二人でお祝い
ダンジョン名:サービス残業お断りダンジョン
レベル:11
経験値:7546
属性:冥
冒険ログ:12
状態:健康を維持しています。やる気十分です。
そういえば、ついに俺の『サービス残業お断りダンジョン』が踏破されてしまった!
クリアしたのは凛花の『陽炎花廊』だ。
まあ、彼女とは何度もレイドしてるし、むべなるかな。
初見殺しも、そろそろ対処されるというものだろう。
おかげで彼女のダンジョンスプラウトも、めでたくレベル10到達である。
お互いの二桁達成のお祝いをかねて、レイド後にファミレスで夕食会をすることになった。
そういえば、前回は何かに怒っていたな……。
それを指摘すると、凛花は頬をプクッと膨らませ、窓の外を見て「別に。なんでもありませーん!」と言った。
おいっ。それ、なんでもないような態度じゃないだろ!
まあでも、今日はめでたい日だ。
もう怒ってはなさそうだし、あえて話題にすることもないかな。
料理は俺はカツカレー、凛花は山盛りポテトとイチゴパフェを注文した。
夕食がポテトとパフェか。若いなぁ……。
二人とも大人だから、当然アルコールも解禁だ!
俺は生ビール、凛花はグラスのスパークリングワイン。
ドリンクで乾杯し、並んだ料理を飲み食いし、やっぱり話題はダンジョンスプラウトのことになる。
「え。大会の優勝者?」
生ビールのジョッキを片手に俺がそう聞き返すと、凛花はパフェのソフトクリームをポテトですくい、口にパクリと入れて頷く。
「うん、そう」
もぐもぐやって、ゴクンと飲むと話を続ける。
「なんかね。地区大会で優勝した人が、あの公民館に出入りしてるんだって。ふらりとやってきて、辻斬り……じゃなくて。辻講師? みたいなことをしてるらしいよ」
「ふうん。地区大会優勝っていうと、マスター級か」
そのレベルの人にダンジョンスプラウトの個人授業を受けるとなると、一時間で諭吉……じゃなかった。渋沢数枚は飛んでいく。
一言、二言でもアドバイスをもらえるなら、それってかなりお得だろう。
なんてことを、薄給な俺はついつい考える。
「で、どんな人なの?」
「いや……。私もね。一度、話しかけられただけなんだけど。なんていうか……うーん」
凛花は少し悩んでから、口にする。
「おっきい人」
……大きな人? なんだそりゃ。
そんな人、公民館にいたか??
語彙力をどこかに置き忘れたかのような表現だ。
見て分かるほど大きい(胸が)と言えば若宮みのりだが、彼女が地区大会の優勝者とは思えない。
確かに彼女のダンジョンは手ごわかったが、大会に出られるほどじゃない。
そもそも大会ということは、レベル20以上は確実に必要だ。
「ふうん……。まあ、公民館に出入りしてるなら、そのうち会うだろ。あ、ねえ凛花ちゃん。これ知ってる? 『迷宮カラカラ』ってチャンネルなんだけど」
「あー、知ってる、知ってる! お酒を飲みながらダンジョンスプラウトを育てる動画でしょ?」
「そうそう。ものすごく清潔な部屋で薄めのハイボールを飲みながら世話してるんだけど、なんか見てると落ち着いてさぁ」
俺は脳みその端っこに『公民館 デカい人 大会優勝者』とメモをして、凛花との楽しいおしゃべりに戻ったのだった。




