サービス残業お断りダンジョン 凛花のクリアログ
『サービス残業お断りダンジョン』
第一層
ごく普通の何の変哲もない入口。
だが、我々は知っている。ここは地獄の一丁目だ。
挑むのは四回目。
今日こそ、踏破する。
・光を信用しない
・不用意に近づかない
・進む前にまず考えよ
松明に火を灯す。
前回までの教訓を胸に、我々は足を踏み入れた。
第二層
この階層は、人数によって迷宮の形が変わる。
一人ならば簡単な道。
二人ならば普通の道。
三人ならば険しい道。
そして四人ならば、ゴールまでの道は閉ざされる。
無傷で一層目を抜ければ、何もわからず延々と歩き続けることになる。
実に意地の悪い仕掛けだ。
我々は一人ずつ、時間をずらして進むことにした。
第三層
上層へと続く道は、回転する足場だ。
踏み外せば、一階まで真っ逆さま。
この高さから落ちれば、無事では済まない。
踏板は複雑に入り乱れている。
一見、規則性があるように見える。
だが――罠だ。
我々は乗らない。ただ、待つ。
やがて、不意にすべての足場が一斉に回転した。
上に乗っていれば、宙に投げ出されていただろう。
回転が止まる。静止したわずかな時間だけが道になる。
ここは、技量ではない。忍耐を試される階層だ。
第四層
影から影へと、素早く影が移動する。
亜空間を移動する、アビス・ランナーだ。
前回は、ここで撤退した。
斬れば空を切る。背後に気配。
一撃を食らう。振り向けば、もういない。
恐怖とは、姿の見えないものだと知った。
だが、今回は違う。仲間が全員揃っている。
四方の壁にそれぞれが散ると、一人が天井に向かって光魔法を放った。
柔らかく照らされた影の中を、一際濃い影が移動する。
居場所さえ掴めば、対処はできる。
数合の後、確かな手応え。
走る影は霧のように消え、静寂だけが残った。
第五層
ついに五層に到達した。
待ち受けるのは、大量のスケルトン。
斬る。砕く。
だが、骨は音を立てて組み上がる。
倒しても、倒しても、蘇る。
終わりがない。どうすればいい?
その時、仲間の一人が、道の先を指し示す。
そうか! 倒す必要はないのだ。
ただ、切り抜ければいい。
戦うのではなく、進む。
だが気づいた時には、すでに体力を消耗し過ぎていた。
ここにきて、これまでの教訓の逆を行くとは……。
ジリジリと押される。また撤退か。
そう考えた時、仲間の一人が、スケルトンに向かって行った。
一体を砕き、できた隙間に踏み込む。
盾でスケルトンを押しながら、進めと叫ぶ。
もう一人、またスケルトンの群れへと向かっていった。
二体を弾き飛ばし、道を作る。また一人、突撃する。
ようやく、一人分の隙間が空いた。
一人が叫んだ。誰か一人でいい、最奥へ到達すれば自分たちの勝ちだ!
身を低くして、わずかな隙間を必死で抜けた。
立ち止まれば囲まれる。
最後の扉に手をかけた瞬間、背後で骨が鳴ったが、振り返らなかった。
最奥で金色のコアが輝いている。
やっと、あなたに触れられる。
万感の思いを込めて、手を伸ばした。
スケルトンの部屋へと戻ると、全ての骨は崩れ去っていた。
仲間たちに肩を貸し、ダンジョンの出口を目指して歩き始めた。
帰還後
怖さは消えない。
けれど、怖さの正体を知れば、立ち向かえる。
冥とは死ではない。
冥は、思考が止まった瞬間に生まれる影だ。
冥は“光”に宿る。
冥は“前提”に隠れる。
冥は“見えない”のではない。
見えるものを疑え。常識に惑わされるな。
恐怖を分解せよ。目的を忘れるな。
何が勝利かを、常に考え続けること。
この教えを胸に、我々はようやく「中級者」へと辿り着いた。
今夜はよく眠れそうだ。
ダンジョン攻略経験値 950




