第058話: 襲来! 黒ヒゲ海賊団
翌朝。
僕たちはまだ海上にいた。
昨夜の宴会の後、そのままデッキで寝てしまったのだ(もちろん、防犯と空調は完璧だった)。
目覚めは最悪だった。
波の穏やかな音ではなく、汚い男たちの怒号で起こされたからだ。
「おいコラァ! 起きやがれ! 金目のモンと女を置いていきな!」
眠い目をこすって起き上がると、そこには見慣れない船があった。
ドクロマークの旗を掲げた、ボロボロの木造帆船。
いわゆる海賊船だ。
「……ふわぁ。朝から騒がしいねぇ」
隣で寝ていたルナが、不機嫌そうに起き上がる。
ララとセリスも目を覚ましたようだ。
ガーネットさんだけは、まだ大の字で爆睡しているが。
「なんだあのオンボロ船は?」
「海賊……でしょうか? 本当にいるんですね」
「おじさんたち、誰ー?」
こちらの反応が薄いことに腹を立てたのか、海賊船の甲板にいた大男――いかにもな黒ヒゲを生やした船長らしき男が、剣を抜いて叫んだ。
「舐めてんじゃねぇぞ! 俺様は泣く子も黙る『黒ヒゲ海賊団』の船長、バルボッサ様だ! お前らのその奇妙な船も、まとめて頂いてやるぜ!」
どうやら本気らしい。
船には数十人の海賊がいて、ニヤニヤしながらこちらを見ている。
特に女性陣を見る目は下品そのものだ。
「……ユウ、やっていいかい?」
ルナの手から殺気が漏れている。
セリスも無言で杖を構えた。
「まあ待って。……ナビ、状況分析を」
僕は冷静にナビに指示を出した。
『了解。スキャン開始……完了』
ナビの淡々とした声が響く。
『対象:中型帆船。武装:旧式大砲4門、白兵戦用武器多数。乗員:48名。平均戦闘力:Eランク相当。船長のみCランク推定』
Eランク。冒険者になりたての新人レベルだ。
僕たちが相手にするまでもない。
『脅威度判定:E。本船の防御システム(レベル1)で十分対処可能です。』
「だろうね。……じゃあナビ、軽く追い払ってくれる?」
『了解。「威嚇射撃モード」にて迎撃します』
ナビの言葉と共に、キャンピングカーの屋根から小型の砲塔(水魔法弾用)がセリ上がった。
それを見た海賊たちが笑う。
「なんだぁ? おもちゃみたいな大砲を出しやがって!」
「ビビってんじゃねぇぞ! 野郎ども、大砲撃てぇぇっ!」
ドォォォンッ!
海賊船から黒煙が上がり、鉄球が飛んでくる。
しかし。
カィィィン!
鉄球はキャンピングカーの直前で、見えない壁(結界)に弾かれて海に落ちた。
【マイホーム】の防御結界は、ドラゴンブレスすら防ぐ。旧式の大砲など、豆鉄砲にも等しい。
「な、なんだと!?」
「弾かれた!?」
狼狽える海賊たち。
その隙に、ナビが反撃のアナウンスを流す。
『警告。これ以上の敵対行動は、生命の危険を伴います。即刻退去することを推奨します』
「う、うるせぇ! 化け物が喋ってんじゃねぇ! 撃てぇ! 撃ちまくれぇ!」
パニックになった船長が指示を出すが、もう遅い。
僕はこちらの砲門を開き、トリガーに指をかけた。
「残念。交渉決裂だね」
朝の運動にはちょうどいいかもしれない。
僕たちは少しだけ憐れみの視線を敵に向けた。




