タンパク質は足りてるか?
せっかく交換したログを読む気にもなれず、俺は公民館を後にする。
アクリル籠の中で、ラビリミンたちも落ち込んでるようだ。
今日は早く家に帰って、酒でも飲みたい気分だった。帰りにコンビニでストロングゼロを買おう……二本、買おう。
そんな風にトボトボと歩く俺の前に、誰かが立ちふさがる。
「やあっ! タンパク質は足りてるかい?」
視線を上げると、そこには肉体の壁がそびえ立っていた。
190センチはありそうな長身に、鎧のような大胸筋。子供の腰ほどもある極太の腕を見せつけるように、タンクトップの巨漢がマッスルポーズを決めている。
デ、デカァァァァァいッ説明不要!!
こ、こいつだ! この人が公民館に出入りしてるって言う、大会優勝者だ!
そいつは真っ白い歯をニカッとむき出しにし、ムキムキの筋肉を言葉の合間、合間に連続ポージングで自己主張しながら言う。
「僕の名前は増田剛。みんなからは、マスター剛としたわれているよ! どうしたんだい? しょぼくれた顔して! 悩みなら僕が相談に……あっ、ちょ、ちょっと!」
すれ違ってスタスタ歩く。
大会優勝者だか何だか知らんが、こんな変な人に絡まれたくない。
一緒にいるのを、誰かに見られたくもない。
「強くなりたくないのかい?」
だけど、その声に、俺は足をピタリと止める。
「……なんだって?」
振り向くと、剛は真剣な表情で、真っすぐに俺の顔を見返してきた。
「僕なら、君を強くできるぞ。それこそ、大会に出場できるくらいにね」
刹那の逡巡。
俺の迷いを断ち切るように、剛はニカッと白い歯を見せ、駐車場を指し示す。
「僕の車に乗りなよ。ここで立ち話もなんだろ? 君のダンジョンスプラウトは、後部スペースに積んでくれ」
そこには『マッスル・サンクチュアリ』とカタカナが印字された、白いワゴン車が停めてあった。




