弁当とぬか漬け
俺とみのりのダンジョンから、それぞれラビリミンが出てきて、(`・ω・´)ゞと敬礼を交わしてお互いのダンジョンへと入っていく。
さて、待ってる間のランチタイムだ。
パイプ椅子を二つ用意して、片方に座って膝の上に弁当を広げる。
今日はカラアゲ弁当を買った。好物だ!
みのりの弁当は主婦らしく手作りで、小ぶりな俵型のおにぎりがいくつかと、ぬか漬けやプチトマト、卵焼きなどのオカズだった。
よし、食べようと思ったら、横から声が掛けられた。
「あらまあ、玄君。まっ茶色なお弁当ねえ。お野菜も食べなきゃダメよぉ~」
「一応、ここにキンピラあります」
俺は弁当の隅っこの茶色い塊を指さして見せる。
「ダメ、ダメ! それっぽちじゃダメよぉ〜。好き嫌いはいけません〜! めっ」
両手でバッテンを作ったみのりは、自分の弁当からキュウリやナスやプチトマトを、箸で俺の弁当に乗せた。
ついでに、卵焼きも一個。
「はい。若いんだから、ちゃんと食べなさいね~」
「あ、ありがとうございます……いただきます」
油っこいカラアゲの合間にぬか漬けを食うと、口の中がサッパリとして食が進んだ。
ちょうどよい浸かり具合で、卵焼きはなんというか懐かしい味で……食べてると、少し胸にグッときた。
と、入ってから十分もしないで、俺の『サービス残業お断りダンジョン』から、ラビリミンがキューキュー鳴きながら出てくる。
みのりが驚きの声を上げた。
「あらあら、まあまあ……驚いたわぁ! 本当に初見じゃ勝てないのねえ~?」
そう。様々な相手とレイドして、そのログを見た結果わかったのだが、俺の冥ダンジョンは死に覚え。つまりは『初見殺しのダンジョン』だということが発覚した。
知らなければ回避不可能な仕掛けやモンスターが、そこかしこにあふれているのだ。
いわゆる、孔明の罠である。
フリーの鬼畜ゲーをプレイして、死ぬたび大声で絶叫する白人男性の動画を思い出す。
もっとも、レイドとはダンジョンスプラウト同士が、『自分が受粉するにふさわしい相手かどうか、見極めるための行為』である。
高難度はあっても、クリアできないダンジョンは存在しない。クリア不能は、生き物としての仕組みに反する。
まあ、遺伝子を残すだけならば、相手に種を作らせれば事は足りるが……。
だから俺の『サービス残業お断りダンジョン』も、何度も挑戦されれば、いずれはクリアされてしまうはずだ。




