第057話: 海鮮BBQ
巨大マグロの解体ショーが終わると、いよいよ宴の始まりだ。
デッキには特注のBBQコンロ(無煙・魔力火力調整付き)が設置され、香ばしい煙が立ち上り始めていた。
「かんぱーい!」
ルナの音頭で、ジョッキをぶつけ合う。
中身はキンキンに冷えたエールと、ララとセリスのためのフルーツジュース。
「うっひょー! この大トロ見てみなよ! 脂がノリノリだぜ!」
ルナが刺身を口に放り込み、悶絶している。
採れたての『オーシャン・ツナ』は、臭みが全くなく、口の中でとろけるような甘みがあった。
「ん〜! こっちはカマ焼きだよ! ホクホクで美味しい!」
「ホタテのバター醤油焼きも絶品です……! ユウ様、味付けが最高です!」
「素材が良いからね。……さあ、どんどん食べてくれ」
僕もトング片手に焼き係に専念する。
海の上、夕陽、そして美味しい料理。
これ以上の贅沢があるだろうか。
ふと見ると、デッキの端でガーネットさんが一人、海を眺めながら酒を飲んでいた。
その横には、ホログラム姿のナビが浮かんでいる。
「……美味いねぇ」
『はい。成分分析によると、アルコール度数5%、麦芽含有率……』
「野暮なこと言うんじゃないよ。」
ガーネットさんが笑う。
ナビは少し沈黙した後、こう答えた。
『私は味覚を持ちませんが、マスターや皆様の笑顔を見る限り……非常に価値のある物質であると推測します』
「ふん、相変わらず理屈っぽいAIだねぇ」
ガーネットさんはジョッキを空けると、満足げに息を吐いた。
「でも、悪くない仕事だったよ。あんたとの改造作業」
『……同感です。貴女の直感的な設計思想は、私の論理演算にはない斬新なものでした。特に、あの流体カウリングの曲線美は……非効率的ですが、美学を感じました』
それはナビなりの、最大限の褒め言葉だったのかもしれない。
ガーネットさんは嬉しそうに目を細め、ナビのホログラムにジョッキを向けた。
「ありがとよ。……あんた、いい相棒を持ったね、ユウ」
「ええ。自慢の相棒です」
僕が会話に混ざると、ガーネットさんはニカっと笑った。
「この船なら、どこへでも行けるさ。世界の果てだろうが、深海だろうがね。……ま、壊れたらまたアタイの所に持ってくるんだよ。今度はもっと凄いのを作ってやるからさ!」
「はい、必ず」
その言葉は、少し寂しそうでもあり、頼もしくもあった。
天才整備士ガーネット。
彼女との出会いは、この旅にとって大きな財産になったはずだ。
「さあさあ! しんみりしてないで、次の肉焼いてくれよユウ!」
「あっ、ルナさんズルい! それララが狙ってたのに!」
「早い者勝ちですよ、お二人とも」
騒がしい声が僕たちを現実に引き戻す。
宴はまだまだ続くようだ。
夜空には満天の星。
波の音と、仲間たちの笑い声。
最高の夜だった。
(……明日にはお別れか)
少しだけ寂しさを感じつつ、僕は夜風に当たりながら、次の料理の準備を始めた。




