探索の先
入り組んだ迷路のような道を少しずつ、少しずつ進んでいく。どこからか差し込んでいた光はいつの間にかずいぶん少なくなった気がする。
ひっそりとした洞窟の中で聞こえるのは、里栄子達の足音と時折天井から落ちてくる水滴のような物、おそらく土にしみ込んだ水が十分な地層にろ過されて降り注いでいるのであろう。
「ここは左」
メモを確認しながら、海と拓哉はどんどん進んでいく。
「なんか、狭くなってない?」
薄暗い中でも目が慣れれば多少は周りの様子も見える、確かに綾が指摘した様に洞窟の高さ、幅、共にまるで一行を取り込んでしまいそうに思える。
「確かに、それに少し肌寒いような気がするわね」
大学生の里栄子に比べ、小さな子供は、天候、気候に左右されやすいのであろう。
後ろから付いてきていた凪は、夏にも関わらず少し震えている。
「凪ちゃん」
里栄子は、しゃがみながら凪に対して自分の背中を指差した。それにおとなしく従った凪は少し安心した表情を見せる。
「大丈夫だって、後二個だよ?」
「ここまで来たんだから!」
変わり始めた探検の空気に気が付いたのか、海と拓哉はみんなをせかした。
ふと、夢人の方を見た里栄子は舞妓さんのように肌白く、どこか妖艶な夢人に少し寒気がした。
「夢人君はさ」
「ん?」
「あ、なんでもないの」
触れてはいけない物、そんな感覚が里栄子のことを洞窟の暗闇よりも尚深く包み込んで問いかけを中断させた。
「そ」
太陽のような笑顔が、薄暗い洞窟の中でも見て取れた。自分自身の感覚に恥じるように里栄子は、出来る限りの笑顔を返した。
薄暗い道を更に歩き続け、最後の別れ道に差し掛かったとき不意に海はみんなの周りをくるりと回るようにしながら言った。
「お宝はどうする?」
何のことを言っているかわからないみんなに業をにやして
「山分けするのかってこと」
「そうね、みんなで分けましょ」
年頃の子供にありがちな、憶測にやっと気が付いた里栄子は諭すように言った。
「リーダーはちょっと多めでもいいだろ?」
「海、いい加減にしなさい」
「はい、はい」
姉の綾に凄まれて、少し肩をすくめながら海は更に先へと進んでいく。
「ほら、だめだっていったろ」
拓哉が海を少し馬鹿にしたように、鼻をこする。海と拓哉、夢人と年も変わらない少年達、どちらが-普通-なんだろうか。
終わらない問いかけをしながら、進んでいく。
足元がおぼつかない中で小学校2年生とはいえ、人を背負って歩くのはかなりきつい。しかも、自称とはいえ里栄子は乙女なのである。
「まだかな」
最後の別れ道からもうどれくらい経ったのだろうか、みんなの歩く速度も徐々に落ちてきている。
「おーい」
少し遠くのほうから先に進んでいた海の声が聞こえる。近づいていくと、海と拓哉が二人で騒いでいる。
よく見ると、二人の足元には-何か-があった。