SS: 初めての水着(セリス視点)
「ど、どうしましょう……!? こんなの、あんまりです……!」
キャンピングカーの狭いバスルーム。
湯気ではなく、冷や汗が出てきそうな状況で、セリスは鏡の前で真っ赤な顔をして立ち尽くしていた。
彼女の手にあるのは、二着の水着だ。
一つは、ルナが「これぞ夏の正装!」と強引に勧めてきた、面積の少なすぎる黒の紐ビキニ。
そしてもう一つは、ナビが「セリス様の清楚さを最大限に引き立て、尚且つ水中での機動性も確保されています」と推奨した白のワンピースタイプ。
「さあ選びなよセリス! ここは一発、その豊満なボディをドカーンと出して、ユウを悩殺してやるんだよ!」
「む、無理ですっ! こんな布切れみたいなの……破廉恥です! は、肌がほとんど出ているではありませんか!」
ルナは既に際どい黒いビキニに着替え終わり、ニヤニヤしながらセリスの反応を楽しんでいる。彼女の肢体は健康的で引き締まっており、確かに魅力的だが、自分にはあの大胆さは真似できない。
「じゃあ、そっちの白いの? ……ふーん、前は清楚ぶってるけど、背中は結構……大胆だねぇ」
「ひゃああっ! あまりじろじろ見ないでください!」
セリスは白い水着を胸に抱きしめた。
確かにこっちは、前から見れば露出は少ない。清廉な聖女のイメージを崩さない、上品なデザインだ。
しかし、背中は大きく開いているし、何より水に濡れたら……。
でも、ユウ様はどう思うだろうか。
子供っぽいと思われないだろうか。それとも……綺麗な女性だと、思ってくださるだろうか。
(……ユウ様は、その……綺麗なものがお好きですから。少しでも、喜んでいただけるなら)
セリスは意を決して、白い水着に袖を通した。
鏡に映る自分は、いつもの分厚い聖女服とは違う、ボディラインの露わになった、少しだけ「女」の顔をしていた。
「……へぇ、やるじゃないか。ユウの奴、鼻血出すかもね」
「そ、そんなことありませんっ! からかわないでください!」
その数分後。
太陽が降り注ぐ甲板に出た瞬間、ルナの予言通り、ユウが真っ赤な顔をして鼻血を必死に堪える姿を見て、セリスは恥ずかしさと共に、心の中でガッツポーズをしたのだった。




