SS: 姉御の憂鬱(ルナ視点)
「ねぇねぇ、ルナ姉ちゃん! これ何? どうやって動くの?」
「だーかーらー! それは『電子レンジ』! 勝手に触んなって!」
……うるさい。
本当にうるさい。
新しく仲間になったララとかいう狐娘は、とにかく好奇心の塊だ。
車内のあらゆるものに興味を持ち、尻尾を振り回して突撃してくる。
「姉ちゃん、姉ちゃん! こっちの黒い板は?」
「それはテレビ! ……ってか、誰が姉ちゃんだ!」
「え? だってルナ姉ちゃん、一番しっかりしてるし、頼りになるだろ?」
ララは悪びれもなく、キラキラした目で私を見上げてくる。
……調子が狂う。
私は一匹狼の盗賊だったはずなのに、いつの間にか保護者みたいなポジションになってしまった。
「ふん、おだてても何も出ねぇぞ」
「えー、ケチだなー。……あ、そうだ! これやるよ!」
ララがポケットから取り出したのは、綺麗な色の石だった。
砂漠で見つけた瑪瑙だろうか。
「姉ちゃんにやる! いつも色々教えてくれるお礼!」
「……っ」
無邪気な笑顔を向けられて、私は言葉に詰まった。
こんなガラクタ、金にはならない。
でも……まあ、悪い気はしない。
「……ありがとよ。大事にするぜ」
「へへっ!」
ララが嬉しそうに笑う。
やれやれ、手のかかる妹ができたもんだ。
私は小さくため息をつきつつ、その石をポケットにしまった。




