第078話: 島の守り神
温泉でリフレッシュした翌日。
僕たちはアイリスの道案内で、島の中心部にある『遺跡』を目指していた。
「この先に、私の先祖が守ってきた場所がある。……そして、最強の番人も」
アイリスの足取りは重い。
ジャングルの奥深く、巨大な石造りの門の前にたどり着くと、地面が大きく揺れた。
ドスン……ドスン……。
重低音と共に現れたのは、他の恐竜とは比較にならないほど巨大な、漆黒のティラノサウルスだった。
全長20メートル以上。その皮膚は岩のように硬質化し、赤い瞳は知性を宿しているように見える。
「あれが『守り神』……変異種じゃな」
ソフィアが珍しく真剣な表情を見せる。
「アイリスよ、あやつはお主の手に負える相手ではないぞ」
「分かっている。だが、通るには倒すしかない」
アイリスが弓を構える。
ティラノサウルスが咆哮を上げる。
グオオオオオッ!!
凄まじい衝撃波が木々をなぎ倒す。
僕たちは即座に散開した。
「ユウ、援護するよ! ララ、行くよ!」
「うん! 挟み撃ちにする!」
ルナとララが左右に展開し、攪乱攻撃を仕掛ける。
しかし、ティラノサウルスの皮膚は硬く、ルナの短剣もララの爪も通じない。
「硬い! 岩みたいだよ!」
「クソッ、魔法も弾くか!」
僕が放ったファイアボールも、黒い鱗の表面で霧散してしまった。
高い魔法耐性を持っているようだ。
「ふむ、厄介な相手じゃのう。だが、動きを止めることくらいはできる」
「ソフィア!」
「任せておけ。『十倍重力』!」
ソフィアが杖を振ると、ティラノサウルスの周囲の空間が歪んだ。
ズドンッ!
見えない重しに乗られたように、巨大な体が地面にめり込む。
「今だ! アイリス!」
「ああ! ……祖先よ、許してくれ!」
アイリスは躊躇いを振り払い、弓を最大まで引き絞った。
狙うは唯一の弱点、開かれた口の中だ。
「必殺……『流星矢』!」
魔力を纏った矢は一筋の閃光となり、ティラノサウルスの喉奥へと突き刺さった。
ギャアアア……ッ!
守り神は断末魔を上げ、その巨体を横たえた。
「……勝ったのか」
「見事じゃ。最後の一撃、悪くなかったぞ」
ソフィアがアイリスを称える。
僕たちは息を整え、倒れた守り神に一礼してから、遺跡の奥へと足を進めた。




