ダンジョンレイド
ブラック企業の社畜といえど、週に一度の休みはある!
今日はその大切な休日を使って、近所の公民館へとやってきた。
ここでダンジョンスプラウト同士の攻略会、ダンジョンレイド。
通称『レイド会』が行われるのだ。
「いやあ、意外と盛況だなぁ!」
手に持つペットケイジのようなアクリルの籠には、大事なダンジョンスプラウトが入っている。万が一落としても、衝撃を吸収してくれる。
メルカリで中古品を購入したが、四万もした。
ご覧の通り、ダンジョンスプラウトはめちゃくちゃ金のかかる趣味のはずだが、この町にこんなにも同好の士がいるとは思わなかった!
会場はレベルごとに分けられており、レベル10以下のフロアには五人ほどがいる。
そちらへ向かうと、二十歳くらいの赤いエプロンドレスの女性が笑いかけてきた。
「こんにちは。初めての方ですよね?」
「は、はい。伏見玄です。二週間前にダンジョンスプラウトを育て始めたばかりの初心者で……あの。今、レベル5で。経験値がないとダンジョンが拡張できなくなったので、レイドに来ました」
言いながら俺は、籠からダンジョンスプラウトを出して見せる。
女性は顔をほころばせた。
「わあ! 小っちゃくてかわいい……。私、朝倉凛花って言います。あのう、私のダンジョンスプラウト、今レベル8なんですけど。よかったら、私とレイドしませんか?」
言いつつ、彼女は地面に置いてある鉢植えを指さす。
そこには四方十二センチくらい、高さ四階建てで白い石造りのダンジョンがあった。
「俺はもちろん、かまいません。よろしくお願いします」
俺が自分の鉢植えを、彼女の鉢植えの近くに置くと、彼女はちょっと申し訳なさそうな顔になった。
「えっと……。『初狩り』だと思われないために、言っておきますね! 私のダンジョンスプラウト、ちょっと特殊で……レベルも上ですし、たぶんレイドしても、あなたが負けちゃうと思います」
初狩りは、初心者狩りのスラングだ。
レイドの経験値は相手のダンジョンを攻略し、なおかつこちらが防衛成功した時、最もたくさんもらえる。
それを狙って、格下の初心者ばかりにレイドを仕掛ける相手を、そう呼ぶのだ。
「かまいませんよ。レベルが上の相手の方が経験値たくさんもらえますし、最初はみんなそんなものですから。気にしないでください」
俺が言うと朝倉はホッとしたような顔で、お互いの鉢植えに木製の橋を渡した。
「そうですね。一応、お互いのダンジョンの情報を見せ合いましょうか」
「はい。よろしくお願いします」
挨拶をしながら俺は、ラビスコープで彼女の鉢植えを映す。
ダンジョン名:陽炎花廊
レベル:8
属性:火・光
経験値:2890
冒険ログ:13
状態:極めて良好です
二属性ダンジョン!?
す、すごい……しかも、珍しい光入り。
と、隣で「プッ!」と吹き出す声。
そちらを見ると、朝倉が肩をプルプルと震わせている。
「こ、これ……。『サービス残業お断りダンジョン』って。な、なんですか? これ」
「あ。いや、それは……えーっと。……まいったな」
他人に見られる可能性があるんだから、もっとまともな名前にしとけばよかった。
後悔先に立たずである。




