レベル差よりも、距離が近い
ダンジョン内のモンスターも、必要以上に相手を傷つける攻撃はしない。
ラビリミンが撤退を始めると、それ以上は追ってこない。
レイドはダンジョンスプラウトにとって、相手との力比べであり、知恵比べであり、子孫を残す大事な儀式なのだから。
弁当を食べながらみのりと話して、新しい情報をいくつか仕入れた。
以前のレイド会で彼女を見かけなかったわけは、彼女が車を使ってレイド会を『周回』していたからだった。
同じダンジョンはクリアするたびに、経験値が減っていく。
同様に、一度目は防衛成功しても、二回、三回と挑戦されれば、いずれダンジョンは制覇される。
だから一番効率のよい経験値の稼ぎ方は、初めての相手とレイドしあうことである。
そこでクリアして防衛も成功すれば、最効率の経験値を得ることができる。もっとも、クリアできずに防衛失敗したら、最低限の経験値しかもらえないが……。
この辺りは、顔見知りと何度もレイドしてコツコツ経験値をためるか、一気にドーンと狙って初見同士でレイドしあうか、性格が出る所だろう。
「みのりさんは、意外とギャンブラーなんですね」
俺が言うと、彼女は困ったように首を傾げる。
「うーん……? そういうわけでもないのよねえ」
みのりは、公民館のホールの一角を指さした。
「あそこ、バザーやってるでしょう? 玄君は、見たことあるかしら~?」
「ああ、はい。オリジナルの栄養剤や、ダンジョンスプラウト用の手作り建材を売ってますよね」
「おばさん、息子二人が家を出てから、暇で暇でねえ。こんなのばっかり作っちゃうのよぉ~」
言いながらみのりは、傍らに置いてあったプラスチックのパーツケースを開ける。
中にはミニチュア・サイズの装飾品がぎっしり詰まっていた。
「おおっ。細かい所まで……よくできてるなぁ」
なるほど。彼女のダンジョンの装飾も、自分のハンドメイドだったわけか。
これを売るために、レイド会を巡っているのだな。
と、みのりの『そよそよ若草ダンジョン』から、俺のラビリミンが出てきた。入ってから六十二分後である。
誇らしげな(*≧ω≦)な顔を見ると、なんとか制覇したらしい……が、四匹中二匹が気絶している。残った二匹もヘトヘトで、どうやらギリギリの戦いだったようだ。
「す、すげえ! ウハハ、よく頑張ったぞ、お前たち!」
思わず立ち上がり、声を上げる。
みのりも立ち上がり、声を上げる。
「キャー、わたくしのダンジョンを一発クリアするなんて! 大変よくできました~」
言いながら俺の頭を胸に抱きよせ、ヨシヨシと撫でた。
「ちょっ……ちょっと。みのりさんっ!?」
俺が驚いて声を出すと、みのりはパッと手を離す。
「あらま、あらまあ……。つい、息子にやるみたいに……ごめんなさいねえ~」
「は、はあ。き、気にしないでください」
柔らかくて良い匂いがした……。ドキドキする。
マ、ママ……?
こういうのを『バブみを感じる』とか言うんだろうか。
うわー。俺きっと今、顔真っ赤だぞ!
その後、ログ交換を終えて公民館を出ようとしたら、凛花がいたので挨拶をする。
しかし凛花はこちらを見ると、ベーッと舌を出して行ってしまった。
……えっ。なんで??
俺、またまたなんかやっちゃいました?
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