第046話: 西の塔の攻防
「よし、正面が騒がしくなってきたね」
王城の裏手、茂みの中でルナがニヤリと笑う。
遠くから爆音と音楽が聞こえてくる。ユウが派手にやってくれているようだ。
「警備の兵士たちが、みんな広場に向かってるよ!」
「チャンスですね。行きましょう」
ララの報告を受け、セリスが頷く。
彼女たちは闇に紛れて城壁に近づいた。
「ホタル、頼むよ」
「ピピピッ!」
ルナの肩に乗ったホタルが、城壁の魔導センサーに向けて不可視の光線を照射する。
センサーが一時的に麻痺した隙に、ルナが鉤縄を投げ、軽々と壁を登っていく。
続いてララが、獣人の身体能力を生かして壁を駆け上がる。
最後にセリスだが……。
「うぅ……高いです……」
「ほら、しっかり捕まって!」
ルナが上からロープを引き上げる。
なんとか全員が城内への侵入に成功した。
目指すは西の塔。
そこには見張りとして、数名の神官兵が残っていた。
「止まれ! 何者だ!」
「ちっ、見つかったか。ララ、やるよ!」
「うん!」
ルナとララが飛び出す。
ルナは短剣で神官兵の武器を弾き、ララは素早い動きで背後に回り込んで蹴りを入れる。
息の合った連携で、瞬く間に制圧してしまった。
「すごい……」
「へへっ、これくらい楽勝だよ!」
塔の階段を駆け上がり、最上階の牢獄へ。
そこには、鉄格子の向こうで怯える王女エリスの姿があった。
「王女殿下!」
「……誰?」
エリスは警戒心を露わにする。
無理もない。味方などいない状況だったのだから。
「私はセリス。かつてこの国で聖女と呼ばれていた者です。……貴女を助けに来ました」
「セリス……? あの、追放された……」
エリスの目が大きく見開かれる。
セリスは鉄格子に手を当て、静かに祈りを捧げた。
「聖なる光よ、閉ざされた道を切り開け――『解錠』」
カチャリ。
鍵穴が光り、重い扉が開く。
本来なら鍵開けスキルが必要なところだが、聖女の力技(物理的な破壊ではなく、概念的な解放)だ。
「さあ、行きましょう。ユウ様が待っています」
「待って……。私を助けて、どうするつもり? 私は生贄なのよ。ここにいなければ、バルガスは……」
「そんなこと、させません」
セリスはエリスの手を強く握った。
「私がいます。そして、最強の仲間たちがいます。……バルガスの思い通りにはさせません」
その力強い言葉と、温かい手のぬくもり。
エリスの瞳から涙が溢れ出した。
「……ありがとう。信じます、貴女を」
王女の救出に成功。
だが、本当の戦いはこれからだ。
窓の外を見ると、広場の騒ぎが収まりつつあった。
ユウが追い詰められているのか、それとも……。
「急ごう! バルガスが動き出す前に!」
一行は塔を駆け下り、決戦の地である地下祭壇へと向かった。




