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夏の雲  作者: ドルチ
10/15

思い出の洞窟

「里栄子!」

「里栄子!」


 誰かが呼ぶ声に里栄子がゆっくりと目を開けると、目の前にはいつものみんなが心配そうに覗き込んできた。


「私・・・」


「ほんとどじなんだから」

 綾が少し安心したように、皮肉を言った。

 

「覚えてないのかよ、里栄子」

「まだ、入り口なのに」


「ここは?」

 少し上を見ると、かすかに光が差し込んでくる、海や拓哉の手には懐中電灯らしいものが見える。どうやら洞窟のようなとこにいるらしい。

 

「洞窟見つけて、探検しようって」


「それで、入り口で里栄子がこけて頭を打ったんだ」


「私工事現場で・・・」


「変な夢見たんだな」

 海が鼻で笑った。

 

「見たんだな」

 拓哉もそれに続くように笑った。

 

「お~い」

「先に進めそうな道があったぞ」


 時雨が手を振りながら洞窟の奥の方からやってくるのがわかった。


「こっちも里栄子が目を覚ましたよ~」


「そんなバカはほっといて先に行こうぜ」

 時雨は、海達を急かすように手招きしている。


「バカってなによ」

 里栄子の言葉には、耳を貸さず時雨や海達は洞窟の奥の方へと消えていった。


「里栄子いこ」

ふと左手をみると、夢人が里栄子の手を引っ張っている。

夢人に促された里栄子もしぶしぶ洞窟の奥へと入っていった。


歩く事10数分、やっとの事で時雨たちに追いついた里栄子は、時雨達が何かを見つけて騒いでいる事に気が付いた。


「どうしたの?」


「宝だよ」

 海がわくわくを抑え切れないように言う。

「そんなのがあるわけ無いじゃない」

 現実主義者の綾が、すぐさま否定する。


「宝・・・かわからないけど、何かが隠されていることは確かだと思う・・・」

 いつもふざけた事は言わない時雨が言った一言は、妙に現実味があってみんなの興味を引き付けた。


「これ、見てくれ」

 時雨が懐中電灯で照らし出した壁には、何か暗号のような物が書かれていた。


「ん~」

「なんだろな」

 暗号のような物は、7文字ほどが文字列のように書かれていた。よく見るとそれは、3種類程の文字で構成されていることがわかった。

 

「左と右って書いてあるんじゃないかな?」

 しばらく考えていた海は、不意に思いついたように言った。


「確かに」

 時雨が、少し感心したように相槌を打った。


「じゃあ、残りの一文字は?」


「中?じゃない?」

 綾が自信なさげに、言った。


「そうだ、そうだよ!」


「左・左・右・中・左・右・右」

 海と拓哉が、洞窟に響き渡るような大きな声で言った。

「なんだろ・・・」


「どの道を選ぶか・・・じゃないかしら?」

「この洞窟で、この先どの道を選ぶか」

 里栄子が言った一言には妙に説得力があった。

 

「すごい、すごいよ里栄子!!」

 海が、少し尊敬するような顔で里栄子の周りを飛び跳ねながら言った。


「いこ、早く」

 海と拓哉はいてもたってもいられない様子で、先に進もうとしている。


「待って」

「もう、だいぶ奥まで来てしまっているわ」

「これ以上先に進むと、戻れなくなってしまうわよ」


「へへ、大丈夫」

 海は自分の懐中電灯で、足元を照らした。


「ロープ?」


「ちゃんと入り口に結び付けて来たから!」

「だから、もっと先に行っても大丈夫」


「そ・・・そう」

 少し不安を感じた里栄子だったが、みんなが先へ行きたがるのをそれ以上押さえる事は出来なかった。


 洞窟は、里栄子が言った通りいくつかの分岐点があった。その分岐点を、先ほどの暗号の通りに進んでいった。

 

 どれくらい歩いただろうか、みんな最初の勢いはなくし凪は里栄子に背負われながら眠っていた。


「あと3つ、あと3つでゴールだよ」

 一人だけ元気な海は、先に先に進もうとしている。


「少し休もう」

 状況を見かねた時雨が、持ってきたお菓子を出しながら言った。


「こんな広い洞窟あるなんて、聞いた事がなかったな」


「だれも知らない洞窟」

 綾がぼそっと言った。

「なんか怖いわね・・・」


「大丈夫だよ、みんな居るんだし」


「そうだよ、宝を見つけたら山分けだ~」

 男の子はこういうときは、恐怖心よりも探究心の方が上回るらしい。


「誰が見つけたの?」


「僕」

夢人が手を挙げながら言った。


「おばあちゃんが、昔洞窟で遊んだ事が有るっていってたから探してみたんだ」

「葉っぱが伸びた木に隠れて見えなくなってたんだけど、よく見るとこの洞窟があったんだ」


「は~い、休憩は終わり!」

 勝手に休憩を切り上げた海は、一人で先に行ってしまった。


「行こっか」

 海を一人で行かすわけにもいかず、里栄子達は後を追った。

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