第038話: 賢者の塔防衛戦
「右舷、弾幕薄いぞ! ララ、そっちにワイバーンが回った!」
「任せて! えいっ、えいっ!」
ララが操作する銃座から、光の弾丸が正確に放たれる。
彼女の動体視力と反射神経は人間離れしており、高速で飛翔するワイバーンを次々と撃ち落としていた。
「左舷は私がやる! ……ちっ、数が多いな!」
ルナも負けじとトリガーを引く。
彼女の射撃は急所を的確に捉え、一撃で敵を沈めていく。
「ポチ、ホタル! 上空からの急降下に注意しろ!」
「わふっ!」
ポチが背中のミサイルを発射し、ホタルがレーザーで牽制する。
キャンピングカーを中心とした防空網は、今のところ鉄壁だ。
だが、敵の数は減るどころか増えているように見える。
「くっ……。キリがないな」
僕はモニターを見ながら、冷や汗を拭った。
魔力残量はまだ余裕があるが、砲身の冷却が追いつかない。
その時、車内から苦しげな声が聞こえた。
「うぅ……っ、あぁぁ……っ!」
セリスだ。
彼女はリビングの中央に描かれた魔法陣の上で、光に包まれて悶えていた。
その胸元からは、どす黒い煙のようなものが噴き出し、光と激しく反発している。
「耐えるのじゃ、セリス! 今、呪印を引き剥がしておる!」
ソフィアが必死に杖を振るう。
彼女の額にも玉のような汗が浮かんでいた。
「ぐぅ……っ! 痛い、熱い……っ!」
「頑張れ、セリス! もう少しだ!」
僕は操縦席から声を張り上げる。
代われるものなら代わってやりたいが、僕にできるのは外敵を排除することだけだ。
「警告。高エネルギー反応、接近」
ナビの無機質な声が響く。
レーダーを見ると、真っ赤な巨大な点がこちらに向かってきていた。
「なんだあれは……!?」
雲を突き破って現れたのは、全長数十メートルはある巨大なドラゴンだった。
ただし、生きているドラゴンではない。
骨と腐肉で構成された、アンデッド・ドラゴンだ。
「ゾンビドラゴンだと!? なんでこんな所に!」
「おそらく、呪いの瘴気に当てられて蘇ったのじゃろう! ユウ、あれを止めねば塔が崩壊するぞ!」
ソフィアの叫び声。
ゾンビドラゴンは大きく口を開け、紫色のブレスを吐き出そうとしている。
あれを食らえば、キャンピングカーの装甲でも耐えきれないかもしれない。
「させるかよ……! ナビ、全エネルギーを主砲に回せ!」
『了解。魔力コンデンサ、臨界点へ』
僕は照準をドラゴンの口内に合わせた。
一撃必殺。外せば終わりだ。
「食らえぇぇぇぇっ!!」
ドォォォォォォン!!
主砲から極太のレーザーが発射され、ドラゴンの口へと吸い込まれた。
次の瞬間、ドラゴンの頭部が内側から爆発し、巨体が崩れ落ちていく。
「やったか……!?」
安堵したのも束の間。
セリスの悲鳴が、ひときわ大きく響き渡った。
「きゃあああああああっ!!」
見ると、彼女の胸から抜け出した黒い煙が、空中で凝縮し、人の形を成していた。
それは、禍々しい蛇の紋章を浮かべた、漆黒の巨人だった。
「……呪いの化身、か」
ソフィアが呆然と呟く。
最後の敵が、その姿を現したのだ。




