武器庫に何個も有る竜騎士のフルアーマーを五人で相談しながら解体して
俺と劉生でメカメカしいデザインを考え、鍛冶弟子コンビと錬金術師のフルニも巻き込み五人で工房にこもってああでもないこうでもないを繰り返し元の竜騎士のフルアーマーの雰囲気を残しつつ
メカメカしい竜騎士アーマーを四体、同じデザインで色違いのを紅と黒と白と蒼のを二週間ほどで作ったのだった。
途中で俺が。
「これ着たまんまゴーレム・リッター乗れたら便利じゃね?」
とかなんとか言ったせいで、一週間で終わりそうだったのが二週間かかったという事があったが・・・。
「よし試しに着てみようぜ。」
竜騎士のフルアーマーの雰囲気を残したのでアイ○○マンじゃなくて仮〇〇イダーみたいな見た目に成ってしまったが・・・。
「これフルアーマーで顔まで完全に見えないけど何もつけてないかのように良く見えるな。」
「戦闘行動に支障が出ないように頑張りました。」
とフルニ。
「この視認性は凄いな、おまけに息も苦しくない。」
「隠密性も考慮しまして海中でも行動できるようになってます!」
とレイチェル。
「魔力炉に魔力が沢山有ったので殿下のワイヤードランスの調整と改造もやっておきました。」
テコにそういわれて俺のワイヤードランスを確認するとゴーレム・リッターで一本の刀としても使えるように変形機構が追加されていた。
さっぱり予定してない機能と、とんでもない改造をサラッと足されていたのだった。
鍛冶弟子コンビも何もしてなかったわけじゃないのね・・・。
学院の図書館も見放題の上に凄腕の錬金術師や魔導士が身近に居るから勉強には事欠かなかったらしいけど頑張りすぎ。
出来上がった鎧の出来が抜群に良かったのでみんなご機嫌だったが俺が有ることに気が付いた。
「てゆうか、これ、神々の武器庫で呼べんのかな?」
「俺たちで明らかに作ったし素材の織覇瑠金もハークのだろう、問題ないと思うが。」
そう思ったらすっごい試したくなってしまって今着たばっかりの鎧を脱いだ。
「じゃあ呼んでみるよ。」
「ハアア!!」
神々の武器庫から指輪で鎧を呼ぶ!
バゴン!!
ズシンと体が重くなったかと思ったら鎧を既に着ていた!!
「お、おおおお!!」
都合よく呼んだら勝手に着るところまでとか便利すぎたが問題もあった。
床が砕けていたのだ。
「これ呼ぶとき跳ねるなりなんなりしないと地面割るな・・・。」
「そうだな、俺も一応試しておくか。」
そういって破軍はひらりと跳ねると着地する時には鎧を着ていた。
「なんか、跳ねてる時に呼んで姿が変わるとか、まんま・・・。」
「俺もそう思った・・・。」
仮〇〇〇ダーじゃねーか・・・。
俺が病院から退院する日に成った、黒藤令児に貰った名刺の電話番号に連絡して退院する日を教えたらわざわざ部下の君野という女性と退院のときに見舞いに来た。
「退院おめでとう三上君。」
「おめでとうございます三上君。」
「なんか変な感じですね、何度か電話でやりとりしましたけど、まじで官邸勤めなんですね。」
「信じてもらえて良かったよ、なんなら自宅までうちの公用車で送るけども。」
「それは遠慮しておきます、そもそもそんな真っ黒の車で帰ったら身近な人間に不審がられます。」
「それもそうだよね・・・そういえば今日は他の人達は?」
「平日なんで普通に学校や仕事ですよ。」
「ああ、それもそうだね、失念していたよ。」
「じゃあ俺は帰りますね、特に荷物も何も無いんで。」
「あ、ちょっと待ってくれるかな?」
「まだ何か?」
「単刀直入に聞くけど君たちは何者なんだい?魔導士?超能力者?逸れともそのほかの何か?」
「話半分に聞いてくれることを条件としてきいてくれるなら言いますけど。」
「わかった、ここからの話は正確じゃなくても構わない。」
「そうですね、まあ・・・仮○○○ダー・・・かな?」
「ええ!!?」
「いやいや、正確な情報じゃないですよ、あんまり詳しい事は言えないですけどちょっと事情があって、人命救助をしないといけないって事は教えときます。」




