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一緒に歩こう

 日曜の昼。

 いつものように公民館に足を踏み入れると、凛花がいた。


「あ。玄さん、こんにちは」


「こんにちは、凛花ちゃん」


「ねえ、ねえ。見てくださいよ。ここ、剪定(せんてい)してみたんですけど」


「……うん、いいと思う! って言っても、俺もまだまだ勉強中だけどね」


「えへへ。なんかいいですね、これ。一緒に強くなってるって感じがして。すごく!」


 凛花は嬉しそうに笑う。

 そんな彼女の笑顔を見て、俺もなんだか嬉しかった。


「それじゃ、今日は久しぶりに二人でレイドしようか」


「望むところです! あ、でも私のダンジョン、かなり強くなっちゃったからな~。玄さん、クリアできるかなー?」


「お、言ったな?」


 凛花はニッコリ笑って、赤い舌を出して見せる。


「言いましたよー、だ!」


 俺は剛から得た知識を、凛花とも共有することにした。

 初めて剪定をした後に、レイド会で思いの丈を打ち明けると、彼女が頬をふくらませてこう言ったからだ。


「なんですか、それ。私を置いてひとりで強くなるなんて、ズルい!」


 思わず、笑ってしまった。

 それと同時に、胸の奥がじんわりと温かくなる。

 凛花は、俺が初めてレイドした相手だ。

 二桁到達の時も、一緒にお祝いして喜びを分かち合った。


 これからも肩を並べて腕を磨き、節目のたびに笑い合いたい……。

 そんな未来を、俺はどこかで当たり前のように願っていたのだ。


 ちなみに、どこを剪定するかだが……これはもう、感覚としか言いようがない。

 ダンジョンスプラウトをよく観察すると、他と比べてわずかに“輝きが弱まっている”部分がある。そこを壊すのだ。

 ただ、この輝きが見えるかどうかは、人によって違うらしい。


 ダンジョンスプラウトを育ててるダンジョンガーデナーのうち、半数ほどは見えないそうだ。配信や録画など、電子機器を通しても輝きは見えなくなる。

 俺と凛花は見える側で、みのりとコロちゃんも見えてると言う。


 厄介なのは、自分が何を見ているのかを、他人に証明する方法がないことである。だから見えない人間からすると、こちらが当てずっぽうに壊しているようにしか見えない。

 これもまた、剪定という行為が誤解されがちな理由のひとつだろう。


 剪定は普通、レベル10に到達してから行うそうだ。まだ十分に育っていない段階で手を入れると、ダンジョンスプラウトの成長を妨げてしまうからだ。

 つまり、「ダンジョンスプラウトはレベル10までチュートリアル」という言葉の本当の意味は、「剪定を覚えて初めて、一人前になれる」という事だったのだ。


 レイドが終わり、午後三時。

 結果は『両者撤退』の引き分けだった。

 かなり強くなったとの凛花の言葉は、伊達(だて)ではなかった。『陽炎花廊(かげろうかろう)』の難易度は、確実に上がっているようだ。

 その分、未踏でも経験値はもらえるので、こちらとしても願ったりかなったりである。


 さて。ついさっき聞いたのだが、今週は凛花の誕生日があるらしい。

 本当は当日にお祝いしたいのだけど、悲しき社畜ゆえに、平日は自由がない……それに凛花もこんなおっさんに呼び出されて、嬉しいかもわからないしな。

 だからこの後で食事にでも誘って、そこでプレゼントを渡そうと思うのだ。


 プレゼントは、公民館のフリマで買うことにする。

 以前、少し覗いただけだが、手作り品や中古品だけでなく、未開封の新品がいくつかあった。

 まあ最悪、栄養剤なんかの消え物を買って渡せば、彼女も持て余さないと思う。


 どれ、どんなものがいいかな……?

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