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魔獣討伐1

ブリジットと、その近衛、ニコラとジャンはゴーレムの工房のあるブロウから海岸沿いを西に進んでいた。


何度か試作状態のゴーレム・ゲリエの機体に乗った事はあったがこの紅い機体はそれを軽く凌駕する性能だった。


それほど速度を出して行軍しているわけではないが紅龍皇朝の竜騎士が乗っているドラゴンの巡航速度と遜色ない移動速度が出ている。


「ああ、もう、こんなに早いんじゃ景色を見てる余裕もないじゃない。」


両翼後方のブリジットの近衛の二人の機体も問題なくこの速度でついてきている。


口うるさく言われていた魔力炉も一応はみているがそれなりの距離走り続けているが、ほんの僅かしか減っていなかった。


「あんなに言ってた割に全っ然、まったく!!減らないじゃない、ほんと、色々と、うっとおしいわ・・・。」




彼女たちが向かっている先は海岸沿いの洞窟だった、出発してからゆうに二時間以上が経過しているが、ゴーレム・ゲリエの魔力量はほとんど減っていなかった。


それに静止して休憩すると僅かに減った魔力炉のゲージも回復し始めるのだ。


「これだけの長距離走ってきて動けなくなるどころかちょっと休憩したらそれなりに回復するじゃない。」



暫く行くと目的地が見えてきた、ブリジット達が乗っているゴーレム・ゲリエがそのまま進めるほどの大きな洞窟が海岸沿いにぽっかりと口を開けている。


近くまで来てゴーレムを停止させ背中のマウントにある盾とメイスを装備する、メイスの先にも盾にも件の人工宝玉が取り付けられていた。


「こんなところにほんとにゴーレム・ゲリエの素材に成るような魔物が居るのかしら。」


「次席、近隣の村より冒険者ギルドにジャイアントクロコダイルの退治依頼も出てますので・・・。」


後ろに控えていたゴーレム・ゲリエから音声で聞こえてきた。


今までの愚痴がゴーレムの通信(?)で丸聴こえだった事に一瞬焦りを感じたが、後ろの二人とは学生時代からスリーマンセルだったので、自分の性格をよく知っているのだから気にしても仕方ないと気が付くと考えるのを辞めた。


「はいはい、じゃあ行くわよ。」


各々、メイスの先端に火炎属性魔術でたいまつ代わりに火を灯すと洞窟に入る。


洞窟の中に入りしばらく進むとゴーレムの膝ぐらいの深さの地底湖にたどり着いた、周辺には鍾乳石が立ち並び天井から滴る水によって濡れていた。




不意に大口が現れたかと思うと噛みついてきた!!


ガギン!!


ブリジットは咄嗟に噛みついてきた口に盾を向け防御する!!


僅かに欠けた盾の破片がキラキラと輝き回転しながらすぐに元あった場所に戻る。


「あーもーイライラする・・・なんでこんなの乗ってモンスターと殴り合いしなくちゃいけないの!あたしは魔導師だっての!!」


イライラをぶつけて殺してしまっていい相手が目の前に居たのでセリフとは裏腹に顔はニヤけていた。。


「次席!!」


ブリジットの近衛の二人も戦闘に参加する。


「ニコラ、ジャン、貴方たちは左右から前脚をねらって!」


「「はい!」」


そう返事したのもつかの間、噛みついてきた口が下がるかと思うと今度は尻尾が飛んで来た!



ガギン、ガシャーーン




まるで大きなガラスでも割ったかのようなけたたましい音をたてながら尻尾の軌道にいたニコラのゴーレムが弾き飛ばされる!!


鍾乳石の柱の中まで弾き飛ばされたニコラのゴーレムは右ひじから上が粉々に吹き飛んでいた。


頭と胴体は何とか守って居たのですぐにバラバラになったゴーレムの破片が松明代わりの炎に照らされ回転しながらキラキラと宙を舞いゴーレム本体に戻っていく。


そんな様子を見ながら戦闘中にも関わらずブリジットは呑気にも綺麗だなと思ってしまっていた。


尻尾を叩きつけられたときに偶然だったのか、ニコラのゴーレムのメイスが大鰐の尻尾に深々と突き刺さっていた。


無論、そのメイスも自動でゴーレムに戻って行こうとするので、さしもの大鰐も痛かったのか途端に狂ったように暴れ始めた。


メイスにはまだ火炎魔術の炎が灯っており突き刺さったままブスブスと尻尾を焦がし始めている。


暴れたせいでメイスが尻尾から外れたのだが尻尾の先から三分の一程の所に尻尾の骨が見えるほど大きな傷が開きドス黒い血が流れ出ていた。


その後、三機とも完全に防戦一方だったが暴れすぎて出血大量によって大きな鰐の化け物は不意にこと切れた。


洞窟の地底湖は鰐の血で赤黒く染まっていた。



「あーーもーーー!何もまともに出来なかったわ、イライラをぶつける暇も無いじゃない!!!」


「初陣ですので上出来だと思いますよ。」


「そうですよ、このゴーレムの能力が判っただけで充分ですよ。」


「あー、はいはい、そうね機体も皆も、一応無事だし、素材も手に入れたし、任務完了ね。」


「そうですよ。」


ここでブリジットは大事な事に気が付いた。


「でさあ・・・これ、持って帰るのかぁ・・・。」


自分たちのゴーレムを軽く凌駕するサイズの鰐の死体を見て三人はげんなりするほか無かった。


行きは良かったのだがジャイアントクロコダイルの死体を運ぶのに帰りは二日以上かかることが容易に想像できた。













「あついいいいい、臭いいいいいい、重いいいいい。」


大鰐の死体を持って帰る間、延々と悪態をついていたのだが、ブロウ近郊の見覚えのある海岸まで戻ってきたところでブリジットの我慢が限界を超えてしまった。


近くの砂浜に大鰐の死体を八つ当たり気味に放り投げ、ゴーレムの後部ハッチを開き飛び降りてくると、パイロットスーツの胸の留め具を力任せに取り外して壊し自分のゴーレムの方に放り投げるとそのまま海に飛び込んだ。


「ップァアア・・・ああ気持ちいい・・・暫くこうして居たいわ・・・。」


「次席、ブロウに先に一度戻って回収班を呼んできます。」


ジャンにそう言われ何の反対意見も無かったブリジットは


「はいはーい、よろしくー。」とだけ言い自分とスーツの浮力で海面に漂いながら物思いにふけることにした。




帰りがけに血の匂いに釣られて群がって来たワイバーンやバイコーン、サーベルタイガー等とも戦っているのだが、ワイバーンの炎や毒のブレスを吹きかけられても何の問題もなかった上、じれて爪で掴み掛かって来たところをメイスで殴ったら一撃で倒せてしまい、バイコーンは角で突きかかってきたところを盾を叩きつけたら朦朧としたのでメイスで滅多打ちにして倒し、サーベルタイガーはジャンのゴーレムに飛び掛かって来たときに爪が引っかかって抜けなくなったところを一度メイスで殴ったら動かなく成ったのだった。


「だからってこの程度の装備で本当に紅龍皇朝に勝てる気なのかしら・・・それにしたってこの短時間でこんなもの開発してくるとかどんな脳みそしてるのよあいつ・・・。」


「セレンス村に持ってったゴーレムの自動生成装置だってあの時も出来立てほやほやだったじゃない、いくら天才だって言っても限度があるでしょーよ・・・。」


「不自然過ぎる・・・絶対に何か裏があるはずだわ・・・。」


疲れた身体と精神に鞭打って何とかここまで戻ってきたが、ブリジットはいつの間にか眠りに落ちていた。





気が付くとブロウの自分にあてがわれた部屋のベットで寝ていた、いつものネグリジェに着替えている。


「ブリ子あなたほんと子供ね。」


そう言われてカッとしながら振り向くとアーシェリカがニヤニヤしながら椅子に腰かけていた。


「うっさい!!」


手近に有った櫛にしっかりと魔力を込めるとアーシェリカに投げつけた、だが、アーシェリカは難なくその櫛を受け止めて見せた。


「少しは話を聞きなさい、イライラするのは構わないから。」


「何よ、何の用よ、素材は取って来たんだから文句無いでしょ!!」


「あのねえ、あなたたち三人の戦闘記録見せてもらったけど、なんであんな戦い方したの?」


「は!? 言ってる意味が解らないんだけど!!」


「あのサイズの魔獣相手になんで魔術を使わないで殴り掛かったか聞いてるの。」


ブリジットは完全に失念していた、ゴーレム・ゲリエが紅龍皇朝のドラゴンと【取っ組み合いが出来る!!】ぐらいのサイズなので、殴って戦うものだと勝手に勘違いしていたのだった・・・。


完全に自分の落ち度だったのだが、目の前のアーシェリカ相手に素直に非を認める訳もいかないので。


「むしゃくしゃしてたのよ!!」と、言うしかなかった・・・。


そのセリフを聞いてアーシェリカは、はぁあっとため息をついてから


「次は、ゴーレムに乗っている時も普段と同じように魔術を使って戦うように。」


とだけ言い残し出て行った。












アーシェリカはブリジット達が持って帰って来たジャイアントクロコダイルの死体があるゴーレム・ゲリエの工房に検分に来ていた。


「でもほんと、これ見事ねえ、偶然なんだろうけど、ほぼ血だけ抜いて倒してるんだから運が良いのか悪いのか判んないわ。」


それもそのはずで、魔術を使わずにメイスだけで戦い、偶々重要な血管に刺さって倒して無ければこんなに見事な素材が損傷も無く手に入ることは無かっただろう。


アーシェリカは続いて、ブリジット達のゴーレムを検分し始める。


ゴーレムの膝から下が少し赤みを帯びており防戦一方だった割には上半身もかなり返り血を浴びていた。


「返り血もそれなりに浴びてるし、ちゃんと吸収して性能に上乗せ出来てるみたいね。」


「フフフフ本当にブリ子は優秀だわ。」













翌日。



「はぁ??何それ!?」


アーシェリカからゴーレム・ゲリエの特性の説明を一切聞いてなかったブリジットはゴーレム・ゲリエの魔導技師と錬金術師に、今回の戦闘後に性能が向上している箇所の説明をされて一切感情を隠さなかった。


「い、いえ、ですから戦闘で倒した魔獣から魔力や特性を吸収して・・・。」


「はいはい、そうゆう事ね。」


「へ?あ、あのう・・・。」


完全に話が噛み合っていなかったがブリジットは嫌々ながらもアーシェリカの元に向かうのだった。








アーシェリカの工房のドアを怒鳴り散らしながらブリジットが入って来た。


「ちょっと聞いてないんだけど!!」


扉を蹴り入って来たブリジットを見てさしものアーシェリカもきょとんとするしかなかった。


「何の話?」


「ゴーレム・ゲリエの性能がどうとかよ!!」


アーシェリカからしたら何故いつもそんなに怒っているのか正直よく分からなかったのだがブリジットは常にイライラしているのでそのことはスルーしてゴーレム・ゲリエの説明を始めた。


そもそもブリジットがちゃんと聞いていなかっただけなのだが・・・。


「やっと聞く気に成ってくれて嬉しいわ。」


「前置きとか要らないから。」


「性能が向上する話よね。」


「そう!どこをどうしたらそんな無茶苦茶な魔術構造に成るのか聞いてるの!」


アーシェリカはブリジットの魔術理論やその理解力には一目置いていたので、本来ならば話す必要のない箇所も逐一丁寧に説明することにした。


「初代の魔術が完全に死霊魔術だったことは知ってるわよね?」


「まあ、知ってるわ、それとゴーレム・ゲリエとどんな関係があるの?」


「わかりやすく簡潔に言うとその応用よ、対象の死体、血液、死霊となった霊魂、魔力、その他もろもろを吸収して魔力総量や特性を機体に縛り付けて固定して使用できるようにしてあるの。」


「じゃあ、あんたの機体が鈍化の呪詛を使えるのって、要するにあの外装の骨の力って事?」


「簡単に言うとそうね、基本的に死霊魔術の応用だから死体や死霊の能力を限定的ではあるけど行使できるように成るの、あくまでも死体の状態で行使出来る能力だから色々と限界が有るけれど。」




ブリジットはアーシェリカの話を一通り聞いて、ああ、この女は本当に紅龍皇朝を滅ぼす気なんだなということが確認できてしまった。


ゴーレム・ゲリエをうまく運用できればそれも不可能ではないのかもしれないと思うほどに。


そしてあわよくば自分が活躍して早々に戦争を終わらせれば、父親である国王の傍に居られる時間も増える可能性もあるのではないかと思った。







一週間後、ブリジット達のゴーレム・ゲリエの性能をさらに上げるために再度出撃することに成った。


ゴーレム・ゲリエの詳しい話を聞いてしまったので魔獣討伐に出るのに何の不満も無くなってしまったことがブリジットには不満だった。


難儀な性格だった。


「結局あの女の指示通りに動くのがベストだとかほんと、嫌に成るわ!!」


アーシェリカが国王に進言をして今の戦争状態に成ったので戦争が無ければ宮廷魔導士二席のブリジットは国王のそばに居られたはずだったので彼女の苛立ちはもっともだったが


アーシェリカがシルバーンに乗り込んで紅龍皇朝に改めて宣戦布告をしてしまったのでこの戦争で勝って戦果を上げて国王の傍に戻るしかないとすっぱり切り替えることにした。



元々おもいきりは良いほうなので頭を切り替えてからのブリジットは粗削りだがゴーレム・ゲリエの戦術の飲み込みは早かった。







今回は馬車三台の回収班も同行していた。


本来回収班が同行する予定では無かったのだがジャイアントクロコダイルの一件でブリジットが回収班が一緒じゃないと絶対に嫌だと駄々をこねたのでこうなった。


ジャンもニコラも帰りまで素材を守ったりとてんてこまいに成らずに済みそうで、最初は万々歳だと思っていたがそんなに甘い話には成らなかった。



魔導王朝の国内は紅龍皇朝ほどきちんと街道が整備されているわけではないから、ゴーレム・ゲリエと馬車がそれなりの速度で移動していればでかなり目立ってしまう。


そのせいで何度も何度も魔獣やモンスターの襲撃に遭っていた。


ゴーレム・ゲリエ三機のみで来ていれば走り去ることが可能なのだがいかんせん普通の馬車も一緒なので出てくる魔獣やモンスターを片っ端から倒す羽目に成っていた。


「なんでこんなに次から次へと湧いて出るのよ・・・。」


「行軍速度が遅いのが悪いのだと思いますが。」


とニコラ。


「むう、じゃあやっぱり回収班は一緒だとダメだって事!?」


そんな話をしている間にも二足歩行でラプトルタイプのトカゲの群れにぐるりと囲まれてしまっている。


ゴーレム・ゲリエに乗っている三人には問題に成らないサイズだが回収班の馬車に乗っている生身の人間にはたまったものではない。


「もう!面倒くさい!大きめの使うわよ!!」


「次席、魔力量は・・・。」


ジャンのセリフをかき消すかのようにブリジットは大声で詠唱をはじめる!


今回から新しく製造されたジャイアントクロコダイルの骨と皮と腱の複合素材で出来た鞭を装備すると鞭の手元から先端まで明らかに過剰といえる数の魔法陣が列をなして並ぶ!!


魔法陣ごと鞭を振り回すと大量の水の刃が辺りに居た二足歩行のトカゲをこれでもかと切り裂く!



周囲一面の草木まで刈り散らした所でブリジットの機体は休止モードに入って停止した。




「え!なによこれ!? 動かないわ!ちょっとどうなってるのよ!!」


ブリジットが魔術で戦闘を行うときちんと魔力炉のゲージが減っていることに気が付いたのは自分の機体が動かなくなってからだった。






精霊王国と魔導王朝の境には神樹の森が広がっているのだがその森の手前には神樹ではない古木が生い茂る森があった。


神代の後に始まった大魔導時代に土地や森に呪いや瘴気その他、抵抗力の無い生物が近づくと生物そのものの性質が変わってしまう魔導干渉が今も色濃く残る森だ。


そのため度々この森には魔獣やよくないものが吹き溜まっており猶更、神樹の森への道のりを険しくしていた(そもそもこちらから神樹の森に入ろうとする者はまずいないが)。



ブリジット達は冒険者などではどうにも成らないぐらい強力な魔獣が発生したという事で回収班の馬車は少し離れた河原に待たせこの古木の森に赴いていた。


「ここまで来たのは良いけど、これゴーレム乗っていけないじゃない・・・。」


ゴーレムが通れないほど鬱蒼と木々が生い茂り進むためにはこの木を伐り倒して行かないと成らなかった。


「これもう一気に燃やしたら魔獣も倒せるんじゃない?」


「いえ、流石にそれは精霊王国の神樹の森とも隣接しているのでこの森を燃やし尽くしたら精霊王国にも宣戦布告するようなものですが・・・。」


「はーあ、じゃあ、二人とも何かいい案はないの?」


と、ブリジットが気だるげに聞くとニコラが、


「森の中まで伐り進んでからある程度進んだところで広場を作って待ち伏せるのが一番面倒が少ないと思いますが。」


「あーうん・・・それ充分面倒なんだけど、でもまあ、それしかないか、戦えるスペースが無かったらそもそもどうにもならないし、森に入らなかったら縄張り荒しもしてないし・・・。」


「ジャンは何かいい案有るのかしら?」


ブリジットがジャンに話をふったその時、耳障りな金切り声を上げながら二足歩行のラプトルタイプのトカゲが群れで飛び掛かって来た!



キシャアアア!!



「え、え? まだ何もしてないじゃない!!」


ブリジットの驚きはもっともだったが襲い掛かって来たかと思われた二足歩行のトカゲは我先にと彼女達のゴーレムには目もくれず森から逃げだして行く。


一番最後だったトカゲの足首に大きな蛇が喰いついたかと思えば途端に倒れ痙攣し始める。


トカゲに毒が回ったことを確認すると大きな蛇が巻き付きそのまま上に持ち上りこちらに顔を向けたままバックで森に戻っていく。


蛇が戻っていった先はライオンの尻尾の位置にあたるところだった。


ライオンの頭があるべきところにはライオンの首とそれと同じサイズの山羊の頭と白頭鷲の頭も付いていた。


「あれが今回の魔獣なの?」


蛇の部分はトカゲをライオンの頭の方に降ろすと蛇、山羊、獅子、鷲、の四つの頭は器用に食い千切りながら食べ始める。


「混成魔獣キマイラって言ってましたからどうやらそうですね。」


「アーシェリカの奴がブルードラゴンで作ってたけどやっぱりああゆうのって気持ち悪いわ・・・。」


キマイラはトカゲを平らげ終わると何事も無かったかのように踵を返して森の奥に戻って行こうとしていた。


「丁度いいから奥に戻る前に喧嘩売るわ。」


そういうとジャイアントクロコダイルの骨と皮と腱の複合素材で出来た鞭を装備するとキマイラに向かって叩きつける!


明らかに距離が遠かったのだが先端に魔法陣が浮き上がり鞭の勢いをそのまま上乗せした水刃が迸る!!


ビヒャアアア!!


もうほとんど向こう側に向いて居たキマイラの尻尾の大蛇の部分に水刃が炸裂した。


先制攻撃をもろに喰らったキマイラの蛇の尻尾は半ばからボトリと落ちると黒々としたコールタールの様な血を辺りに撒きながら暫く蠢いた後に動かなくなった。


普通の魔獣や獣、モンスターならここで怒髪天を突く勢いで襲い掛かってきそうなものだが痛覚が鈍いのか感覚が無いのか、さも気だるそうな動きでこちらに振り返った。


「ああ、もうやだ気持ち悪い、嫌な事思い出しちゃった・・・。」


「いえ、次席、あのキマイラ向かってきますけど。」


「ごめん、今回パス。」


「ええ!?、何でですか??」


そう問答している間もキマイラはだるそうだが向かってくる。


「ああゆう混成魔獣とか合成魔獣って痛覚とか危機感覚とか、ちゃんと機能しなくなっててそうゆう感覚が無いのも居るみたいなの。」


「おまけに殺さないと死なないぐらい生物としての恩恵が失われてて壊れてるから死んでもニヤニヤしてるとか当たり前なのよ・・・。」


「なんか可哀そうですね。」


「そんな考え方も有るのね。」


などと感心していると、こちらにそのまま向かってくるかと思われたキマイラは先ほど切り落とされて動かなくなった蛇の部分に喰らいつくと先ほどと同じように器用に食べ始めた。


「うえ、気持ち悪い・・・。」


ブリジットが驚いて吐き気を催しているうちに、ジャンとニコラは動いていた。


二人とも魔術の詠唱を始めると左右に散開した。


その動きを見て狩猟本能は一応残っている様でそれなりの勢いで走り始めたが今一攻撃にやる気が感じられなかった。


ジャンとニコラの装備は相変わらずメイスと盾だったがきちんと魔術で攻撃していた。


氷の魔術でニコラが足止めをすればジャンが熱線系の魔術で動きの鈍ったキマイラを焼き切る!


色々なところが焼き切られて徐々に悲惨な状態に成っているがそんなことは気にも留めずポイズンブレスを吐いたりフレイムブレスを吐いたりして来ていた。


そして二人の連携が七度決まったときジャンのゴーレム・ゲリエのメイスから放った熱線がキマイラのライオン体の心臓を正面から焼き貫いていた。



ズズン・・・。



見た目よりも遥かに重量を感じる振動音と共にキマイラが倒れた・・・。



暫くすると体内の燃えやすい何かに引火したのかキマイラの体がおかしな色の炎をあげ轟轟と燃え上がり始める。


「なんでこんなに燃えるの!?」


「次席、このままでは森に火が回ります!」


「キマイラの死体を森から離すわよ!」


ブリジットとニコラとジャンは手分けしながら轟轟と燃え上がるキマイラの死体をゴーレムで引きずって森から離した。


森に火が移らない所までキマイラを移動させたところで三人のゴーレム・ゲリエの見た目に変化が起きていた。


キマイラの紫焔を浴びた箇所が紫の燐光を帯びている。



暫くするとキマイラの死体は爆発的に大きく燃え上がると炎と何かが三人のゴーレムに吸い込まれると骨だけ残して燃え尽きた。


ブリジット達では何がどうなったか判らないのだが、ゴーレム・ゲリエの魔力容量が一割ほど増えていた。




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