第072話: 恐竜の島
翌朝。
霧が晴れるのを待って、僕たちは外に出た。
南国の強い日差しが照りつけている。気温は高いが、湿度はそれほどでもない。
「すごい森だね……木がみんな巨大だよ」
ルナが見上げる巨木は、優に50メートルを超えている。
シダ植物のような草も、人の背丈ほどあった。
まるで、太古の時代にタイムスリップしたようだ。
「お肉の匂いがする!」
ララが鼻をひくひくさせている。
食欲旺盛なのはいつも通りだが、その表情は少し険しい。
「……でも、強そうな匂いもする。気をつけて」
ララの野生の勘が警告を発している。
僕たちは武器を構えて、慎重に探索を開始した。
ガサガサッ!
藪の中から、何かが飛び出してきた。
それは全長2メートルほどの、二足歩行のトカゲ――いや、恐竜だった。
鋭い鉤爪と、凶暴な牙を持っている。
「ラプター!? なんでこんなところに!」
僕の知る知識にある『ヴェロキラプター』にそっくりだ。
しかも、一匹だけじゃない。
次々と茂みから現れ、僕たちを取り囲んだ。その数、十匹以上。
「キシャアアアッ!」
リーダー格らしき個体が叫び声を上げ、一斉に襲いかかってきた。
動きが速い!
「させないよッ!」
ルナが短剣を投擲するが、硬い皮膚に弾かれる。
「硬い! 普通のトカゲじゃないね!」
「このっ……! セイクリッド・バインド!」
セリスが光の鎖で数匹を拘束するが、力任せに引きちぎられそうだ。
ララが爪で応戦するが、数が多い。
「くそっ、キリがないな! ナビ、援護しろ!」
『了解。ルーフ・ガトリング、起動』
待機させていたキャンピングカーから、ガトリングガンの銃口が火を噴いた。
ダダダダダダッ!
魔力弾の嵐がラプターたちを薙ぎ払う。
さすがにこれには敵わなかったらしく、数匹が倒れると、残りは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「ふぅ……助かった」
「なんなんだい、あいつらは。あんな魔物、見たことないよ」
ルナが冷や汗を拭う。
倒したラプターの死体を調べてみたが、やはり魔物特有の魔石が見当たらない。
純粋な生物としての強さだけで、ここまで進化しているのか。
「ここは『恐竜の島』みたいだね。……とんでもないところに来ちゃったな」
僕は空を見上げた。
空には翼竜のような影が旋回している。
どうやら、ここでのバカンスは命がけになりそうだ。




