第055話: 処女航海とビキニ
「おぉぉぉ……! 浮いてる! 本当にキャンピングカーが海に浮いてるよ!」
港に集まった野次馬たちがどよめいている。
無理もない。
彼らの目の前にあるのは、タイヤを収納し、船底を展開した巨大なキャンピングカー――『スーパー・キャンピングカー・マリン』なのだから。
「ふふん、どうだい! この美しいフォルム! ドワーフの技術と魔法の融合だよ!」
ガーネットさんが仁王立ちで胸を張る。
徹夜続きで目は充血しているが、その表情は誇らしげだ。
「よし、乗り込め! 処女航海と洒落込もうじゃないか!」
「いいんですか? ガーネットさんも」
「当たり前だろ! 私の作品が波を切って走るところを見届けなきゃ、死んでも死にきれないよ!」
ということで、ガーネットさんも同乗することになった。
僕たちは車内に入り、それぞれの席につく。
「ナビ、システムオールグリーン?」
『オールグリーン。魔力供給安定。スクリュー出力100%。……いつでも行けます』
ナビの声も、心なしか弾んでいるように聞こえる。
「よし……出航!」
僕がスイッチを押すと、静かな振動と共に船体が動き出した。
スクリューが水を噛み、キャンピングカーが滑るように港を出ていく。
揺れはほとんどない。
ソフィア直伝の姿勢制御魔法と、ガーネットさんの調整したサスペンションのおかげだ。
「やったー! 海だー!」
「すごい……風が気持ちいいです!」
港を出ると、そこは一面の青い海。
ララとセリスが歓声を上げる。
「さて、沖に出たことだし……そろそろアレの時間だね」
ルナがにやりと笑い、バスルームの方を指差した。
そう、この旅のもう一つのメインイベント。
水着回である。
「みんな、着替えておいで。僕はここで操縦してるから」
「ふふ、ユウ様も後で着替えてくださいね」
女性陣がバスルームへ消えていく。
数分後。
「じゃーん! どうかな、お兄ちゃん!」
最初に飛び出してきたのはララだ。
彼女の水着は、オレンジ色で花柄のパレオタイプ。
元気な彼女のイメージにぴったりだ。狐耳と尻尾が、南国の雰囲気と妙にマッチしている。
「似合ってるよ、ララ。可愛い」
「えへへ、やったー!」
「次はアタシだよ。……ま、こんなもんかね」
続いてルナ。
黒を基調としたスポーティなビキニだ。
引き締まったウエストと、意外と在る(失礼)胸元が強調されている。
普段の盗賊ルックとのギャップが素晴らしい。
「おお……格好いいな、ルナ」
「へっ、惚れ直したかい? ……なんてね」
少し頬を染めるルナ。
そして最後は。
「あ、あの……恥ずかしいのですが……」
おずおずと出てきたセリスは、純白のワンピースタイプだった。
しかし、清楚なデザインながらも、背中が大胆に開いていたり、スカートのスリットが深かったりと、隠れた色気が凄まじい。
白い肌が陽光に照らされて、眩しいくらいだ。
「ど、どうでしょうか……?」
「……最高です」
「ふぇっ!?」
思わず本音が漏れてしまった。
セリスは顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「ちっ、色男だねぇ。……ま、目の保養にはなったよ」
ガーネットさんが苦笑しながら、冷えたエールを差し出してきた。
そういえば彼女は作業着のままだ。
「ガーネットさんは泳がないんですか?」
「ドワーフはカナヅチなんだよ。私はここで、あんたたちがはしゃぐのを見ながら酒を飲むさ」
そう言いながらも、彼女の目は楽しそうだ。
『マスター。海水温26度。遊泳に適した水域です。アンカーを下ろしますか?』
「ああ、頼む」
キャンピングカーが停止する。
そこは、海底まで透き通って見えるような美しい浅瀬だった。
「わーい! 一番乗りー!」
ララがデッキから飛び込む。
続いてルナとセリスも海へ。
水しぶきと歓声が上がる。
僕はデッキチェアに座り、その光景を眺めた。
青い海、白い雲、そして笑顔の仲間たち。
「……最高だな」
これが、僕たちが求めていた「スローライフ」だ。
過酷な運命から逃げ出し、掴み取った自由。
この瞬間、僕は世界で一番幸せな男かもしれない。




