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シチュエーションあれこれ

いい腕をしている

作者: sanana

キーン、と、剣がぶつかる音。

鋭い音が大きく響く。


「あれ、魔法使いなんじゃなかったでしたっけ?

 なんでそんなに剣が使えるんですか?」


思い切り振り下ろした剣をうまく止められて拍子抜けする。

確かに腰に剣は佩いてたけど、飾りだとばかり。

火とかの攻撃魔法かなんかで反応されると思ったのに。


「いきなり剣を振り下ろすようなバカが世の中にいるからな。

 自衛のためだ。

 こんなところで魔法ぶっ放したら、今頃大惨事だろうが。」


涼しい顔で返されて、ちょっと納得いかない。


「確かにそうかもしれませんねぇ。

 でもそれってあなたが加減しないからでしょう?」


何度か斬り結ぶ。

見るからに強そうな体格だから、剣をふるっていても意外性はない。

思ったより早く動ける、というところが意外か。

 

「・・・お前こそ、なんだその半端ない魔力。

 なんでそれを使わないで剣の腕磨いてるんだ、もったいない。」


よけいなお世話だっつーの。


「それができていたら苦労しませんよ。

 魔力はあっても使えないんですってば。

 だからこうしてせっせと剣でのし上がろうとしてるんじゃないですか。

 それなのに、魔法使える人がこっちまで進出しないで下さいよ、うざいわ。」


それなりに本気出してるけど、決着つかないなぁ。

・・・だんだん面倒になってくる。


「別に剣を使いたくて使ってるわけじゃないっての。

 お前たちこそいい加減あきらめろ。

 別の手を使え、別の手を。」


「別の手ってなんですか、一体。

 しかもお前たちって、誰のこと言ってるんですか。」


何のこと言ってるんだ、この人は。

仕方なかろう、これも依頼だ。


「知らないって、お前、誰に頼まれた?」


唖然とした雰囲気だけど、剣は緩まない。


「え、通りすがりのお爺さん。

 転んでるところを起こしたら、

 乱暴な魔法使いがいるから、なんとかしてほしいって。」


あれ?


「えーと、一時休戦な。」


バン!という大きな音がして、私の一撃が防がれた。

くそ、魔法で障壁作ったな。


「なにそれ。」


壁の向こうで悠々と立っている男は、息一つ乱していない。

・・・やっぱり腹立つな、こんな魔法使い。

こっちはそこそこ本気出したのに。


「お前が強いのは分かってる。

 このくらいの障壁、やる気になればやばいことも分かった。

 だけど、ちょっとだけ待ってくれ。頼む。」


うーん、状況判断が早いな。

確かに、もう少し力入れたら、これくらいはなくなる。

そこわかった上であれば、うん、仕方ないな。


「話を聞こうじゃないの。何よ。」


ほんの少し、ほっとした顔に見えたのって、私のひいき目じゃないって思いたい。


「ありがとう。

 お前の一撃、無意識に魔力入ってるからな、ちょっとやばかった。」


「何のお世辞?それより本題。

 私は剣をしまう気はないわよ。」


「わかってる。

 それで、お前におれのことを頼んだのは、どんな爺だ。」


「どんなって・・・。

 それをあなたに教えると思う?

 もしかしたら、あなたが報復するかもしれないのに?」


「なるほどな。

 ・・・おい、どうせその辺で見てるんだろう。

 そろそろ出てきてはどうだ?」


誰に何を言ってるんだ?と思ったら、出てきましたよ、誰だよ。


「ほっほっほ。仕方ありませんな。出ましょうか。

 お嬢さん、申し訳ありませんでしたな。」


な、さっきのお爺さん!!!

ってことは。


「えーと、お知り合いですか?ですよね?

 何でこんな回りくどい面倒なマネを?」


ほっほっほ、と笑いながら、お爺さんは答えてくれた。


「いやなに、わしが追いかけると逃げられますのでな。

 お嬢さんは腕もよさそうだし、確実だと思いましてな。」


走るとさすがに息がきれますのでな、と、何でもないそぶりで言う。


「空々しい真似はよせ、面倒だっただけだろう。」


「さすがにばれましたか。さすがにそろそろ戻られてはいかがか。」


「お前が出てきたってことは、仕方ないな。

 ・・・おい、お前、名前は?」


「は?」


「いや、これは俺の知り合いだ。

 手間をかけて申し訳なかったな。」


知り合いだって?


「お嬢さん、申し訳ありませんでしたの。

 なかなかつかまらない御仁での。助かりましたよ。

 ところで、よい腕をされている。

 お名前をお聞きしたいのですが?」


私のカンが叫んでいる。

・・・面倒事のにおいがする。

強烈に。


「では問題ないということですね。

 あなたに剣を向けたことは謝りますが、

 あなたのお知り合いからの依頼ですから、帳消しですね。」


「ああ、もちろんだ。

 しかし礼をしたい。

 名前を教えてはもらえないか。」


「名乗るほどの名前ではありませんので。

 では私はこれで。

 お爺さん、今度歩く時は気を付けて。転ばないように。」


逃げるが勝ちだ!


「おい!」


なんか聞こえた気がするけど、気のせい、気のせい。。。。。


***********************************


いっちまったか。

いい腕してたし、いい魔力だったんだが。


「行ってしまいましたのう。」


「行ってしまった、じゃないだろう。

 お前、あの魔力見抜いて引き留めただろう?」


幼いころから見ているこの爺の笑顔。

胡散臭いことこの上ない。


「ほほほ。何のことですかな。」


「死んだって転びそうにないお前が、転ぶわけないだろう。

 わざと引き留めるためだろう?」


悪びれない笑顔。


「ちょうど歩いていたら、前を通りましての。

 めずらしい魔力だったので、つい。

 それが剣の腕もいいなんて、意外でしたが。」


「逆に魔力を扱えない、と言ってたぞ。」


「それはまた不思議ですな。

 あんなにあふれてるのに。」


「一撃一撃に込められるから、もう少しで死ぬかと思った。

 もう少し加減して人選しろよ。」


まあいい。

あの剣の紋には見覚えがある。

ゆっくり捕獲するとしよう。


あんなに面白い女、逃がすものか。


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