SS: 大賢者の休息(ソフィア視点)
「ふぅ……。やっと静かになったのじゃ」
ユウたちのキャンピングカーが見えなくなるまで手を振っていたソフィアは、大きく息を吐いて杖を下ろした。
賢者の塔の最上階。
そこは再び、静寂に包まれた「いつもの場所」に戻っていた。
「……寂しいのう」
ポツリと漏れた言葉は、風に流されて消えた。
数百年の時を生きるソフィアにとって、彼らと過ごした数日間は、瞬きするほど短い時間だったはずだ。
だが、その密度は濃かった。
見たこともない技術。
美味しい料理。
そして何より、彼らの温かい心。
「まったく、変な連中じゃったな」
ソフィアはクスクスと笑い、懐から一本の缶を取り出した。
ユウが別れ際にくれた、『コーラ』という飲み物だ。
冷やすと美味しいと言っていたな。
「氷結」
指先から冷気を放ち、缶をキンキンに冷やす。
プシュッという小気味良い音と共に蓋を開け、一口飲む。
「……んんっ! この刺激、たまらぬのじゃ!」
シュワシュワと弾ける炭酸が、喉を駆け抜ける。
甘くて、少し薬っぽい不思議な味。
これが「現代の味」というやつか。
「ふふっ。これがあれば、しばらくは退屈せずに済みそうじゃ」
ソフィアはコーラを片手に、散らかった部屋を見渡した。
そこには、ユウたちが置いていった「お土産」がいくつか残されている。
ララが拾ってきた綺麗な石。
ルナが「魔除け」だと言って押し付けた変な人形。
セリスが刺繍したハンカチ。
それらを見るたびに、あの賑やかな日々を思い出すだろう。
「さて、と。……わらわも研究に戻るとするか」
ソフィアは空になった缶を丁寧に棚に並べると、再び杖を握った。
その瞳には、以前のような退屈な色はなく、新たな知的好奇心が宿っていた。
「まずは、あの『えあこん』の再現からじゃな。……ふふっ、忙しくなるぞ」
大賢者ソフィアの新たな研究ライフは、まだ始まったばかりである。




