SS: 人魚の美容法(セリス視点)
「こ、これは……すごいです……!」
キャンピングカーの清潔なバスルームで、セリスは鏡を見て驚愕の声を上げていた。
湯上りの自分の肌が、以前にも増して白く透き通り、触れれば指が吸い付くほどにモチモチになっていたからだ。
この劇的な変化の原因は、アトランティアを発つ際、マリーナ姫からこっそりと渡されたお土産『深海泥パック』にあった。
深海の特定の場所でしか採れない貴重な泥らしく、「これを顔や体に塗って五分放置すれば、鱗もピカピカになりますわ」と推奨された人魚族秘伝の美容アイテムだ。
「鱗はありませんが、お肌の輝きが違います……! 教会の高価な聖水よりも効果があるなんて」
聖女として、清貧を重んじつつも、身だしなみには人一倍気を使っているセリスだが、これは次元が違う。
彼女はツルツルになった頬を両手で包み、鏡の中の自分にうっとりとした表情を向けた。
「ユウ様……気づいてくださるでしょうか?」
ここのところ、冒険や戦闘で肌を酷使していたことが密かな悩みだった。
でも、これなら自信を持って彼の隣に立てる気がする。
少しだけ期待を込めて、彼女は入念にスキンケアを続けた。
ちなみに、リビングの方からは「ぐえー! しょっぱいのだー!」というララの悲鳴が聞こえてくる。
どうやら、テーブルに置いてあった残りの泥パックを、何かのジャムと勘違いして味見したらしい。
セリスは苦笑しながら、もう少しだけ鏡の前で自分磨きを続けることにした。




