スカートと更衣室
「はい! ……だけど」
と、コロちゃんは肩を落とした。
「困ったことに、爺ちゃんの家が叔母ちゃんの手に渡っちゃって……女物の服を置けなくなったんです。今は、知り合いがやってる『マッスル・サンクチュアリ』ってジムのロッカーを借りてます。けど、月額2980円の出費も痛いし、男子更衣室からスカートで出てくるのは……さすがに肩身が狭いっつーか」
そりゃあ、肩身も狭かろう。
むさ苦しいジムの男子更衣室から、可愛く着飾ったコロちゃんが出てくるのだ。
周りはギョッとするに決まってる!
「あー、だったらさ。俺んちに服置いていいよ」
俺は、そう提案した。
「え……いいんすか? オレ、金もないし、お礼なんて何もできないっすよ」
「お礼なんていらないよ。どうせブラック企業勤めで、家には寝に帰るだけだしね。クローゼットも半分くらい空いてるから、壊したり汚したりしなければ好きに使っていいさ。月三千円も出費が浮くなら、新しい服も買えるんじゃない? 週末のレイド会で合鍵を渡すよ」
「あ、合鍵って。そんな簡単に、オレを信用していいんすか!?」
「いいよ。コロちゃんが良い子なのは、とっくに知ってるし。それに俺、コロちゃんの女装好きだもん。……まあ、たまに可愛い姿を見せてくれたら、それで十分かなぁ」
冗談めかして笑うと、コロちゃんは手で顔を覆った。
指の隙間から、耳まで赤くなっているのが見える。
「あ。一応、ナンタラ条例とか引っかかるとアレだから、ご両親には連絡させてね。大丈夫、服のことは言わないから」
「あざっす! ホント、神っすよ。オレ、玄さんみたいに優しくて頼れる大人、他に知らないです!」
タコ焼きを食べ終えると、コロちゃんは俺に自宅の電話番号を教え、何度もお礼を言って、頭を下げて去っていった。
その姿を見送りながら、俺はひとりごちる。
「……それにしても。あの可愛いコロちゃんが、実はヤンキーだったとは……」
な、なんだろう!?
一人娘が彼氏を連れてきたら、どちゃくそガラが悪かった、みたいな。
なんとも言えない、せつない気分だ……。
その後、電話で話したコロちゃんの両親は、「合鍵もらって社会人の先輩の家に入り浸るなんてフツーっしょ」とか平然と言っていた。
ついでに「ハッパとクスリとシンナーはダメっすよ!」だなんて、冗談めかして言っていた。
……酒とタバコをダメと言ってなかったのは、たぶん言い忘れたからだろう。
そういうことにする。
コロちゃんはツヨツヨな男子なので、変なおっさんに騙されても絶対にエロ同人みたいにならない安心感がありますね!




