第037話: 迎撃要塞化
賢者の塔、最上階の広場。
そこは今、異様な熱気に包まれていた。
「ナビ、アンカー射出! 車体を塔に固定しろ!」
『了解。アンカーボルト、発射』
ガシュンッ! ガシュンッ!
キャンピングカーの四隅から太い杭が打ち出され、石畳に深く突き刺さる。
これで少々の衝撃ではびくともしない。
「ソフィ、魔力供給ラインの接続は?」
「完了じゃ! 塔の全魔力を、お主の車にバイパスしたぞ!」
ソフィアが杖を掲げると、塔全体が淡く発光し、そのエネルギーがケーブルを通じてキャンピングカーへと流れ込んでいく。
エンジンの回転音が、唸りを上げて高まる。
「すごい……。魔力計の針が振り切れてる」
僕はモニターを見て息を呑んだ。
普段のソーラーパネルや魔石発電とは桁が違う。
これなら、あの機能が使えるかもしれない。
「ナビ、モードチェンジ。『要塞モード』起動!」
『了解。要塞モード、展開します』
ウィィィィン……ガシャン!
車体が変形を始める。
屋根がスライドして装甲板がせり出し、窓には防弾シャッターが降りる。
さらに、ルーフからは四門のガトリング砲(魔法弾仕様)が出現し、側面にはミサイルポッドが展開された。
「な、なんだこれ……!? もはや車じゃねぇぞ!」
ルナが目を丸くして叫ぶ。
確かに、これはもう移動要塞だ。
男のロマンを詰め込みすぎた結果だが、今はこの過剰火力が頼もしい。
「準備はいいか、みんな!」
僕は車内放送のマイクを握った。
「セリスとソフィアは、車内で儀式に集中してくれ。絶対に外には出さない」
「はい、ユウ様……! 信じています!」
「うむ。結界の維持は任せよ!」
「ルナとララは、左右の銃座についてもらう。近づく敵を撃ち落としてくれ」
「へっ、任せな! 蜂の巣にしてやるよ!」
「わーい! シューティングゲームだね!」
「ポチとホタルは遊撃だ。撃ち漏らした敵を頼む」
「わふっ!」
配置についた直後、空の色が変わった。
儀式の光に引き寄せられ、黒い雲のような大群が押し寄せてくる。
ワイバーン、ガーゴイル、怪鳥……。
空を埋め尽くすほどの魔物の群れだ。
「来るぞ……!」
僕は操縦桿を強く握りしめた。
ここから先は、一歩も引けない戦いだ。
セリスの未来を切り開くため、この最強の「家」で迎え撃つ!
「全門、斉射ッ!!」
ズガガガガガガッ!!
四門のガトリング砲が火を吹き、光の弾幕が空を切り裂いた。
賢者の塔防衛戦、開幕である。




