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這い寄る者

第一、第二騎攻師団が到着したのだが一匹対、十五騎で戦ってるにも関わらずどんな攻撃を仕掛けてもそばから再生する上、こちらは僅かにでも触れられれば致命的なダメージに成ってしまう化け物を相手になんら決め手が無かった。



『ほんとにとんでもないねえ、久しぶりの手強い相手に舌なめずりしてる場合じゃ無かったねえ。』


ああ、それでニヤニヤしてたのか、プロフェッサーって呼ばれてるぐらいなのに戦うの大好きなのかよ・・・。


『馬鹿をお言い、鈍った身体を戻すのに丁度良かったからじゃないのさ、ついこないだまで窮屈な廊下から教室に頭突っ込んで講義してたんだよ。』


またモノローグ読まれてる、まあ、その位じゃないと連携が取れないってのは最近は理解したから良いんだけれども・・・。


「それじゃあ教鞭をとっていたレッドドラゴンさん何か妙案は無いですか?」


『あたしに聞くのかい!? そうだね、凍らせてから焼き切ったりはしたのかい?』


「すでに何度かやってます。」



ビュウオ!!



俺たちが作戦を立てているのかと察知したのか蛸の触手が伸びて襲ってくる!


結構な高さに居るにも関わらず真面目に避けないといけないぐらいに速度と攻撃範囲がとんでもない。

蛸のような口(?)から蛸墨の様な溶解液も飛ばして来るので油断すると回避で手一杯に成ってしまう。


『まったく、こんな厄介なのを第三騎攻師団はどうやって撃退したんだろうね。』


「そういえばドレイクさんたちは海上であまり見ないタイプのクラーケンと戦ったって言ってたけど・・・。」




ギキイイイイイン!!


カエサルさんや白龍皇朝の人たちが使う断空の門が開くと漆黒の竜騎士が現れた。



「破軍だ!!」


『これは、どうやら今回の主役はあっちの様だねえ、お手並み拝見と行こうじゃないか!!』


俺たちが見ている間にも破軍が様々な属性の精霊魔術攻撃で黒い怪物に攻撃を仕掛けている、伝承や絵本によると水と雷がメインだったはずなのだが、

黒龍皇朝系の龍族が得意としない他の属性の精霊魔術を大威力でバカスカ行使している・・・。



そのうち何かを発見したのか、一切の攻撃を止めると雨雲を集め始めた。


こちらからも援護をしようとしたとき見覚えのあるハンドサインで手出し無用を伝えてきた。


触手や溶解液を避けながら破軍が雨雲を呼んでいるのを何も援護をしないので他の竜騎士たちはいぶかしんでいたが・・・。


雨雲が辺りを覆い始め夜の星々からの光が遮られる。


ぽつぽつと雨が降り始めた。


「もしかして弱点は水か!」


『それなら確かに海上なら楽に勝てるさね!!』


他の騎士たちも気が付いたのか雨や水が操れる面々が雨をさらに多く強いものにしていく。


最初は何も変化が無かったが、雨脚が強くなるに連れて黒い怪物の体表が雨によって少しづつ白い煙を上げ小さくなっていく。




どんどん水によって焼け爛れて燃える、というのもおかしな話だが煙を上げながら小さくしぼんでいく。


最後まで残ったのは心臓の様に鼓動する肉片だった、破軍が槍でそれを突くと捕らわれていた魂が浄化されて消えていった。


俺は他の騎士やカイン副長、メリン姉さんたちと互いの無事を確認しながら破軍の健闘を称えるために近づいた。







「やっぱり、劉生か・・・。」


「その声は竜哉だな、何だかよくわからないがこうして厄介事の後に話すのは久しぶりだな。」


俺たちの会話を聞いて他の誰も何の話をしているのか理解できていない、それもそのはずだった。


俺たちは日本語で会話していた。







「レッドドラゴンさん、それと皆も、ちょっと言いづらいんだけど俺たち二人にしてもらって良いかな、それと先にシルバーンに戻って戦闘の報告をしていてもらえると助かるんだけど。」


レッドドラゴンさんはあからさまに疑問を抱いている表情だったが。


『よく分からないけど、まあ、良いさね、ほら団長殿の命だ、あたしらは先に戻るよ。』


「ハーク・・・。」


「まあまあ、メリン皇女殿下、男同士で積もる話も有るのでしょう、シルバーンの方も心配ですから戻りましょう。」


普通に不満だったメリン姉さんもカインさんがなだめながらシルバーンに戻って行った。





















「空、晴れてきたな。」


「ああ、もう雨雲呼んで無いからな。」


何から話したものか、と考えていると破軍、いや、劉生の方から話し出した。


「昨日は自宅で普通に寝ただけだったんだ。」


「そうなのか?お前も何か大怪我でもしたのかと思ったけど。」


「寝て起きてみたら黎子が金髪に成っていたから驚いた。」


ん?誰だ?あれ、えーと・・・。




「エリザか!!そう言えば性格や髪色がまるで違うから全然気が付かなかったけど確かにそっくりだ!!」


それから俺はこの世界の時間で半年前に来たこと今まで有った事、様々な事柄を話した。


劉生から聞かされた話によれば俺が事故で病院に運ばれてから丁度一週間だという。


破軍の戦闘スキルや考え方が混じっていることや寝起きに妙に頭痛がしたということも言っていた。


俺もよくよく考えてみれば性格がなんとなくナンパな野郎になってた事や確かに急に頭痛があることを思い出した。



劉生の奴が普通に寝ただけだったということに驚いたがそれは要するに俺にも言える事なのではと思い始め、二人で会話しているうちに病院でまだ昏睡状態だから戻れていないだけなのかもしれないなという推論に至った。


「ならさ、お前明日あっちで起きてこっちの魔法とか使えたら俺に回復魔法でもかけてくれないか?」


「ああ、そんなことなら構わないが、ふつうに起きてこっちの能力が元の世界でも使えるとは限らないぞ・・・。」


「それならそれで仕方ないから回復するまでのんびり待つさ、時間の流れ方が違うような気はするからこっちだと相当のんびりしそうだけどな。」


「了解した、もしあっちでもうまくできそうだったら適度に回復しておく。」


「それと思ったんだけどおまえちょっと性格明るくなったか?」


「よく分からないが少し砕けた感じには成ったかもしれないな、それよりも竜哉の方こそさらに明るくなった感じがするが?」


「そうか? まあそんなに変わって無いと思うけどな。」





ある程度話したので戦場だった砂漠から街道まで戻り、シルバーンを目指して二人で帰った。


直ぐに街道の向こうにシルバーンの外壁の門が見えてくる、暗いので俺にはよくわからなかったが、門の前にエリザとメイアリアが待っていた。



「殿下、ご無事でよかったです。」


「ああ、結局、劉、・・・破軍が倒してくれたから俺は何にもしてないけどな。」


そういいながら拳を突き合わせたりしながら長年の親友に再会したかのような雰囲気を醸し出していた。(事実そうなのだが・・・)


「そうでも無いさ、あれを一人で足止めできるんだ、相当なもんだと思うけどな。」


俺たちがこんな短時間で意気投合していることに驚いたのかエリザは目を白黒させていたが、意を決して尋ねてきた。


「破軍様。 お怪我はありませんか?」


えーそんな雰囲気のエリザ、俺、知らなーい。


「ああ、特に問題ないよ、黎、・・・エリザさん?」


破軍に名前を呼ばれて真っ赤になってうつむいているエリザは非常に珍しかった、いつぞやのメイアリアを見ているようだ。
















今回の騒動の責任が我が国に有るとして急遽開かれた国際会議で糾弾されることとなったのだが・・・。


「紅龍皇朝並びに白龍皇朝は今回の責任をどうとられるおつもりかな?」


エリザとカレンに言い寄っていた執事の国の馬鹿王子が問うてきた。


カーディナルが口を開く前に精霊国の国王エネルリィサが先に問い返した。


「どのような責任でしょうか?」


「今回、我が国の奴隷や家臣が被った負傷や損害についてだ!」


「これは異な事を仰います、西方諸国の方々は紅龍皇朝が現在休戦状態でありいつ戦端が開かれても不思議ではない状態だと周知されていたはずですが?」


「そんな言い訳が通ると思っているのか、我が国の奴隷が二人も重症を負っているのだぞ!!」


「それこそおかしなことを仰います、紅龍皇朝では奴隷制は禁止されておりますからそもそも連れてきたことがおかしいのではありませんか?」


エネルリィサの正論に先王の祖父と共に会議に同席しているフレイアもうんうんと頷く。





・・・





どうやら話の論点や争点はともかく紅龍皇朝になんとか責任を取らせて何がしか旨い目を見ようという魂胆が見え見えだった。


そんな彼らのやり口は当然のごとく看破しているエネルリィサも表情と言動には出ていないが、

西方諸国の考え方が気に入らなかったようで彼らの要求を完全に潰しにかかっていた。


獣王国のフレイアが西方諸国を気に入らないのは知っていたが先代国王のライドルフも気に入らない様子だった。


どんなにエネルリィサに静かに冷静に論理的にやりこめられても紅龍皇朝に責任を取らせて何か得て帰ろうという執念が凄かったが、最終的に魔王が口を開いた。


「要するにあんたらはこの国から何かブンどって帰りてえわけだ。」


小太りな王族の一人が驚きながら答えた。


「な、何を藪から棒に・・・。」


「まあ、いいんだよ、細けえ建前は。」


「良いじゃねえか、こんだけ魔力も腕力も弱くて何にも出来ない連中だ、龍族特性の武器の作り方の一つや二つおしえてやりゃあいい。」


「魔王よそれではあまりにも・・・。」


エネルリィサは納得いかないようだったが。


「私たちとしてはワイヤードランスの製造方法か、あるいは上質な武器の製造方法を教えて頂けるのであれば何の問題も無い。」


「それで今回は何もなかったって事でいいんだろうな?」


魔王にそう言われ西方諸国の代表たちは黙ってうなずいていた。


魔王はなにを考えているんだ、ワイヤードランスの製造方法を教えた所で魔力や道具が圧倒的に足らないから製造のしようが無いのに・・・。


ん?そういうことか、作り方を教わったところでまず作れるという保証が何処にも無い・・・。


カーディナルも魔王の意図に気が付いているようでそのまま製造方法を教えるということで話がまとまり、国際会議という名の紅龍皇朝糾弾会はお開きとなった。


かと言って作れなかったらそれはそれで新しい禍根に成りそうだが・・・。


















会議が終わってみなそれぞれの職務に戻って行ったのだが比較的暇な俺を捕まえて魔王が得意げに話しかけてきた。


「ようハーク皇子、俺の案はどうだったよ?傑作だっただろ?」


「あの場はいいかもしれないですけどこれって新たな禍根に成りませんか?」


「まあ、そんときゃそん時だ、西方諸国の連中は砂漠と海に囲まれてるから比較的安全に暮らせるのに同じ人族同士で長年争っている連中だ、新しい兵器を与えて奴らの国が何個か無くなっていくらか静かに成ってくれたならそれでいい。」


「うわあ、考えてる事えげつないっすねえ。」


「お前の親父だってその可能性も考えてるだろう、だから首を縦に振ったんだ、そもそもうちの国はともかく紅龍皇朝と精霊王国と獣王国は他国を直接潰すのはタブーだろ。」


「え、初耳ですねそれ。」


「ん?そうか、そんなに大した話じゃないんだが、この三国は強過ぎるからな、創世の神々の力と思想が色濃く残ってる精霊王国と獣王国、そして創世の神々によってこの世界の可能性を守るために呼び出された紅龍皇朝の祖先の五人の龍神、そんな三国が他国をその力で直接滅ぼすのはまずいだろ。」


「確かにそんな国に属してるのに他国を滅ぼしてたら本末転倒といえばそうですけど。」


「まあ、かといって俺は関係ないからなメリンの実家に喧嘩売ってる時点で、かーなーりー頭に来てっから、気分次第じゃ俺様直々に奴らの国を消し炭にしてやっても良いぜ。」


いや、それは駄目でしょうよ・・・。


「そんなに姉さんのこと好きなんですか?」


「お、なんだ、意外とストレートに聞いて来るな、まあ、はっきり言って他にあんなにいい女に出会ったことは一度もねえな。」


「身内が褒められるのはそれはそれで悪い気はしないですけど・・・。」


ここに来て頼りになる兄貴分が二人に成ったが、かと言って魔王はまぎれもなく魔王なので余計な借りを作らないほうが良いような気はするが・・・。







結論から言うと結局ワイヤードランスの製造方法は国際会議の間、比較的紅龍皇朝に対して高圧的で挑戦的な国々に渡すことに成り、あまり紅龍皇朝に対してそこまで文句を言ってこなかった穏健的な国々が西方諸国の技術でも製作可能で人でも扱える属性武器の製法を持って帰った。



露骨に信用して居ない方にワイヤードランスの製造法を教えたにも関わらず彼らは頭が悪いのか、

そんな事も気にも止めず帰りの退城パレードもそこそこに自国に帰って行った。



















魔導王朝の首都から北西の港町ブロウにて着々とゴーレム・ゲリエの戦闘準備が進んでいた。


国内各地で作り上げた宝玉をこの港町まで運んでから地下にある古代遺跡でゴーレム・ゲリエとして組み上げていた。


アーシェリカの開発した真っ黒なゴーレムのフレームに魔物の骨格や表皮、鱗、金属等を材料とした外装を纏ったゴーレムが数十体組みあがっていた。





「ねえ、ねえ、アーシェ、あたしのキタイ?とかいうのはどれなの?」


身体にフィットしたパイロットスーツに身を包んだブリジットが尋ねた。


「ブリ子の機体はあそこの紅いのよ。」


「だからブリ子って言うなつってんだろー!!」


そう言いながら魔術で強化された拳がアーシェリカの顔面に向けて放たれる。


アーシェリカは易々とその拳を受け止めると。


「まあ、いいから聞きなさい、ゴーレムの術式はあくまでも機体の保持と回収が優先だから動くのに使う魔力が無くなったら普通のゴーレムより遅い動きしか出来なくなるから魔力炉の残りはきちんと見なさい。」


「はいはい判ったわよ、その話は耳にたこだってば!」


「それと、あくまでもこれはゴーレムなんだから真理の文字が無くなったら動かなくなるんだから気を付けなさい。」


「んなヘマするわけないでしょ!細かい話は帰ってから聞くわ、別に今から紅龍皇朝に攻め込む訳じゃないんだから!!」


ブリジットはアーシェリカに言われていた機体に乗り込むと三機小隊で出撃した。




「ブリジット・ル・ブロン Je sors!」







「あーあどうしてこんな事に成ったんだろう、才能を買われてお父様の宮廷魔術師に成ったのは良いけど・・・。」

「あの初代とそっくり同じ魔術を使うアーシェリカが宮廷魔導士筆頭に成ってから、何もかも台無しだわ・・・。」



ブリジットは現魔導王朝の国王の娘だったが王妃の娘では無かった、国王が戯れに手を出した侍女の娘だった。

魔導王朝はその国家の性質上、陰謀策謀の渦巻く国であるため実母も既に他界しており、

自らが娘だと名乗り出た所で自分の命が危険に晒されることは目に見えていたので今の国王に自分が娘だと名乗り出ることもできなかった。


少々性格に難はあったが魔術の才能は有った為、努力を重ね最年少で宮廷魔術師に成ったのだった。




「お父様の近くに居れればそれでよかったのに・・・。」





























昼過ぎに目が覚めると黎子が玄関に迎えに来ていた、今朝は妙な夢を見た、最初はその程度の認識だったが右手の薬指に見覚えのある指輪がある。


黎子を待たせているので素早く身支度をしていると、ふと見た姿見に指輪が映っていなかった、どうやら自分にしか見えていないようだ。



「済まない寝坊した。」


黎子に詫びをつげる。


「うん、いい。」


俺たちは竜哉の入院している病院に向かった、丁度事故から一週間ほど経過していた。


暫く右手を見せるのを躊躇ったが黎子には指輪は見えていないようだ、指輪を認識してから色々な事が頭を駆け巡ったが取り敢えず竜哉の依頼を果たせるのか確認する必要があった。


病院の前まで来たことろで名取さんと出会った、黎子も声がかけづらいようだったが向こうに先に気づかれてしまった。



「二人とも有難う、たっちゃんの為に・・・。」


「名取さんが気にすること無いよ、私たちが勝手に来たんだから。」


二人がいい具合に話し始めたので俺は飲み物を買ってくるとだけ言い残し、病院の一階にあるコンビニ横の出入口から平日でもあまり人のいない中庭に出る。


今日は休日なので人っ子一人居ない、自分の記憶では救急車の通り道なので救急車ぐらいしか通ることが無い事を知っていた。


こっちでも魔法が使えるのか確認するために一番地味な魔法を考えていると残暑の強い日差しが病院の窓に反射してギラギラと照り付けている。


少し集中するとはるか頭上に雲が集まりだした、感覚的にはほぼあちらと同じように使えるということが確認できた、確認できてしまった・・・。


ついでと言っては何だが落ちていた石を拾って握ってみたのだが、簡単に握りつぶせてしまった、どうやら身体もあちらと同じように強くなっていた。


先ほどまで石だった砂を払うとコンビニで飲みものを四人分買うと二人が待っている一階の待合室に戻った。

飲み物をいつものように四本買って来た俺に黎子は怪訝な表情をしていたが、


「そろそろ起きるだろう。」


というと名取さんが有難うと言いながら泣き崩れた。


「馬鹿劉。」


黎子に小さな声で叱られてしまったが俺は自分のするべきことを理解していたので気にしなかった。



病室に着いた俺は竜哉の両親と二人に気が付かれない様、竜哉の個室内限定で薄く回復魔法を使った。


そもそも回復魔法と言っても本人の回復能力が皆無だった場合はどうにもならないが竜哉の体からははっきりと魔力まで感じ取れた。


俺たち三人は遅くまで竜哉の病室に居たが黎子が気を利かせて先に帰ろうと言い出したので二人で帰った・・・。


食事も風呂も済ませあとは寝るだけだという段になって、これからの事を考えると俺は複雑な気分に成った・・・。


こちらでも魔術が行使出来たのだ、もちろん俺だけではなく竜哉もだろう。


そして(エクリプス)や大禍の事を考えるとこっちの世界でも色々とすることに成るだろうということは容易に想像できる。


ああしてあちらの世界で大禍が生まれるということはこちらの世界で大きな出来事があるのかもしれないと考え始めたが、今考えても仕方ないことに気が付きそのまま眠りについた。



















午後の日差しがかなりかげって来た頃、たっちゃんのお父さんとお母さんは病室の傍にある待合室の椅子で疲れ果てて眠っていた。


黎子ちゃんが気を利かせて二人は先に帰ったから私とたっちゃんだけに成った。


「ねえ、たっちゃん劉生君たらおかしいんだよ、いつもみたいに四人分飲み物買ってきてさ・・・

そろそろ起きるだろ・・・だって・・・。」


「私、二人にまた泣いてる所・・・見られちゃったよ・・・。」

「みんな待ってるんだから早くおきないとダメだぞ・・・。」


私がたっちゃんの右手を握るとたっちゃんの指が少しだけ動いた気がした・・・・。


もう少し強く握ると、しっかり握り返してきた!


私はあわててナースコールを押しながらたっちゃんを呼んだ!







私の声が聞こえたのか、すぐに看護師さんが慌ててやって来た。


たっちゃんのおじさんとおばさんも気が付いて病室に戻ってきた。





包帯でぐるぐるに成っっているたっちゃんの目がうっすら開いた。


いつの間にか現れていたお医者さんに、もう大丈夫ですねと言われて私はわんわん泣いた。




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