SS: お宝の匂い(ルナ視点)
海賊船を撃退し、戦勝祝いのパーティーも一段落した頃。
ルナは喧騒から離れ、こっそりと船倉の隅で自分の荷物を整理していた。
その手には、一枚の古びた羊皮紙が握られている。
「へっへっへ……やっぱりあったよ。私の鼻は誤魔化せないね」
それは、海賊船の船長室から(混乱のどさくさに紛れて華麗に)くすねてきた『宝の地図』だ。
かなり年季が入っており、端は焼け焦げているが、重要な部分は読み取れる。汚い手書きで描かれた海図、その東の海域にある名もなき無人島の一つに、大きく赤い『×印』が付けられているのだ。
「海賊どもが隠した『略奪品』か、それとも伝説の『人魚の涙』か……。ふふっ、夢が広がるねぇ」
ルナは舌なめずりをした。
地図から漂う古びたインクと潮の香り。これこそが、冒険者の、いや盗賊の血を騒がせる最高のスパイスだ。
もちろん、このことはユウやセリスには内緒だ。
真面目なユウに言えば「危険だ」「今は目的地へ急ぐべきだ」と慎重論を唱えるだろうし、セリスには「盗みはいけません!」と説教されるに決まっている。
「だが、お宝をみすみす逃すなんて、盗賊ギルドの面汚しさ。ま、近くを通った時に『潮の流れが~』とか何とか言って、さりげなーく誘導すればいい」
ルナは地図を丁寧に折りたたみ、懐の奥深くにしまうと、何食わぬ顔でデッキに戻った。
「ユウー! 肉! 肉おかわりー! あとエールも!」
香ばしい肉の匂いと、仲間たちの笑い声。
海賊王を目指すのもいいが、今は目の前のBBQを楽しむとしよう。
お宝は逃げない。
焦らずじっくりと、機を熟させてから頂くのが、一流の盗賊(義賊)というものさ。




